第35話 奴隷商から解放される
「すみません、そのお釣り…。残った獣人さん達のキープに使わせてください」
「はい?ああ、キープ制度をご所望ですか、残りの獣人奴隷とお釣りの金額からキープできる日数を考えますと……。そうですね…約1年のキープが可能です」
「1年…そうですか…。分かりました、それでお願いします」
「了解いたしました。お釣りの金額で残った全獣人奴隷のキープを承りました。万が一1年以上経った場合、獣人奴隷はキープの対象から外されます。時間が経つにつれ、キープの際使用された金額は常に減少していきますので、ご了承ください」
「分かりました、また一年以内に来ると思います…」
「コルト様お買い上げ又獣人奴隷をキープしていただき、誠にありがとうございました。何とぞこれからも我が『トリス奴隷商』をよろしくお願いいたします」
ナリスは、深々と頭を下げている。
僕も頭を下げようと思ったが…、今は物理的に出来ない状況だ。
「えっと、それじゃあ僕達を送ってくれる馬車の手配を…」
「すでに済ませてあります故、奴隷商から出られましたら馬車にお乗り込みください。場所をご提示してくだされば、提示された場所へ向うよう指示しております。勿論、馬車の料金は戴きませんので、お気になさらず」
――絶対に最初から用意されてたな…。あまりにも早すぎる…。それにしても…この子たち…何で抱き着いてくるの…。
今僕は獣人さんの子供たちに抱き着かれて全く動けない。
僕がナリスに頭を下げる事が出来なかった理由はこれだ…。
右腕、左腕、右足、左足、頭…。
獣人の子供達は綺麗に5人で分担して、僕をソファーへ張り付けている…。
僕の右手に抱き着いているのは、先ほど右腕に噛みついてきた、商品番号900番狼耳の少女だ…。
――噛みついた部分をチロチロと舐めている…。ごめんなさいってことかな…。
「はぁ~よっこらしょ。あ…なんだ、軽いじゃないか。良し皆行こう…」
僕に抱き着く5人の子供たちは、体へ抱き着いたまま離れない。
仕方が無いので、子供達に抱きつかれれながら、僕は用意された馬車へ乗り込む。
「えっと…熊耳の獣人さん。獣人さん達にしか分からないような言葉は、有りますか?」
「あ…はい、一応有りますけど…」
「外にいる獣人さん達に伝えてきてください、1年間は大丈夫だから安心してほしいと」
「はい、分かりました…」
熊耳の獣人さんは、馬車へ乗る前に外で待機していた他の獣人さん達と話をしてきてもらった。
「これで良し…。それにしても…君たち、そろそろ離れてくれないかな…」
「いや…」
右腕にしがみ付く900番ちゃんが、いや…と発言した…。
「いや…か。それはどうして? 僕に抱き着く理由とか、あるのかな…」
「こうしてると…安心する…」
「安心する…か。まぁ…それなら良いんだ。…えっと…何、他の4人は無理だよ…。そんなに近づいてきても…。えちょえ何…、いやこっちはもう狭いからさ…もっと広く使おうよ」
――何でこうなった…。
9人の獣人さんが、僕を中心として団子状にくっ付いてしまった…。
獣人さん達が何を考えているのかよく分からない…。
馬車が少々左に傾きながらも何とかその場で、持ちこたえている。
「えっと…王都の宿で一番安い店に行ってください…!」
「はいよ」
僕は奴隷商を後にし、宿へと向かった。
もう既に、夜遅い時間になっていたからだ。
ぞろぞろと馬車から降りる姿を見られなくて、逆に良かったかもしれない。
「オーナーどうされたんですか?」
「いや…ちょっとね。黒…コルト様の事をちょっと調べられる?あの歳で白金貨を持っていることが気になってね…」
「まぁ確かに…。そんな金を持っているようには見えませんでしたからね。ああ見えて貴族の息子だったりするのかもしれませんよ」
「それもあり得るけど…、貴族の息子が獣人族をあれだけ買っていくとは思えない…精々遊び用に一、二体買うくらいでしょ」
「貴族の三男とか、そう言った話なんじゃないですかね。役割が無いですから、善行をしているんじゃないですか…」
「四の五の言わず調べなさい。どうも金の匂いがプンプンするのよね…」
「オーナーの鼻は、金に関して獣人族より効きますからね…、了解しました。出来るだけ調べてみます」
「宜しく~。…さぁて、貴方を買ってくれる人はいるのかな…。虹硬貨300枚ちゃん…。いやドラゴン族の娘…、奴隷番号1000ちゃん」
「黙れ…外道め…」
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