第15話 2つ目の聖地へ
「七色の光…どんな風に見えるんだろう…。虹とはまた違うのかな…」
多くの人が大聖堂を出入りしていく。
大聖堂から出てきた人たちは皆、何かに満たされたような満足げな表情を浮かべていた。
――前の人たちを見てると…祭壇に居られる時間は10秒程度か…、でも見れるだけで凄い事なんだから、有難いことだよ。
1人…また1人と列が進んでいき、僕の番が近づく…。
――さっきは、ここまでしか来れなかったからな…。いよいよだぞ…、しっかりと目に焼き付けて行かないと。村に帰ったら皆に自慢できるぞ…、って言っても自慢するほど友達いないけどさ…
僕の前に居る人が祭壇に立つ。
――ここからだとただの白い光に見えるんだけどな…。ホントに7色に見えるんだろうか。
前の人が下りて行き、僕の番が来た。
足早に祭壇へ上り、目を細めながら光を眺める。
――うわ…ホントに七色になって見えるよ…。凄い神秘的だな…。やっぱり僕には、声何て聞こえないな…、いったいアイクさんはどんな神言を受けたんだろうか…。
名残惜しいが…僕は祭壇から降りる。
アイクさんが立っていた場所に立てたと考えるだけで、僕は感動で胸が一杯になってしまった。
「はぁ~、最高だったな…。あの光景が見れただけですごく満足だよ。あんな乱暴な事が無ければもっと良かったんだけど…。でもまぁ、過ぎた事をいちいち考えても仕方がない、次の聖地へ向かおう」
――ここから1番近い聖地の観光名所は、アイクさんの初めて建てられた銅像がある国立記念公園だな…。ここからなら歩いて30分くらいで行けるはずだ。近いんだから、馬車を探してわざわざ乗せて行ってもらうなんて勿体無い事はしないぞ。僕は今、観光に来ているんだから…王都の空気をもっと感じてみよう。丁度王都の市場もやってるし、買い食いしながら向かおうかな。
目の前には様々な出店があり、観光客でにぎわっている。
「ひえ~、人が多すぎて前に進むのが大変だな…。この人込みじゃ…方向感覚が狂いそうだ…何か大きなものを目印にしないと…」
多くの人にぶつかりながらも、蛇のように人々の間をうねる様に進み何とか、人込みコーナーを抜けだすことが出来た。
「ふぅ、何とか一番人が多い所を抜けることが出来たぞ。ここさえ抜けてしまえば、後は一直線だ」
国立記念公園まで早足で進む。
「いらっしゃいませ!いらっしゃいませ!Sランク冒険者アイク様が好んでお食べになっていた『白饅頭』ですよ。小豆たっぷりで1つ食べれば大満足できる一品です。どうかお試しください!」
――アイクさんが好んで食べてたものだって…これは食べなくては。
僕は出店に吸い寄せられ、自身の財布を取り出す。
「すみません。白饅頭を1つください!」
「はーい、銅貨5枚です」
「はい…銅貨5枚ですね…ちょっと待ってください」
――小銭が無いな…、白金貨も出せないし…小金貨で量替え出来ないかな…。
「あの…小金貨で両替とかできますか?」
「はい、大丈夫ですよ。どのように両替しますか?」
「それじゃあ…銀貨9枚と銅貨10枚でお願いします」
「はーい、それじゃあ、銅貨10枚から5枚抜いておきますね」
白饅頭を売っている女性が、小金貨を銀貨9枚、銅貨5枚、白饅頭1個に交換してくれた。
――饅頭って言うから掌に収まる程度の大きさだと勝手に思っていたけど、中々大きいな。肉まんくらいの大きさがあるんじゃないか…いやもっと大きいかもしれない。
「またのお越しをお待ちしております!」
白饅頭を売っていた出店から少し歩き、白饅頭を包んでいる紙をはがす。
片手の掌じゃ収まらない大きさの白饅頭に再度驚き、まじまじと見つめる。
よく見ていると、出来たてなのか白饅頭から白い蒸気が立ち昇っていた。
「いただきます!」
僕は熱々の白饅頭にくらいついく。
皮が薄く、容易に噛み切れる。
殆ど噛んですらいない、ただ唇を当てただけなのだが、口を当てた部分がくっきりと分かるほど、白饅頭が掛けた。
ほんのりと甘い香りがする。
白饅頭の中には粒あんがたっぷりと入っており、これだけ食べても全く、諄くなくて良い甘さ加減だ。
朝食をサンドイッチにしたお陰か、苦しいと思うことなく余裕で食べきることが出来た。
「もう1個くらい食べられそうな気がするな…。いやいや、さすがにカロリーが高すぎるからやめておいた方が良いか…。爺ちゃんと婆ちゃんにお土産でも買って行こうかな…、何なら喜んでくれるだろうか…」
爺ちゃんと婆ちゃんに喜んでもらえそうなお土産を考えながら、残りの道を歩く。
しかし、結局何も思い浮かばず、村に帰る前日までに考えようと開き直った。
「やっとたどり着いたぞ…国立記念公園…、アイクさんが魔王を倒した報酬として作られたって言う、銅像がある公園だ。ここにアイクさんの銅像と魔王討伐時に貢献した冒険者さん達の名前が彫られた記念碑が建てられているんだよな…。ずっと前から来たかったんだよね…やっと見られるよ」
公園は綺麗な草花が生えそろっており、手入れされた木で埋め尽くされていた。
「ここ…ホントに王都の中なんだよな…」
とても王都の中とは思えない光景だった。
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