第11話 日常、泡のごとく

 最近、気の抜けたサイダーのような日々を送っている。


 春泉「はぁ……」


 自殺未遂からしばらく経って気持ちも落ち着いてきた……ような気がする。


 春泉「でも、ただ生きてるだけでなにかする気もおきないし、やっぱりタイクツ……」


 (手首は怖くて)指を切ろうともした。血を見て安心するつもりだった。


 春泉「それを水につければ死ぬんだよね……やってしまいそう……」


 なんとかとどまらなきゃ……そう思えば思うほどやってしまいたくなる。


 春泉「それはダメ! いま思い出したけどやめる!」


 強く宣言するのはいいけど、それがいつまで続くか……。


 春泉「はぁ……どうしよう……」


 二回目の溜め息。泡がはじけていくような感じがする。


 春泉「気分かえたい……最近買ったゲームしなきゃ……」


 半ば義務っぽく感じている自分がおそろしい。楽しくやりたいだけなのに。


 春泉「つまんない……やっぱりやめる……」


 すぐ手詰まりになってやめてしまう。それくらいに無気力だった。


 春泉「ハルミはいつになったらちゃんとするの……?」


 自らに問いかけても答えなんて出ない。時間が解決してくれるなんてほとんどウソ。いまのハルミにはそうとしか思えない。


 春泉「あぁっダメ……やっぱりハルミはダメなコ……消えてなくなりたい……」


 否定感にさいなまれる。そういえば学校の勉強もよくできなかったっけ……。


 春泉「生きてていいのかな……やっぱりダメなのかな……」


 誰も応答してくれない。ひとり暗い影に落とされている。


 春泉「いい子だって思いたいけど自信ない……ほんとに生きてていいんだよね?」


 いまはなんとか思えてるけど、この先どうなるかわからない。


 春泉「神さまっているよね……ハルミ、これまで何を信じてきたんだっけ……」


 これまでのことを思い出す。すると、ずっと前の幼い景色が浮かんできた。


 ♦


 春泉「おしゃんぽおしゃんぽー! えへへ、たのしーなー!」


 ハルミは神さまの子どもだった。だれかに笑顔をふりまくような、そんな存在だった。いまでは誰でもそうだったって言えるけど、ハルミはそれを人一倍強く感じていた。


 近所の人「あら春泉ちゃんこんにちは。きょうも元気ねー」

 春泉「こんにちはー! きょうもさむいですねー」


 あいさつがしっかりできて、誰からも愛されるような……。


 ♦


 春泉「あれ……そこからぜんぜん思い出せない……」


 青い記憶。もうそこには見えなくなっていって……。


 春泉「ハルミ、これまでなにしてきたんだろう……」


 暗い影にふたたび落とされる。ハルミ、これからどうなるんだろう……。

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