第20話 リューズ…選ぶ武器、間違ってるよ…。

「おーい!コルト、見えてるか!」


リューズが僕の名前を大声で呼ぶもんだから恥ずかしくなって、小さく手を振る事しかできなかった…。


僕がリューズの武器を見た時…思ったことは…。


――ちゃんと僕の話を聞いてた?だ…


「俺!このナイフにするよ!」


リューズはあろうことか、片手に収まりそうな小型ナイフを選んだ。


「何でだよ…、リューズのスキルに全く合わない武器じゃないか。寄りにもよって小型ナイフとか…」


――この小型ナイフ…、確かに良い作りをしているし、使いやすそうではあるけど。『バーサーカー』のリューズが使ったら一瞬で壊れてしまいそうだ…。素材集めとかには使えるのか、でもリューズ手先悪そうだしな…。


「いや、なんかこれが1番しっくり来たんだよ。わっかんねえけど…持った瞬間『ビビビッ』と来たんだ。こいつは俺が使わないとだめだ!ってな」


「ま…まぁそう言う感覚も大切だけど…」


――でもリューズ…、その小型ナイフで悪党と戦ったり、大型のモンスターと戦ったりするんだよ…冒険者って職業わ。確かに素材集めとかの仕事もあるけど…その時だって凶暴なモンスターが居る場所に行かなきゃいけないんだから、もっと自分の身を守れるような武器を選んでほしかったな…。


しかし、リューズは僕の思いとは裏腹に…自分の考えを変えない…。


「値段も良い感じだ。大体…大金貨5枚、500万くらいか…。まぁまぁ丁度俺の持ってきた額ギリギリだな…。良し!これに決めた!」


「小型ナイフ1本で大金貨5枚って…高すぎないか。っておいリューズ!…ああ、行っちゃった…。人の意見を聞く気はないのかよ…」


――小型ナイフ1本で中金貨5枚を使うなよ…。あのバカ…、大金貨5枚あるならもっと色々準備できるじゃないか…。ポーション買ったり、罠抜けの紐を買ったり、何なら安い大剣なら大金貨1枚でも買えるのに。あの小型ナイフで大金貨5枚はちょっと新米冒険者には早いだろ…。慣れてきた中級者とか上級者用の武器だよそのレベルわ…。


「はぁ…今から変えさせるのもリューズのやる気を削いじゃうし…。でも、あの小型ナイフだけじゃ絶対に生き残れないよ、リューズ…。冒険者はそんなに甘い物じゃないんだ…仕方ない、乗り掛かった舟だ、冒険者オタクの僕が選んであげよう…」


僕はリューズの体格、スキルに1番合いそうな大剣を見繕い、良さげな大剣を購入した。


僕には重すぎて全く持ち上げられず、定員さん数人がかりで運んでもらったけど…。


さっきリューズを見てたら同じものを軽々と持ち上げていたから余裕で使えるだろう。


僕は大剣を購入した。金額は白金貨1枚…1000万円と値が張ったが、知り合った冒険者が死ぬのも悲しいと思い…仕方なく、…本当に、仕方なくリューズの冒険者祝いと言う事で…。


「はぁはぁはぁ…リューズ…、ちょっと…これ持ってくれる。重すぎて…持ち上げられないんだ…」


僕はカウンターで待っているリューズに声を掛ける。


「ん?ああ、いいぞ。ほいっ」


リューズは100㎏以上あるであろう大剣を片手で軽々と持ち上げた…、さすが『バーサーカー』のスキルを持っているだけの事はある。


「コルトは何でこんなもん買ったんだ?もっと違う武器の方が良かっただろ」


――君に言われたくないんだよ。


僕達は他のお客人の迷惑になる為、ドリミア工房から退店した。


「それで、なんでこんな物を買ったんだ?コルトも冒険者なんだろ、もっと使いやすい武器の方が良かったんじゃないか?」


「いや…だから僕は冒険者じゃないんだってば…」


「な!そうだったのか…、じゃあなんで俺と一緒に…」


「君が無理やり連れてったからでしょうが…。はぁ…まあいいや、それは僕からリューズへの冒険者祝いだ…。冒険者の依頼をこなす時に使って欲しい」


「な…良いのか、まだであって数時間の中だぞ俺ら。それにこれ…結構いい奴じゃねえか。俺が値段を見て諦めたやつだよ!」


――なんだ…お金が有ったら買ってたんだ。それなら僕は完璧なものを選べたみたいだな。


「そうなんだ、それなら良かった。別にリューズが買った小型ナイフをメイン武器にして、その大剣をサブ武器にしてもらっても構わないから。好きに使ってよ。リューズが考えてるほど冒険者の世界は甘くないからさ…。知り合った冒険者が死ぬのは嫌なんだよ…」


「コルト…俺の事をそんなに心配してくれるのか…。お前っていい奴だったんだな…」


「良い奴かどうかは自分でも分からないけど…リューズに死んでほしくないのはホントだよ。だから貰ってくれ。もしリューズが有名になったらエールの1杯でも奢ってくれよ、後サインも一緒に」


「はは…。そうか…分かった、この大剣は俺が貰う。有名になれるかどうかは分からないが、頑張って稼いで、コルトの欲しいものを買ってやろう。俺の実家に頼めば、どんなものでも大抵は手に入るからな、なんでも言ってくれ!今は何が欲しいんだ?」


「そんな急に言われても…分からないな…、その時になったらまた考えるよ…」


「そうか、まぁそれでもいいか。なら俺はその時になるまでは絶対に死ねないってことだな。恩を受けておいて返さないってのも俺の性に合わない。何が何でも恩を返す!」


「はは…、楽しみにしてるよ」

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