第6話 やっぱり瑞穂は瑞穂だなっ
歯を見せて笑う人。それがわたしの目の前にいる人です。
うみ「やっぱり瑞穂は瑞穂だなっ」
瑞穂「……何がですか?」
にたにたしてるだけで何も言おうとしません。何が言いたいのでしょう。
うみ「さぁ? あたしにもよくわかんねぇんだよな」
瑞穂「なんですかそれ……」
最近ハマってる読心術でうみさんの心を読もうとします。まったくわかりません。
うみ「なんかさ、さっきからあたしの心読もうとしてるやつがいるっぽいんだよな……瑞穂知らない?」
瑞穂「……さぁ? ここは人が多いから誰かが考えてるんじゃないですか?」
街中に出ていたのでなんとかごまかすことができました。ほっ。
うみ「あそこ行こうぜ。ボウリングのピンが立ってるところ」
瑞穂「あぁ、あれですか……」
畑に囲まれたところで薄れていった記憶。かすかにですが何かそのあたりのイメージがわたしの頭の中に浮かんでいます。
瑞穂「倒すやつ、ですよね」
うみ「それだともっといろいろあるだろ、ゾンビ倒すやつとかさ……」
それくらい何もしてないのか……田舎の精神おそるべし。
瑞穂「わたしは、ほんとは……ほんとはですよ? あのまま何もないところで暮らしていくのも悪くないなって思ってたんです」
うみ「だったら何でここに戻ってきたんだよ?」
瑞穂「戻りたくなったんです。誰のせいだか知りませんけど……」
これは……深く聞かなくてもよさそうだな。
瑞穂「甘い匂いがしますね……どこからしてるんでしょう?」
うみ「おっ、瑞穂もやっぱりまだそういうとこ残って……」
瑞穂「うるさいです! 一コマ目に戻らないでください!」
なぜだか漫画のことが頭に浮かんでしまって、そう言ってしまった。
♦
うみ「遅いぞ瑞穂、あたしもうゴールしちまうんだけど~?」
瑞穂「はぁ、はぁ……早すぎますうみさん、もうちょっと手加減……んっ」
静かな水の音がする。お前もしかして我慢してたのかよ……。
瑞穂「はぁ、はぁ……やだぁっ……」
うみ「おいおい……」
まぁ、なんだかんだ楽しかったけど。
うみ「もういいのか? これたしかお子様セットだったような……」
瑞穂「いいです、十分満足しましたので……」
うみ「小食だなぁ……もっと食べればいいのに……」
瑞穂「じゃあお言葉に甘えて……おえっ」
うみ「……無理なら食べなくてもいいんだぞ?」
散々だなぁ……いつでも調子いいってわけでもねーんだろうけど。
瑞穂「きょうはすみません……うみさんと一緒に楽しく過ごせると思って……」
うみ「ちょっとうれしいこと言うじゃねーか……抱くぞっ」
瑞穂「抱きつかないでください! こんなことで抱きついてたら身が持ちません! 離れて……くださいぃっ?!」
二度目の波がきた。避けられない欲求に、同じ結末になることに……わたしは目をつぶりたくなった。
瑞穂「んぅ~っ!」
うみ「は?! またかよ! どうなってんだきょうは……もういい、早く帰れ!」
瑞穂「ごめんなさい、ごめんなさいぃ!」
心配をこめてそう言ったつもりだけど、結果謝らせてしまうことになった。
うみ「はぁ……あたしはどうすればよかったんだ……」
家に帰ってひとり反省会……のつもりだった。
うみ「ちょっとトイレ……うわっ、なんじゃこりゃ!」
いつの間にか漏らしていた。思い悩むあまり行けてなかったのかもしれない。
うみ「せっかくこれから行こうとしたのに……あたしこそ何やってんだ……」
掃除から始まり、気づけばいつも寝る時間になってしまっていた。
うみ「考えるどころじゃなくなってきた……あたしもう寝ないと……」
結局どうすればよかったか分からず、瑞穂の気持ちを知ることはなかった。
瑞穂「うーん、うーん……」
それから瑞穂は数日うなされてしまったようで、あたしはほんとに謝りたかった。
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