第14話 置いてけぼり

 食事ももうそろそろ終わりという頃に、花姫がこちらに駆け寄ってきた。

「ねーねーねー!東くんって血液型何型!?」

 勢いを殺さずに手をついたので、少しテーブルがずれてしまった。

「危ないな、つゆが溢れるところだったじゃないか。」

「ごめんごめん。で、何型なの?」

 目を輝かせて質問する彼女に、東くんは少し後ずさった。

「アールエイチナル型だってよ。占いの対象外・・・・・・。」

 面食らった東の代わりに、隣りに座っていた伊織が答えた。

 流石彼氏、彼女が何故血液型を聞いてきたのか分かっている様子だった。

「えっ、東くんも・・・・!?これって運命!?」

 一人で盛り上がっている彼女に、男性陣は疑問符を頭の上に浮かばせた。

「”も”ってことは、他にもRh null型の人が居るってこと?」

「そうなの!愛月ちゃんもそのアールエイチなんとかって型なの!ディスティニー過ぎん!?」

 花姫は置いてけぼりの男性陣を無視し、キャーキャー言いながら女子たちのもとに帰っていった。

「…君のパートナー、テンション高過ぎてちょっとついていけない。」

 ただ話しかけられただけなのに、東くんはぐったり疲れていた。


***


「愛月ちゃん!!やっぱり運命だったよ!!」

 大興奮で戻ってきた花姫は、愛月の手を握った。

「え?運命って?」

「東くんも愛月ちゃんと同じ血液型だったの!」

「え!?」

 珍しいはずの血液型が、まさかクラスメイトにもうひとり居るとは。女性陣も驚きだった。

「こんなことってある!?無いって絶対!」

「もうこれ”くっつけ”って言ってるようなもんじゃない♡」

 同じ血液型に盛り上がるABC。愛月はただただ驚いた。

(宇宙人にも血液型ってあったんだ…。)



「今日はなんだか疲れたな。」

 放課後、自転車小屋で合流した東くんがポツリと言った。

「血液型の事?花姫ちゃん、凄い盛り上がってたもんね。」

「戸田花姫と伊波拓郎は苦手だ。テンションが高すぎる。」

「あはは。でも私もちょっとテンション上がったよ、お父さん・・・・以外で同じ血液型の人に会えたのは初めてだから。」


 愛月の血液型は、父親からの遺伝だった。

 両親が事故に遭った際大量の輸血が必要だったのだが、父はその特殊な血液型故に十分な血を確保できなかった。当時10歳だった愛月から血を取る訳にも行かず、父は出血多量で亡くなった。


「それが不思議なんだ。」

「え?」

 東くんは腕を組んで首を傾げた。

「地球人でRh null型なんて、聞いたことが無い。」

「突然変異らしいよ。だから世界でも50人くらいしか居ないみたい。」

「…そうなんだ。」

「ねぇ、宇宙人にもいろんな血液型があるの?」

「あるよ。でも大抵Rh-か+がついてる。null型もそこそこ居るよ。」

「へぇ、じゃあnull型は宇宙人にとってはメジャーなんだね。」

 血液型の話をするといつも仲間外れに思っていた愛月は、所変われば有内ありうちであることに安心した。

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