第32話 同年代の奴隷さん

「どうですか、コルト様…お決めになられましたか?」


「いえ…、まだ少し悩んでいます…」


「そうですか。やはりコルト様と年齢の近しい奴隷の方が、仲が深まりやすくて、よろしいのではないかと思いますが?」


「年齢の近しい…僕と同い歳の奴隷さんが居るんですか…」


「いえ、コルト様と同じ15歳の獣人奴隷はおりません。ですが…14歳の獣人が2体、720番と777番の2体です。前に出なさい」


ナリスが命令しても、呼ばれた2人は一向に出てこない。


「はぁ…。黒、前に出させなさい」


「御意」


黒服が、手に持っている鎖を強く引くと、並んでいた獣人さん達の中から、2人の獣人さんが前に倒れ込むようにして、出てきた…。


「グッ!」「クッ!」


「この犬系獣人が14歳男児720番。こっちが狼系獣人14歳女児777番…どうですか?777番の方は夜の相手も十分可能ですし、勿論処女でありますよ。触れてみても構いませんが?」


――『触れてみても』って言われても…。これだけ、威嚇されていたらな…。


その子は狼の耳を持ち、髪色が真っ白でとても綺麗で可愛いい子だった…。


が…あまりにも僕を威嚇している。


牙をむき出しにして唸る…。


その琥珀色の瞳からは、『選んだら殺す!』と言った執念が…ビシビシと伝わってきた。


この子もどうやら子供たちを選んでほしいのだろう…。


「えっと…、どうしようかな…」


僕は再度カタログに目を通す。


カタログを見た感じ、男性獣人中金貨5枚、女性獣人中金貨6枚、15歳未満の男児獣人中金貨3枚、女児獣人中金貨3枚…らしい。


「えっと、大人と子供の人数を教えてもらっても良いですか…」


「大人:男14体、女14…計28体、成人前:男児3体、女児4体…計7体となっております」


――ざっと計算して70+84+21=175、中金貨175枚…。つまり1750万円…今の僕なら全員買って上げることが出来る…。でも、それでいいのだろうか…。例え、僕が全員を買ったとして、どうしたら良いんだ、分からない。解放してあげたいけど…どうも契約上、難しいらしい…。ここに、居る獣人さん達を買って上げても、この店にはまた獣人さん達が売られに来るのだろう…。


「どの位で獣人さん達は、入れ替わって行くんですか…」


「そうですね…早ければ、1カ月もすると纏め買いをされる方もおられますから一気に総入れ替えなんて事も有りますかね。まぁ、滅多にありませんが…。大体いつも、ちょくちょく増えて減ってを繰り返している、感じでしょうか」


――僕が、全員買ったら、この人達は獣人さん達を補充するだけ…。それじゃあ鼬ごっこじゃないか…。ここに居る獣人さん達は助けられても、売られてくる獣人さん達を、助けてあげられない…。こんな事…、僕が考える事じゃないかもしれない…。それでも、辛い思いをする命があっていいわけ…無い…。


「コルト様?どうなさいました?さっきからずっと下を向いておられますが…」


「…どうする…どうする…どうする…、僕はどうしたいんだ…」


「コルト様…?」


――そうか…、僕が助けなければ良いのか…。僕、以外の誰かが、獣人さん達を助けて上げられるようにすれば…。毎回、奴隷さんが入れ替わっても、助けて上げることが出来る…。うん…、そうした方が良いな。ここに居る獣人さんを全員買うよりも、ここに居る獣人さんを、全員買える位、お金を稼げる者の達で組織を作った方が、奴隷になった獣人さん達を無理なく助けて上げられるんじゃないか…。甘い考えだろうか…でも、何もやらないよりはやった方が良いい。僕には、ちょうどそれが出来る。


「この中で1番強いと思う人は、誰ですか…手を上げてください」


男性で筋骨隆々の、熊耳獣人さんが手をあげた。


「それじゃあ…、この中で2番目に強いと思う人は誰ですか、手を上げてください」


次に手を上げたのは、女性でしなやかそうな体を持った、虎耳獣人さんが手をあげた。


――初めて、冒険者パーティーを組むには、最低でも2人必要だ…。ソロだと初心者には荷が重すぎる。2人の方が危機に直面しても何とか乗り越えて行けるだろう…。


周りの獣人さん達は、僕が何を考えているのか理解できていないようで、困惑した表情を浮かべている。


手を上げている2人は、僕の方を見ながら首を横に振っている…。


どうやら相当買われたくないのだろう…、あれほど『子供の方を買って上げてほしいと』叫んでいた位だ…。


けど…、どうか分かってほしい…。

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