第34話 9人の奴隷を購入

「冒険者活動をするために、ずっと溜めてきた全財産です…。このお金で払わせてもらいます」


「9体の奴隷を購入されると言う事で、本当によろしいのですか…。冒険者の活動を行うのであれば2体ほどで十分だと思うのですが。それに加えて獣人族の子供など、ただのお荷物ですよ。冒険者にとって全く必要ないと思われます」


――その通り…。初めはこんなに買うなんて思ってなかった。でも…、仕方ないじゃないか。今の僕は子供たちを買って上げられるお金を、持っているのだから。もし、1人の子供だけ買って帰ったら…、買って上げた子に一生恨まれそうだし。


「はは…えっと、王都に来て尻ごみしてしまいまして…。実家のある田舎に帰ろうと思ってたんです。田舎で皆と暮らすのも、悪くないかな~何て…」


「そうですか…。私共は、とても有難いですけどね。それでは、こちらの白金貨1枚お預かりいたします」


ナリスは、白金貨を右手の人差し指と親指で摘み取り、黒いトレーに乗せる。


「あ…そうでした。『奴隷紋』はどういたしましょう?全員に奴隷紋を付けさせますか。その分、別料金がかかり値段が高くなりますけど。最近は、絶対服従の奴隷紋が人気ですよ」


「いえ、奴隷紋は必要ありません。鉄首輪だけで十分です。鉄首輪も、本当は外してあげたいんですけどね」


「そうですか、分かりました。では、少々お待ちください」


ナリスは別の部屋へと歩いて行き、代わりに鎖を持っている黒服が近づいてきた。


「俺が今手に持っている鎖は、35体全ての鉄首輪に繋がっている。この魔道具『契約の契り』で鎖を切れば、お前の買った獣人奴隷9体に付いている鎖が15㎝辺りで消えるだろう。そうなった時、奴隷契約が完了する」


黒服は一本の鎖と大きなハサミを、僕に手わたしてきた。


「こんな硬いものが、ハサミで切れるんですか…」


「四の五の言わずさっさとやれ、こっちは仕事で忙しいんだ」


「は…はい」


物凄い剣幕で言われ、肩をすぼめてしまった。


僕はハサミの根元まで、鎖を持って行く。


こんな硬いものが切れるのかと疑問に思ったが、鎖は紙みたく容易に切断された。


僕が切った瞬間、鉄首輪に繋がっていた鎖が根元から15cmあたりで、同じように切断される。


僕が鎖を切断した音と重なるように、9回の切断音が部屋中に響いた。


切断された長い鎖は、地面へ落ちる前に姿を消す。



「これで奴隷との契約は終了した。今現在を持ってお前は、獣人奴隷9体の所有者になった。これからどう扱おうが、お前の自由だ。鉄首輪によって獣人奴隷が危害を加える事はない。オーナーが戻って来るまでの間、ソファーで待っているんだな。俺は残りの獣人たちを元の場所へ戻してくる。そこの9体と少しでも中を深めて置いたらいいだろう。奴隷とのスキンシップは大切だ、獣人族は特にな」


僕が購入した9人の獣人さん達以外を、黒服は部屋から退出させた。


見た所、連れて行かれる数人の獣人さん達は、目から涙を流しており、うれし涙なのか、悲し涙なのかは分からない…。


僕はソファーに戻る…。


一番強いと言って手をあげた熊耳の男性が話し始めた。


「あ…あの、ホントにありがとうございます…。まさか子供たち全員を買って頂けるとは、思っていませんでした…」


「僕の村。だだっ広いからさ、ほとんどお年寄りばっかだし、知り合いしか居ないから、住みやすいと思ったんだ…。それと…、ここでは言えないけど君たち2人には、やってもらいたい事が有る。ここを出たらまた話すよ」


僕は、虎耳の女性と熊耳の男性に向かって話す。


2人は困惑した表情を浮かべており、何をしたらいいか分からない様子だ。


「は~い!コルト様、お待たせいたしました。お釣りの方をお持ちいたしましたよ」


ナリスはお釣りを乗せている黒いトレーを、運んできた…。


しかし、僕にはまだ言わなければ成らない事が有る。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る