第40話 2人の大人と会話(2)


「それじゃあ、何か僕に質問とかありますか? 僕はなんでも答えますよ、2人は多分むやみに話したりしないと思いますし」


「それは勿論! そんなことしたら私たちの神様に見放されてしまいます!」


「そうです、我々獣人族の神ガイアス様は裏切り行為を最も悪だと唱えられておりますので、我々は決して裏切るようなことはしません!」


「そ…そうですか…」


2人の獣人さんが放つ剣幕に押され、僕は身を引いてしまう。


「あ…すみません。それじゃあ、質問させていただきます…。えっと、冒険者をすれば夜のお仕事をしなくていいんですか…」


「はい、僕はそれで全然かまいません。ハッキリ言って冒険者をしていただければ、いつ、どこで、何をしていただいても全く構いません。自由です」


「そ…そんな、自由に生きてもいいんですか…」


「いいんです」


「それじゃあ…自分も…質問させてもらいます。何で我々を買っていただけたのでしょうか…。コルトさんの全財産を使ってまで…。しかも他の皆のキープ何て…訳が分からないんですが…」


「僕が皆さんを助けたのは、ハッキリ言ってたまたまです」


「たまたま…」


「はい、たまたま…。僕はたまたま王宮近くの、夕方過ぎに、目の前でお願いされるという、たまたまが重なったからこそ…。僕はあなた達と巡り合えました。それに、何故キープしたのかと言うと、単純に他の皆さんも助けて上げたいと思ったからです」


「助けていただけるんですか…」


「いえ、僕が助けるんのではなく、ハルンさんとルリさんが皆を助けるんですよ。冒険者で有名になって、いっぱいお金を稼いで、獣人族の奴隷さんたちを助けるんです。僕はそのお手伝いをするだけですよ」


「私たちが助ける…皆を…」


「そんな事出来るんですか…」


「出来るか出来ないかは2人しだいです。期間は1年間…最低目標白金貨1枚。ペアの冒険者なら無理じゃない金額だと思います」


「は…白金貨1枚…そんな大金…私たちに稼げるんですか…」


「そうですよ。自分たちは冒険者なんてやったこと無いんですから」


「まあまあ…とりあえずやってみよ! の気持ちでやってみましょう。実際、僕のお金を使えば、残りの皆さんを購入する事は出来ました…。しかし、それでほんとにいいのかと思ったんです。例え僕があそこにいた獣人さん達を全員買ったとしても、奴隷商の人達はまた違う所で他の獣人さん達を捕まえて売るに決まっています。それじゃあ、どれだけ僕が買っても全く解決に成りません。そこで考えたのが獣人さん達が獣人さん達を買えるくらいの金額を持てば良いんですよ。もしくはそういった組織を運営しても良いかもしれません!」


「えっと、話が大きすぎてよく分からないんですけど…」


「まぁ、とりあえずは2人がどれだけ冒険者をやっていけるか試してみようと思います。あ、勿論死なない範囲でやって行こうと思いますから、気負わないでください」


「分かりました…とりあえずやってみます」


「私も…皆を助けられるならやります…」


――2人ともいい瞳をしているな…、すっと透き通っている。中々こんな目は出来ないよな。人間ならなおさら…。

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