第20話 晴れやかな気持ちで

 きょうは曲ができたと言っていた玲香ちゃんのおうちへ。なんだかひさしぶりの感じがしている。


 玲香「湿っぽくなるからさっさとあがってちょうだい」

 未咲「あっ、そうだったね……なんかいろいろ考えちゃって」


 家にあがると、いつもと少し雰囲気が違うことに気がつく。


 未咲「模様替えとかしたかな?」

 玲香「ええ、この際だから変えていこうと思って」


 ほとんど変えてこなかった玲香ちゃんのおうちの内装が変わっていた。


 玲香「それはいいのよ。さっそく聴いてほしいんだけど」

 未咲「どんな感じかな、わくわく……」

 玲香「そこまで期待されるとちょっとやりにくいわね……」

 未咲「あっ、えっと……じゃあ、ほどほどに……」

 玲香「いまの感じくらいでいいわ。前のめりにならない程度にお願い」


 一瞬静かになる。その隙をついてか、玲香ちゃんがピアノを弾きはじめる。


 未咲「すごい……どんどん旋律が変わってく……」


 正直どうなってるかわかってない。だけど心にくるものがあった。


 未咲「ここまでするの大変じゃなかった?」

 玲香「そうね……でも、出来上がってみるとすぐって感じがしたわ」

 未咲「そうなんだ……よくわかってなくてごめんね?」

 玲香「何か感じることはあった? わたしとしてはそれだけでいいわ」

 未咲「春泉ちゃんのことを思ってつくったんだなぁって……どうしよう、考えてたらまた涙が……」


 ここ数日ずっとこんな感じ。そろそろ前向いていきたいんだけどなぁ……。


 玲香「まだ整理がついていないみたいね、無理もないわ」

 未咲「玲香ちゃん、やっぱりわたしさみしくて……」

 玲香「しかたないわよ、さっきの演奏で成仏されたって考えましょう」

 未咲「そうなんだけど……ぐすっ」


 まだ時間がかかりそう……そう思ってたけど。


 未咲「そうだよね……晴れやかな気持ちでいきたいよね……」

 玲香「わたしはもう折り合いがついたけど、未咲はもう少し……」

 未咲「ううん、いまのでじゅうぶんわかったよ。春泉ちゃんはいろんな人に愛されてたけど、春泉ちゃん自身がどうしていいかわからなくなっちゃったんだよね……」


 相談する相手がいればよかったのかな……わたしじゃだめだったかな……。


 玲香「気に病むことはないわ、未咲。あなたは何も悪くないんだから」

 未咲「もうちょっとだけ一緒にいれたら、なんていま考えても遅いよね……」


 それが逆に苦しくなったかもしれないし、そっちのほうがつらい気がする。


 未咲「春泉ちゃんはここまでせいいっぱいやってきた、って考えるよ」

 玲香「それがいいんじゃないかしらね……つらくなったらここにいらっしゃい」

 未咲「うんっ」


 ようやくしっかり笑えたかも。まだ整理がついているかどうかはわからないけど、前に進めるような気がした。

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