第18新 米冒険者『リューズ・ベルトン』

「はぁはぁはぁはぁはぁ…。はぁ…まさか喋りかけられるなんて思っても見なかった…。でも、まさかあんな光景を見せつけられるなんて…。王都の煌びやかな雰囲気を何とか楽しもうと思っていたのに。あんな場面を見せられたら誰だって嫌な気分になるだろ…。それと、エルフさん…ごめんなさい…。僕には、何もしてあげられませんでした…本物の勇者ならあの場面で助けに入って行けるんだろうな…」


僕は無心で走ったせいか、今どこに居るのか全く分からずにいた…。


どうやら僕は細い路地に舞い込んでしまったらしい。


周りが建物に囲まれ、王宮付近にある店の煌びやかさを遮っていた。


「ここは何処だ…、えっと…あっちの方が光っているから王宮の近くなのかな…」


僕は迷わず、光の差す方向へ向かって足を運ぶ。


現在の時刻は午後4時ごろ、季節は夏の始まり…。


ちょうど僕の誕生日が一週間前の某日…。


まだ十分明るい時間で、太陽の光が金ピカなものに反射し拡散される。


跳ね返された光は、さらに反射された光と重なり、長く伸びる。


長く伸びた光は全て僕の眼に集まってきた。


光りは僕の瞳を焼き、切りつけるような痛みが走る。


余りの眩しさと痛みで、目を開けていることが出来ず、暗い路地から出てきた瞬間の為か、瞳孔が一気に狭まり多少の頭痛も引き起こされてしまった。


「ここは…どこだ…。うわぁ…マジか…」


何とか目の痛みが治まり、手で影を作りながら、場所を確認すると…そこは王都で最も大きな鍛冶屋のある場所だった。


煌びやかに光る武器に魅了され、僕は早足に鍛冶屋前に売られている商品陳列へと近づいていく。


「何が光ってるのかと思ったら、剣や斧…盾に槍…、カッコいい…。全部冒険者さん使用になってて軽いな…。凄く持ち運びに便利だ…。えっと確かここの鍛冶屋さんは…」


バックから新聞を取り出し、先ほどの値段が高く印象の悪いクソ野郎が居た場所を確認した所…。


近くに、この鍛冶屋らしき名前が、書かれていることに気が付く。


僕はその鍛冶屋の名前を読み上げた。


「ドミリア工房…。ああ、ドリミアって何か聞いたことあるぞ。確か有名な鍛冶師だったな…」


「ああ、その通りだ!『ドリミア・リドリン』、王都最高峰の鍛冶職人の名前さ!」


「え…あ、あの…あなたは…」


僕は、いきなり後ろから大声を掛けられた。


余りの声のデカさに驚き、小動物の様に体がビクついてしまった。


振り返ると、僕より高い背丈に、細身ながらもしっかりとした筋肉が付いている腕、服装はそこそこ良い感じの服装でお金が掛かっている。


赤と黒が基調のファッションで大分目立つが返り血は見えにくそうだ。


胸板から肩、膝、肘など冒険者にとって危険な部分にはしっかりと鉄製のプロテクターが付けられている。


「俺の名前?俺の名前は、『リューズ・ベルトン』。最近冒険者になったばかりの新人だよ」


「ああ…冒険者さんだったんですね…」


――新人にしては凄くいい装備を着てるな…。お金持ちなのかな…。ちょっとバカそうだけど、冒険者としてやっていけるのだろうか。


その千路れた、ブロンドの髪は無造作に見えて、結構手入れされてるように見える…ちょっと感覚がぶれているのかもしれない。


「それで…何か用ですかね…?」


「君も見るからに新米冒険者だろう。しかも、このドリミア工房の武器を見ていた…どうだ!正解だろう、俺は頭が良からな。一緒に使いやすそうな武器を見ようぜ。俺冒険者になったばかりだからよどんな武器を選んだらいいか全くわからねえんだ。だからさ、一緒に選んでくれよ。2人よればもんじゃの知恵って言うだろ。な!」


僕はリューズと名乗る男に腕を掴まれ、ドリミア工房の方へと連れて行かれる。


「え…いや…ちょっと、いきなり…あわわわ…そんなに引っ張らないでくださいよ…それにことわざが全然違う…」


――って、力強いなこの人…。確かに筋肉は付いているように見えるけど…こんなに強いか、普通…。もしかしてスキルか何かかな…。強化系スキルの何かを持ってるんだな…。抵抗したら腕ごと引きちぎられそうだ。仕方ない。身を任せよう…。


僕はちょっと頭が悪そうなリューズさん…だっけ、その人に腕を掴まれ流されるがままドリミア工房へと入店した。

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