第39話 2人の大人と会話
僕はテーブルを離れ、お会計へと向かう。
「えっと…いくらですか?」
「はい、中金貨3枚です」
「ほへ~、流石に食べたな…。えっと…ギルドカードで…」
「かしこまりました」
スキルボードにギルドカードを翳し、僕はお会計を済ませる。
――このまま行くと…食事だけでお金を使いきってしまいそうだ…。でも僕自身に使うよりは、全然気持ちが良いな。
「さてと…皆部屋に戻ろう…。そして歯を磨いて寝る。何事も健康が第一だからね」
僕達は花柄の部屋、星形の部屋に戻る。
「あ、そうだ…大人の2人、ちょっと星形の部屋に来て。他の皆は花柄の部屋でまっててね」
大人の2人を星形の部屋に呼び寄せ、僕は話をすることにした。
星形の部屋に入る虎耳獣人さんの表情は相当怯えている…。
「あの…いったい何をすればいいんでしょうか…。出来る事なら何でもやります…。ただ、夜の方だけは…」
「いやいや…そういうことの為に呼んだんじゃないよ。僕はこれからの話をしようと思って、2人を呼んだんだ」
「これからの話ですか…」
「そう、これからの話。えっと…、まずは2人の自己紹介をしてもらおうかな…。まずはクマ耳獣人さんの方から」
「わ、分かりました。えっと、自分の名前はハルン・ガガル。種族は熊族、年齢は21歳です」
「えっと私は、ルリ・ラートンと言います。種族は虎族、年齢は19歳です…」
「フムフム…。僕の名前はコルト・マグノリアス。年齢は15歳。遠く離れた村に住んで居るただの人間です」
「ただの人間って…どう考えてもただの人間じゃないですよ…」
「そうです…私達を普通の人間と同じように扱う人なんて、普通いません」
「そうなの? 僕には、普通の対応だと思うんだけど…。えっとそれじゃあ、2人の事を知るために、どうして奴隷になったか。奴隷になった経緯を教えてもらってもいいかな? 言うのが辛かったら教えてくれなくても、大丈夫だから」
「いえ…別に構いません。自分が奴隷になったきっかけは、自分の村がどうしてもお金が必要になりまして…。それにも拘らずどうしても残り中金貨2枚を用意することが出来ず…、自分を奴隷商へ売りに行きました。そのお金で村は、どうにかなったらしいのでほんとに良かったです。当時は18歳でしたが奴隷になって3年が過ぎてしまいました。初めは工事現場で働いていましたが人との関係が上手く行かずに、再度売られてしまいました。この時の社長さんは良い人だったのでとても残念でしたが…仕方が無かったみたいです。次に貴族の護衛に買われましたが、他の騎士から反感を買ってしまい、またもや売られてしまいました…。いろんな所に買われては売られ、買われては売られ、を繰り返していた所にコルトさんのもとに買われていったという訳です」
「なるほど…ルリさんは…どうでしょう…」
「あ、はい…。私は村で婚約していた彼と結婚するつもりだったんですけど…。彼と一緒に家で食事をしていた時…いきなり家に奴隷商の人が入ってきて私を拘束してきました。その後、力任せに馬車へ乗せられ…王都まで連れて行かれたんです…。私が家から連れて行かれるとき…彼は最後…『金になってくれてありがとう』と言われてしまいました。当時は彼を愛していた為…凄く傷ついてしまい、ふさぎ込む毎日をただ過ごしていました…。当時の私は若干16歳だったので、いい大人だと思っていましたが…全然…。数人の人に買われましたが…どうしても夜のご奉仕が出来ず…殺されはしませんでしたが…、返却されることばかりで…。いつの間にか3年も経ってしまいました…」
「そうでしたか…辛い事を聞いてしまってすみません。どうして聞いてかと言うと、冒険者の経験があるか聞きたかったんです」
「冒険者ですか?」
「はい、冒険者です。これから2人には冒険者になってもらいます」
「え…冒険者ですか…。私たちが…。それじゃあ、あのとき皆に強さを聞いたのって…私達を冒険者にさせるだったんですか…」
「そう言う事ですね。えっと、何か事情があったりしますか? 例えば戦えないとか…血が苦手だとか」
「いえ…そう言うのは特にありませんが…。冒険者とは奴隷だけでも成れるものなんですか?」
「それは行ってみないと分からないですけど…、冒険者に成れなかったときはそのときまた考えますよ。とりあえず、2人は冒険者になると頭に入れておいてください」
「は…はい…。分かりました」
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