第21話 『武器が冒険者を守る』
「ヤベ~!滅茶苦茶仕事したくなってきた!それじゃあなコルト、また何処かで会おうぜ!」
そう言い残し、リューズはギルドまでの道を颯爽と走って行った。
新しい玩具を買って貰ったらすぐ、使いたくなってしまう子供の様な表情をしていたが…大丈夫だろうか…。
僕は、その場で別れたが…。
あのリューズがちゃんと冒険者をやって行けるのか凄く不安だ…。
――スキル『バーサーカー』とあの大剣さえあれば、大抵の事は乗り越えて行けると思うけど。あの表情を見るとな…。
『バーサーカー』は別名『武器破壊王』とまで言われるくらい武器の消費が激しいスキルだ。
でも、僕が選んだ大剣なら多分大丈夫。説明文章に『切れ味よりも耐久力を重視した大剣』と記載されてたから、きっとリューズの事を守ってくれるはず。
『武器が冒険者を守る』というのは少しおかしいと、思われるかもしれない。
でも、僕は新米冒険者ならばこの『武器が人を守る』という言葉は当てはまると思っている。
単純に良い武器を使えば、それだけ生き残りやすくなるからだ。
ゴブリンの体を一撃で切り裂ける剣と、二撃加えなければ切り裂けない剣であれば、確実に一撃で切り裂ける剣を使ったほうが生き残りやすいのは確かだろう。
だから僕は、新米冒険者さんにこそ良い武器を使って欲しいのだ。良い武器と言ってもただ高いだけではだめで、自分にあった武器と言ったほうが正しいかもしれない。
しかし…新米冒険者は大抵お金無しが多い、初めからお金を持っていたリューズみたいな奴は稀だろう。
新米冒険者の大体が親のお下がりや、特売の安い武器、また中古品のよく分からない武器に手を出して、あえなく死んで行く…。
新米冒険者は皆武器を持っただけで自分が強いと錯覚してしまうのだ…。
それも大分自分の強さを過信してしまう傾向にある。
その為、初めから何の準備もせずゴブリン退治という新米冒険者には難しい依頼を受けてしまうのだ。
初めからゴブリン退治に行けるのは、凄く強いスキルを元から持っている、お金持ち、凄い知識人、ベテランの冒険者と一緒にパーティーを組む…くらいしかないだろう。
本当なら僕は、マリリさんを止めたかった。でも、マリリさんは『豊富な知識を持っていそうだ』という1点、お金を持っていた僕が『アイテムを渡した』という2点が合わさり、何とかギリギリ依頼を受けても大丈夫だと判断したんだ。
「僕なら確実に薬草採取とかにするんだけどな…。皆どうしてそんなに始めからゴブリン退治に行きたいのだろうか…、昔ゴブリンを倒した事があるから…とかかな」
僕は自分の腰に手を当て、何か寂しいなと一瞬思ってしまった…。
田舎ではいつも腰に剣を刺していた為、いざ無くなると不安になってしまう。
「さてと、僕の武器はどうしようか…、そもそも僕に武器何て必要あるのか…?別に要らないと言えば要らないけど…。でもまぁ、護身用に持っておく分には良いのか。お金を持ってるのがばれたら襲われる可能性もあるし…。とりあえず使いやすい剣を見に行こう…」
僕は、ドリミア工房に再度入店し、使いやすそうな武器又は剣がないか探すことにした。
「ここが剣のコーナーか、さすがにいっぱいあるな…。さっきも見てたけど」
ドリミア工房内にはいくつもの武器が並んでいるが、やはり1番スタンダードな武器である剣の種類が恐ろしいくらいに多い。
新品の最新モデルから、中古の使い古された骨董品まで店内に陳列されており、値段も様々である。
「ここは凄く高いな、僕が買った大剣と同じだけの値段してるよ…。剣はちゃんと手入れをしないとすぐ錆びたり刃こぼれするからな…。新人冒険者さんは、ゴブリン退治に行かなければ、もっと安めの方が良いと思うけど…。見栄を張ってこういった高いのを買っちゃうんだよな…。本当ならもっと安くても丁寧に使えば長持ちするのに…」
使い方さえしっかりしていれば、値段の差なんてほとんど変らないのも、剣の特徴だ。
しかし、ホントの名工が作った剣はレベルが違うらしい…。どういった具合にレベルが違うのかはよく分からないが、刃こぼれなどせず、錆もしない。常に光り輝く剣身を保ち続けるんだとか…。
1度お目に掛りたいものだが、そんなものは王宮位にしかないだろう。もしくはSランク冒険者の誰かなら持っているかもしれない。
「はぁ…こっちにもいっぱいあるし、どうしよう迷うな…」
――別に新品の剣じゃなくても良いんだよな…護身用なら中古品でも十分使えるものもあるし。
僕は、とりあえず自分の身長に会う剣が無いか中古品と書かれた籠から雑に取りだす。
別にブランド物でもなく、価値が高いわけでもない中古品の為、剣の扱いが雑なのは致し方ないことだ。
「この中で僕の身長に会いそうな剣は、この1本だけか…」
何とも無難でシンプルな剣だが、これでも大金貨1枚つまり100万円だ…。
「とりあえずで買って良い物か…、確かめさせてらもらいますね」
剣を鞘から数㎝抜き出し、剣身の状態を確認する。
「まぁ…状態は悪くない、ゴブリンなら普通に倒せそうだ…。護身用ならこれで十分か…」
僕は、とりあえずの気持ちで中古品の剣を持ち店員の要る方へと向かったのだが…。
「ん…新米鍛冶師…特別価格商品…。何だこれ…」
そこに設けられたコーナーは、どうやら新米鍛冶師が作った武器を売っているコーナーだった。
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