第7話 スキル『勇者』が売れました
「でも、やっぱりこの人だよな……」
――初のSランク冒険者『アイク・グレイランス』。相当昔の人だけど、爺ちゃんと婆ちゃんが知っていた唯一の冒険者さんだ。
アイクさんは僕が生まれるずっと昔に活躍していた冒険者さんで、当時悪さをしていた魔王を倒した英雄として語られているめっちゃカッコイイ人だ!
この人が現れて以降、冒険者の職業が普及していったらしい。
つまりアイクさんが冒険者の道を切り開いた張本人ということになる。
「今はもう亡くなられてるみたいだけど。何時か、アイクさんのお墓にも行きたいな。いや、明日のでも行こう! せっかく王都に来たんだ。アイクさんの聖地巡礼して行くぞ!」
僕は意気込んだ後、時間の流れを忘れてずっとスキルボードを見続けていた。
「でも、最近の新人冒険者さん達は凄く頑張っているのに……全然儲かってないんだな。どうしてなんだろう?」
僕は気になる冒険者さんたちを数組見つけたがやはりどの冒険者さんたちも相当お金に苦労しているようだ。
――このままじゃ、パーティー解散も視野に入ってくるのかな。それは可愛そうだよなぁ。せっかく良い目標や夢を掲げているのに。
僕がそんなどうしようもないことを考えていると。
「お待たせいたしました。只今、査定の方が終了いたしましたので、ご報告をいたします」
「はい、ありがとうございます。あの……どれくらい時間が経ちましたか?」
「そうですね。ざっと4時間ほどかかりました。退屈でしたでしょうか? 大変申し訳ございません。お詫び申し上げます」
イーリスさんは僕に向って頭を下げる。
「いえいえ。いや、イーリスさんが戻って来られたのが一瞬だったなと思って……。冒険者さんたちの情報を見てたら、すぐ時間が経っちゃいました」
「そうですか、それなら良かったです。では査定結果の方を報告させていただきます」
「はい」
――そうだな。『勇者』のスキルだし、白金貨1枚くらい、行っちゃうのかな。いや、でもさすがにそこまでは行かないか。どうせなら爺ちゃんと婆ちゃんの老後資金くらいは有ってほしいな。
「コルトさんの固有スキル『勇者』をですね。我々、ウルフィリアギルドは『虹硬貨100枚』で買い取らせていただきます」
「あ~、そうですか虹硬貨100枚……。そりゃ、そうですよね。こんな成人したばっかりのガキンチョに……。ってえ。あれすみません。硬貨の名前がおかしくないですか?」
「コルトさんの固有スキル『勇者』をウルフィリアギルドは『虹硬貨100枚』で買い取らせていただきます」
「は、はぁ……虹硬貨100枚。虹硬貨って。そもそも何か分からないですし、そんな硬貨が100枚なんて、言われても全く実感がわかないんですけど……。『勇者』のスキルは、そんなに価値があるんですか?」
「なんてったって『勇者』ですから。『勇者』が市場に出てくるなんてことはありませんでしたので相当悩みました。しかし、虹硬貨100枚だけの価値はあると判断いたしましたので今回はこの値段で買い取りさせて頂きます」
「は、はぁ……」
「コルトさんは『虹硬貨100枚』を現金で持って帰られますか? それともギルドカードに保管していきますか?」
「えっと……『虹硬貨100枚』って、他の硬貨だとどれくらいの硬貨枚数になりますか? それと重さも」
「そうですね『小金貨100万枚、中金貨10万枚、大金貨1万枚、白金貨1000枚』が『虹硬貨100枚』と同額ですので。現金で一番軽いのは『虹硬貨100枚』ですね。まぁ、ハッキリ言って虹硬貨を使ってお釣りを出せるお店は王都でも中々無いと思います」
「で、ですよね……。僕、虹硬貨なんて名前初めて聞きましたし……」
「私はギルドカードをお勧めいたします。例へ、カードを奪われたり無くされた場合でもコルトさんご本人しか使用できないカードとなっておりますので、現金を持つよりも安全に使用できますね。ただ、コルトさんの御実家は王都から距離が相当離れていらっしゃいますので、ギルドカードをまだ使用できない地域の可能性がありますがどうなさいますか?」
「まぁ、そうですね。とりあえず白金貨9枚と大金貨10を現金でお願いします。後はギルドカードに入れてもらえますか」
「了解しました。では白金貨を9枚と大金貨10枚をお持ちいたしますね」
「は、はい……」
――ど、どうしよう。白金貨なんて見たことも持ったこともないよ! 大金貨すら見たことないのに。よく分からないで適当に言っちゃったけど、良く考えたら、全部合わせても虹硬貨1枚分じゃないか。まだあと虹硬貨99枚あるよ。それだけあったら、爺ちゃんと婆ちゃんに相当楽させてあげられる。僕、そんなにお金使わないし……どうしよう、こんなにあっても宝の持ち腐れになっちゃう。
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