第12話 血液型占いと女子高生

「でねー、愛月ちゃんってぱ今日も東くんとラブラブだったんだよぉ〜♡」

 教室に入ると、一足早く教室に着いていた花姫が栄子と椎奈に先程の事を報告していた。

「和田さん、意外とやり手なんだね!」

 椎奈が両頬に手を当てて恥ずかしそうに言った。

「いや、別にそう言うんじゃ…。」

「恥ずかしがらなくても大丈夫だよぉ♪お見通しだから♡」

 ABCの勢いに飲まれていると、東くんが呆れたように否定した。

「だから違うって。僕には許嫁が居るし。和田さんにも失礼だよ。」

「「「許嫁!?」」」

 驚くのも無理はない。一昔前なら漫画のネタにされるくらい馴染みがあったが、現代ではそんな話、お家柄の良い金持ちしか無いだろう。

「え、東くんって御曹司か何か…?」

「許嫁って、本当に存在するんだ…。」

 衝撃の事実に、ABCは互いの顔を見合わせた。

「そういうことだから、和田さんとは何も無いし、これからも無い。」

 淡々と答え、窓際の席に移動した。彼が着席したと同じに予鈴が鳴り、担任の先生がやってきた。

「ほらほら、ホームルーム始めるぞ〜。」


***


 昼休みになり、愛月はABCと共に食堂へ。

「ねぇねぇ、最近めちゃくちゃ当たるって噂されてる血液型恋占いがあるんだけど、皆でやってみない?」

 注文したナポリタンを受け取りながら栄子が提案すると、後ろに並んでいた花姫が食い気味に返事をした。

「あ!それ知ってる〜!アイドルグループ”BTA”のRAM君が言ってたやつでしょ?」

「そうそう〜!もしかしてもう調べた?」

「当たり前じゃ~ん!伊織いおりくんとの相性真っ先に調べたわw」

 花姫は入学してすぐに同じクラスの羽生伊織と付き合っている。

「どうだった!?」

「”AB型男性は多趣味で独立心があるので束縛を好みません。B型女性は一人の時間を欲しがるので、互いに自由な時間を楽しみながら付き合うことが出来るでしょう。”だって♪家に遊びに行ってもお互い違うことしてたりするし、めっちゃ当たってる!」

 恋バナ好きな彼女ではあるが、実際の交際はあまりベタベタしてないようだ。

「えー、家に居るのに別々なことしてるの?もっとくっついたりしたくない?」

 椎奈が口を尖らせて反論。彼女の意見に栄子も賛成のようだ。

「付き合ってまだ3ヶ月でしょ?もうちょっとイチャイチャいたっていいのに〜。」

「別に私達が楽しければいいじゃん。」

「そりゃそうだけどぉ〜…ねぇ?和田さん。」

「えっ?」

 突然話を振られて驚いた。だって、恋愛なんてしたことがない。

 愛月は適当に相槌を打ってうどんを受け取った。


「愛月ちゃんは何型なの?」

 栄子と椎奈の診断が終わり、愛月の番になった。

「あー…その占いには載ってないと思う。」

「どゆこと?」

「私、Rh null型なの。」

「「「あーるえいち…なる?」」」

 聞き慣れない血液型に、3人は目が点になっている。

「Rh-型なら聞いたことあるけど…。そのナル?型ってどんな血液型なの?」

「Rh null型は、他の血液型と違って抗原を持ってないの。だからどの血液型に輸血しても拒否反応が出ないって言われてるよ。」


 実は血液型はA、B、O、ABの他に何百万という種類が存在する。だが大半の人間は4種類に落ち着くため、血液型占い等もその4種類が挙げられることがほとんどだ。

 最近ではRh-、Rh+の存在も認知されるようになってきたが、Rh null型は世界で確認されているのが50人と極端に少なく、その存在を知るものは極稀である。

 愛月が説明したように、Rh null型は抗原を持たないため、どの血液型にも輸血が可能。そのことから、「黄金の血」と医療界隈ではそう呼ばれているらしい。


「なんか凄い血液型だね、皆に輸血できるって。」

「でも逆は無理みたいだよ。だから、輸血が必要な大怪我をしたら命取り。」

「わぁ…。」

 和気あいあいと恋愛話をするはずが、なんだか重たい空気になってしまった。血液型の話になると大抵このような反応をされるので、愛月は苦手だった。

「…だから占いには当てはまらないんだよね!あはは。」

「なんか…、ごめん。」

「いやいやいや!別に謝るようなことじゃ。こっちこそ、なんかごめんね。」

「…じゃあせめて東くんの血液型を調べよ!血液型で恋愛傾向分かるし!」

 重い空気を切り替えようと、花姫が努めて明るく言った。

「でも東くん許嫁居るんでしょ?」

「許嫁が居たって関係ないよ!最終的に両思いになって駆け落ちすればいいんだし!」

 栄子の問いかけに、花姫は滅茶苦茶なことをいい出した。

(なんで私が東くんを好きなこと前提で話が進んでるんだろ…。)

「早速東くんの血液型聞きに行こっと♪」

 花姫は東くんの居る男子グループに駆けていった。

 恋バナ好き女子の力強さに、愛月は苦笑いを浮かべるしかなかった。

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