第9話 早い、安い、美味い。+で量が多い・・・
僕の懐には白金貨九枚と大金貨一◯枚が入った袋が今この胸の中にある。
「どうしよう、落ち着かないよ。早く家に帰りたいけど、王都まで来るのに七日以上かかると言う事は帰るのにも七日以上かかると言う事なわけだ。ちょっとぐらい遊んで行かないと勿体ないぞ。移動費だってバカにならないんだ。王都まで来ることもそうそうないだろうし。良し! 今日は美味しいものを食べるぞ!」
僕は来た道を戻る。
ギルドの門を抜け大通りまで来ると辺りを見渡す。
「ん~美味しものを食べるとは言ったものの、何処に美味しい料理があるのかさっぱりわからない。誰かに聞いた方が良いのかな、それとも勇気をもって飛び込んでみるか。お金が全部消えることは無いと思う。いやでもそんな事したら本当に美味しいものが食べられなくなるぞ……」
その場でくるくると回っていると……。
「おう! あんちゃんじゃないか。また会うなんてな。どうしたそんな所でくるくる動きやがって」
「あ、馬車のお爺さん。どうしてここに?」
「ちょうどお前さんと同じような客が追ってな、さっきギルドまで送り届けてきたんだよ。それでこの道を走ってたらあんちゃんを見つけたってわけさ」
「丁度良かったです。お爺さんこの王都で一番おいしいものが食べられるお店に連れて行ってください」
「一番おいしものが食える店? そりゃ、儂に聞かれても分からんぞ」
「え……。そうなんですか。王都を走り回っているお爺さんなら知っていると思ったんですが……」
「そんな金もねえのに、いい店にはいかねえよ。逆に安くてうまい店ならいくつか知ってるがな」
「安くて美味しい店。でも、せっかくなら……」
『グぅ~~~』
僕のお腹が珍しく勢い良く鳴る。
「そこに行きましょう。お腹ペコペコです……」
「それなら乗りな、チャッチャと送り届けますんでな」
「はい、お願いします」
おんぼろ馬車に揺られること、数十分。僕は疲れすぎて少々眠ってしまった。
勢いよく目を覚まし、自分のギルドカードと胸元へ手を当てる。
――よかった、取られてない。
お金を持つとこんなに周りを窺いながら生きて行かなきゃならないのか。
「ここじゃ。早い安い美味い、そして量多いの四拍子が揃った、儂、御用たしの店じゃ。ここならあんちゃんも満足するじゃろ、移動費銅貨五枚じゃ」
「はい、銅貨五枚ですね……」
僕は元から持っていた財布を取り出して銅貨五枚を払った。
――どうしよう。白金貨とか使う場面が無いよ。というか白金貨出せるような精神を僕が持ち合わせていなから、お金もを持ていても意味がないよ。もっと小さな硬貨にしておけば良かったかな。
「ありがとうございます。今なら何でもおいしいと感じれると思います」
「それじゃあ、儂は行くからの」
「はい、ありがとうございます」
お爺さんはまた違う所に走って行った。
「さてと。ここがお爺さんの言う早い安い上手いそして量が多いの四拍子揃った完璧なお店。では失礼します」
見かけは大分古い感じがしており、地震でも起きたら倒壊しそうな見かけではある。
でも王都を感じさせない落ち着いた雰囲気、それが僕にとって逆に好印象だったりする。
「あの……。一人なんですけど大丈夫ですか?」
「はい、全然大丈夫ですよ。お好きな席へどうぞ」
僕は店に入ると席が多くの人たちでほぼ埋まっていた。
――お昼はもう過ぎていると思うんだけどな。こんなに多くの人が料理を食べに来てるんだ。凄い人気店じゃないか。ん……なんかあの人見たことあるような。
「ん……どうかされましたか? あ! お水、すみませんすぐ持ってきますね」
――何かどこか似てるんだよな。さっき見てた冒険者さんたちの紹介に……。
その定員さんは水差しとコップを持ってきてくれた。
どうやらこのお店は水が無料らしい、なんて良心的なお店なんだろう。
「このお店は水が無料なんですね、王都では普通の事なんですか?」
「いえ、この水は店長さんのスキルによって出されているお水なのでタダなんですよ。他のお店に行ったら一杯銅貨5枚は取られますね」
「そうなんですか、資源系のスキルはやっぱり便利ですよね」
「はい、水は結構高いですからね、店長のお陰で大分水の料金を浮かせることが出来てるみたいで、その分食事を安く抑えることが出来るんですよ」
「なるほど……。えっと、ここのお店のおすすめは何ですかね。初めて来たので迷ってしまって」
「あ~それでしたら、今日はソースカツ丼定食がおすすめですよ。量も価格も他の店舗とは大違いですから」
「そうですか……。ならそれをお願いします」
「了解しました。ソースカツ丼定食ですね。すぐにお持ちします!」
定員さんは、ハキハキとしたとても良い対応で凄く雰囲気の良いお店だ。
外装があれとか言ってすみません……。
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