囚われのお姫様
「ごめん」
僕は、
「いえ」
「一番辛いのは、夢希なのに、ごめん。」
「いえ」
夢希は、そう言って笑った。
「囚われのお姫様のお話をしようか?」
「はい」
夢希は、コーヒーを渡してくれた。
「やっぱり、どこにも載ってませんでした。」
「そうだね。いいんだ。覚えてる事だけを話すから」
「はい」
僕は、夢希に22年前の出来事を話し出す。
22年前ー
「藤木ってさー。キモいよな。女みたいな格好してさ」
「そうだよな」
「藤木って誰?」
「えっ?図書室によくいるやつ。いっちゃんは、知らなくてよろしい」
「そうなの?」
「そうそう」
同級生達が、話す。
藤木が、気になっていた。
次の日僕は、図書室に向かった。
「あっ」
目が合った女の子は、僕から隠れるように棚に隠れた。
「あのさー。少し話さない?」
「えっ…」
「ねっ?」
満面の笑みで、笑った。
フリフリのスカートに、髪の毛にリボンをつけられてる。
彼女は、囚われのお姫様という絵本を持っていた。
「一年生?」
「うん」
「ここに居ていいの?」
「うん」
「それなに?」
「僕の絵本」
「僕?」
「あっ、ううん。私」
「見せて」
「うん」
僕は、絵本を見せてもらう。
「囚われのお姫様」
「読んでくれる?」
「うん」
僕は、絵本を開く。
「昔、昔、ある所に、綺麗な綺麗なエリーという名の娘がいました。娘は、ママハハからの嫌がらせを受けて、城の奥の誰も開ける事のない部屋に閉じ込められていました。」
パサッ…
「ある日、王子様がやってきました。我は、アレック。ここに、幽閉されているお姫様を迎えにきました。ママハハは、そんなものはいないと王子を追い返します。それでも、王子は何度も何度もやってきます。」
パサッ…
「あー。もう、うるさい。忌々しい男。ママハハは、エリー王女をアレック王子の目の前で殺してしまいました。アレックやっと、私は自由になれた。エリー王女の最後の言葉にアレック王子は泣き叫びました。その顔は、とても美しく、その顔はとても素敵で、ママハハもうっとりとしてアレック王子に近づきました。」
パサッ…
「グサッ…アレック王子は、ママハハの体を剣で貫きました。体にかかるその赤とアレック王子の着ている白のコントラストが美しくキラキラとするのです。」
キーンコーンカーンコーン
「ごめん。授業が、始まっちゃった。」
立ち上がった僕の腕を彼女は掴む。
「ダメ、行かないで」
その目に見つめられて座るしか出来なかった。
「続き読む?」
「ううん、もう何度も読んだから」
そう言うと彼女は、高らかに話した。
「私は、復讐のプリンス。愛するプリンセスを殺された。私は、プリンセスを殺した人に復讐する事を誓った。どうか、我が復讐を許して欲しい。私は、後二皿をどうしても、この胃袋におさめたいのだ。あの、苦痛に歪み、怯え、泣き叫ぶ姿を感じたいのだ。そして、その中で私もプリンセスの元に行こうではないか」
パチパチパチパチ
僕は、彼女の言葉に拍手をしていた。
「凄いね。凄いよ」
「ありがとう」
「君、名前は?」
「藤木麗、君は?」
「僕は、沢村一季だよ」
「よろしくね」
「よろしく」
僕と藤木さんは、握手をした。
「また、ここにきてくれる?」
「うん、明日またくるよ」
僕は、そう言って笑った。
次の日も…
その次の日も…
僕は、藤木さんの元に通ったんだ。
そして、1ヶ月が経った。
僕は、彼女に恋をしていた。
初恋だった。
「僕、麗が好きだよ」
「本当に?でも私は、僕だよ」
「そんなの関係ないよ。麗は、僕が嫌い?」
「好きだよ。僕の初恋だよ」
「僕も、同じだよ」
僕は、麗の手を握りしめた。
「ねぇ、一緒に帰ろうよ」
「いいよ、帰ろう」
「終わったら、迎えに来るね」
「わかった」
そう笑って、教室に戻った。
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