第30話 奴隷の仕事
黒服は、ボードをナリスの目の前に立て掛ける。
ナリスは、石炭から作ったのだろうか…、黒い円柱の物を受け取り、ボードに文字を書き始めた。
書き始めたのは、奴隷とは何か…?という文脈だ…。
「え~まず、奴隷とは…国が認めた労働者の総称名にございます」
「労働者の、総称名…ですか」
「はい。労働者といっても奴隷に自体に、人権は無く…、自ら権利を主張する事は、出来ません。なので、どう扱おうが、奴隷を保持している持ち主の自由となっております。まず、奴隷という『物』がどういった存在なのかは…コルト様、理解していただけましたか?」
「は…はい、何となく…」
――ナリスは、奴隷さんの事を『物』扱いしているのか…、いや…普通そう言う解釈をするものなのか。でも…僕は、奴隷さん達の事を『物』扱いすることを、絶対にしたくない…。
「それでは、次に奴隷の主な仕事を紹介します。主な仕事は、4つございまして…順に説明して行きますね」
「奴隷さん達に4つも仕事が有るんですか…。初めて知りました…」
「はい、結構色々な事をしてくれるんですよ。だからこそ、色々な人が買うのです」
「そう言う事なんですね…」
「え~では、1つ目の仕事として…。純粋に『労働奴隷』という仕事が有ります」
「『労働奴隷』…働いてもらう奴隷さんって事ですか?」
「その通りです。奴隷を、どのような場所で働かせようが、奴隷の持ち主が自由に決められます…。例え、過酷な労働によって、途中で死んだとしても…全く、問題ありません。故に、持ち主が奴隷を死ぬまで働かせることも可能永遠と働く屍と同じですに働く屍と同じですね…。あ、一応奴隷も生きておりますので休養を与えないとすぐ死にますよ。そこの所は、ご自身の判断にお任せしますね」
――なんだ…、凄い違和感があるぞ…。目の前に居るのは、僕と同じ人間なのか…。考え方がまるっきり違うんだけど。奴隷さんを死ぬまで働かせる…、そんな事出来るわけ無いだろ…。
「次に、2つ目…『戦闘奴隷』の説明をします」
「『戦闘奴隷』…名前からして戦ってもらう奴隷さんですか…?」
「はい、その通りです。冒険者の方が買う奴隷は、大抵この『戦闘奴隷』の仕事に付きます。冒険者の方と共に旅へ出たり、ダンジョンを攻略したりと、主人に逆らう事は出来ませんので、寝込みに襲われる事は、有りません。逆に、夜中ずっと見張りをさせる事も可能です。どうですか…凄く便利な『物』でしょ。ダンジョン内でも安心して眠ることが可能になるのですから。冒険者の依頼達成率が向上する確率は驚異の80%を記録しております故、素晴らしい冒険者ライフをスタートダッシュから切ることが可能になるのです」
――確かに…、『戦闘奴隷』なら一緒に冒険者へ転職することも出来る…。考えてみてもいいかもしれないな…。滅茶苦茶、嫌われそうだけど…。
「次に、3つ目『性奴隷』の説明です」
「セ…『性奴隷』…僕には、まだ早すぎる気もしますが…」
「いえいえ、そんな事は有りませんよ。コルト様は成人して居られるのですから、バンバンしてもらっても良いんです!」
「僕の事は良いですから…、話を続けてください…」
「これは…失礼いたしました。え~『性奴隷』というのは…。言わば、性欲のはけ口にされる存在ですね。有り余る、性欲求を奴隷にぶつける事が可能のです。日々行えない卑劣なプレイでも奴隷なら可能。例え、プレイ中に奴隷が死んだとしても問題ありません、なんせ奴隷ですから」
――プレイ中に…死ぬ…?何言ってるんだ…この男。そんな事をする人が、この世に居るって事なのか…、嘘だろ…。
「主に性別が女性の奴隷は、この『性奴隷』になりやすい傾向があります。同種族でなければ子供が生まれる心配もありません。コルト様におすすめしている獣人族は、体力もありますし、多少傷を付けてもすぐには、死にません」
――多少の傷で死ぬ…。それは、もう多少ではないだろ。
「奴隷を『性奴隷』として買われる方の傾向は。若い男性の方が多いですね。男性で、まだ若い方は、同種族とされる前に、夜の特訓として奴隷を『性奴隷』として買われるようです。『性奴隷』として人気の種族は、やはり…美人の多いエルフ族ですね。エルフ族は『戦闘奴隷』も出来ますし『性奴隷』にもなれる。我が商会の看板商品です。コルト様の前にいらした方も、エルフ族の奴隷を買われて行きました」
――あの、糞ハゲデブエロ爺の事か…。あの男、みたいな人間には、死んでも成りたくない…。
「え~最後が『実験台奴隷』ですね」
「『実験台奴隷』…、何ですか…その仕事」
「名前の通り実験台にされる奴隷ですね。実験台に使用されますので大抵は死にます。ぽっくり殺されるか、はたまたじわじわ殺されるかは、研修者しだいですかね。過去には、四肢を切り落とされた後、どのくらいで死ぬのか…、という実験をしている医師も居ましたね。食べ物を食べさせなければどれ位で死ぬのか…。など、普通の生き物では試すことのできない事を、奴隷にやって貰うんです。結構買われる方の中で、『実験台奴隷』が欲しいんですって言う方が居るんですよ」
「それは…仕事でも何でもないですね…」
「そうですね…ですから、主に、この『実験台奴隷』となるのは、最も価値の低い獣人族が大半を閉めます。実際…獣人族は、人間にあまり人気がありませんからね。獣臭いだとか、気性が荒いだとか、全く持って金にならない種族ですよほんと。維持費は無駄に高いですし、臭い、嫌いな相手には、決して従おうとしない。何で、生きてるでしょうね、せめてしっかり働いてくれればいいのですが…。仕事場で、ストライキ何て起こす奴もいるくらいですよ。その度に、鉄首輪で苦しむのは自分自身だというのに…、馬鹿な奴らです」
――こいつ…さっきから聞いてれば…、いったい命をなんだと思っているんだ。命を金としか見ていない…。金の亡者ってやつなのか…。
「どうして奴隷になる者達が居るんですか…」
「それは、もう簡単な理由ですよ。お金です、お・か・ね」
「お金…、どういう意味です…」
「奴隷になる者の多くは、大抵お金に困っている事が殆どです。親の借金を返すために、自分の子供を売るなんて…王都では、よくある話ですよ。まぁ、子供を売る傾向が1番高いのは、人間ですがね。こういう親は金目当てに子供を作る者も居るくらいです。我々としては良い鴨ですがね…。勝手に、価値の高い人間の子供を産んでくれるんですから…」
――っつ!…ダメだ。押さえろ…。
「獣人族は、良く山賊が売りに来るんです。獣人族の村を襲い金目の物を盗んだ後、全ての獣人を売り払う。獣人族は小さなコロニーが多いですからね。複数人のパーティーで攻撃する…又は、子供を捕まえて、親を脅しさえすれば、余裕で捕まります。情に厚い種族なのか、頭が馬鹿なのか知りませんが…。フフ…、いや、ホントにもう獣人族の親が、子供の解放を条件として、捕まるのに…。子供が、解放されなかったとき、奴らの浮かべる…歪んだ表情を思い出したら…笑いが…」
「グッ!!」
僕は、ソファーから立ち上がり、ナリスの顔面をぶん殴りそうになったが…、上げた拳をゆっくりと下げていく…。
「まぁ待て、黒。私も、少しテンションが上がっていた。その手を下げなさい」
僕とナリスを囲んでいる4名の黒服達が、僕に向けて、手を翳していた。
僕は、ゆっくりと下ろしてきた手で、その種族を指さした。
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