第6話 『勇者』を売ります

すると、スキルボードが光だし、僕の情報が次々に書き込まれていく。


先ほど書いた情報がスキルボードに送信されたようで、最後の欄にスキルの名前が表示された。


「はい、ありがとうございました。え~と…コルト様のスキルは…え…」


「はい」


イーリスさんは先ほどの厳しい表情から一転、頭に?が生えたかのような表情をしている。


「あのちょっと済みません…このスキルボードには『勇者』と表示されているのですが…あの、お間違いはないでしょうか…」


「はい…僕のスキルは『勇者』です…」


「ちょっと待ってください。あの!…『勇者』ですよ!あなたこのスキルがどれだけ凄いか分かって言ってるんですか!『賢者』よりも『剣聖』よりもどのスキルを並べたとしても勝つことが出来ないスキル中トップのレアスキル!それが『勇者』何ですよ!」


イーリスさんは相当興奮しているようで、既に受付台を乗り出している。


「ここではまずいですね…場所を移動します!付いて来てください!」


「え…ちょっと!」


僕は乗り出していたイーリスさんに腕を捕まれ、別室へと案内された。


「コルトさん、考え直してください。『勇者』を売るなんて前代未聞です。今まで一度も『勇者』が売られたことが無いんですよ。いったい何を考えているんですか…。このスキルがあればSランク冒険者だって楽勝でなる事が出来ます」


「はい…確かにそうかもしれません。僕も最初は驚きました…」


5歳の頃…。神官様から与えられたスキル…それが『勇者』だった…。


凄く田舎だったからか、村の皆にバレてしまい、異物を見るような眼で見られてしまった。


その村では農業や酪農を中心とした家庭が多く、その子供たちも大抵は農業系のスキルや酪農系のスキルを神官様から与えられていた…。


僕の爺ちゃんと婆ちゃんも酪農業をしていたから勝手にそっち系のスキルが貰えるんだと思っていた。


それなのに…


酪農や農業系のスキルが無い状態で2つの仕事をやるのは相当大変だ。


土を耕すのもスキルが無いと自分の手で耕さなければならない…。


こんな場所で『勇者』のスキルは無価値だった…。


たかが『ジャイアントベアー』を倒せたところで、特に意味はないし…『ワイルドボア』を倒せたって誰も興味を示さない。良いように、使われていただけだ。それで少女にも怖がられる始末…。


無駄に殺すのも可哀そうだし、こんな力…僕には必要ないと5歳の時点で悟ってしまった。


「僕の村でこのスキルは必要ないんです。なので売ります。どうかもっとうまく使ってくれる人の元へ行ったほうがスキルも嬉しいと思いますし」


僕は満面の笑みでそう話す。


「いや…しかし…『勇者』となると…相当審査が難しいですね…少しお時間を戴いてもいいですか。ギルドマスターと相談しなくてはなりませんので」


「はい、大丈夫ですよ…あ、あとその、冒険者さん達のプロフィールが書かれている試料なんて在ったりしますかね。僕、冒険者さん達の大ファンで、今どんな人が増えているのか知りたいんですよ」


「そうですか、分かりました。ただいまお持ちしますので、話し合いの間にお読みください」


「ありがとうございます」


イーリスさんは相当分厚い冊子を数冊、スキルボードを一枚持ってきてくれた。


「こちらにある冊子は今ウルフィリアギルドに所属している冒険者達です。冊子に番号が振ってありますので、こちらのスキルボードに番号を打ち込んでいただきますとその冒険者、または冒険者メンバーの情報が出てきます。スキルボードだけでも検索できますのでご自由にお使いください。各冒険者がそれぞれ達成した依頼数や、年収、年齢、犯罪履歴、性別、報酬単価、などが記載されておりますので参考程度に。これらの情報は既に公開されている物ですので、好きにメモしていただいても構いません」


「わざわざ、ありがとうございます」


「いえ、これも仕事ですので。それでは、少々お待ちください」


イーリスさんは部屋を出ていき、僕は重たくてデカイ冊子を徐に開く。


「うわ~凄い…こんなにいっぱい冒険者さん達が居るんだ…。あ、このパーティー知ってる、この前新聞に載ってた冒険者さん達だ。へ~とりあえずこっちは置いておこうかな…」


とんでもない量の数字が羅列されていたせいか、気分が悪くなってしまった。


こっちのスキルボードで見よう。


スキルボードを起動すると、番号入力覧の他に、新人冒険者一覧…中堅冒険者一覧…などと振り分けされており凄く分かりやすかった。


「初めからこっちを見ておけばよかった…」


スキルボードには冒険者の顔と名前、パーティー名がデカデカと表示されており、気になった冒険者をタップすると、その冒険者に応じた情報が出てきた。


「うわ…凄い、王都ではこんなものがあるんだ…。僕の村じゃ、新聞が届くようになったのもつい最近なのに…」


僕は押しの冒険者を探すことにした。


「え~と…ア行っと、アイリア・シーリス……、有った!」


真っ赤なロングヘア―で、綺麗なルビー色の瞳…きりっとした目頭が凄くかっこいい。


どことなく大人びているが、年齢はまだ僕と同じ15歳…。


ソロの冒険者で冒険者名がアイリア、自身の名前をそのまま冒険者名にしてしまう所が何とも冒険者っぽくて好きだ。


ランクはBランク、この年齢にしては相当凄い。


10歳から冒険者を始めたらしく、当時は勿論無名の冒険者だったがその頃からゴブリン退治を積極的に行い、数々のゴブリンを葬ってきたらしい。


その際についたあだ名として、『ブロッドヘアー』と呼ばれるようになっていった。


ゴブリンの鮮血を全身に受けたとしても、変わらないその真っ赤な赤い髪が鮮血のように見えたため、そう言ったあだ名が付いたらしい。


近年はゴブリン退治よりも、ダンジョン探索やお尋ね者の排除などを中心に活動している。


「でも最近…あまり活動してないみたいなんだよね…どしてなんだろう」


冒険者になった理由。


[この職業しか、私のできる仕事が無かったから]


「10歳からこんな大変な仕事をしてるなんて…尊敬するな~。僕なんて10歳の頃は畑を耕してたよ」


年商

「大金貨10枚」


「は~やっぱり有名冒険者になると儲かるんだな…Bランクでこんなに儲かっているなら…Sランクはどうなってるんだ」


僕は興味本位で調べてみることにした。


「Sランク…っと、あ…あったあった。Sランクの一覧」


僕はSランク冒険者たちが載っているページを見ると。


「うわ!みんな知っている冒険者さん達ばっかりだ…」


そこには冒険者のことを知っている人なら誰しもが知っている人たちばかり。


「でも…この人たちほぼ貴族なんだよね…」


貴族とはこの国で富裕層と呼ばれる人物たちだ、過去の功績から貴族となり民衆の為に王国の為にとせっせと働いているらしいが…正直な所、僕もよく知らない。

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