第11話 地球とケプラー542bの違い

「今日はご馳走さま。」

「どういたしまして。獅子唐の件はごめんね。」

 東くんはあれ以降、獅子唐を食べようとしなかった。

「…獅子唐はもう食べない。危険な食べ物認定。」

「あはは…。良かったらまた食べに来てよ、刺激物は作らないようにするから。」

「まぁ…、和田さんが望むなら有り難く。」

 バイバイ、と手を降り、ワープで帰っていった東くん。

「…あれ?ワープ装置の充電、いつの間に回復したんだろ。」

 充電方法が地球のものと違うのかも知れない。きっと、祖父に話したら研究したがるだろう。

 愛月はキッチンに戻り、食べ終わった二人分の食器を片付けた。



 翌日、身支度を整え玄関に出ると東くんが立っていた。

「おはよう。」

「おはよ!待っててくれたの?」

「まぁね。今日は昨日のお礼に、学校まで送っていこうかと思って。」

 そう言うと、胸ポケットに付けているバッチをクイっと回した。すると人一人分の大きさの歪みが発生し、向こう側にはぼんやりと校門が見えていた。

「わぁ!東くんこうやってワープしてたんだ。」

 どういう仕組だろう?いちいち気になってしまうのは祖父の血だろうか。

時間を切り取って・・・・・・・・ワープするから、目撃の心配もないよ。」

「時間を切り取る…?」

「そう。記憶操作のライトでもいいんだけど、眩しいし、少なからず脳をイジることになるから避けたい。」

 説明されてもよく分からなかった。とりあえず、あのライトはやはりあまり良いものではないらしい。

「しょっちゅうライト照らしてたくせに。」

「…うるさいな。」


 ワープゲートから向こう側を覗くと、校門側の景色は確かに止まっていた。

「飛んでる鳥まで止まってる…。」

「早くググってしまって。消費エネルギーが激しい装置なんだから。」

「はぁい。」

 ワープの途中で電源が切れてしまったら、体はどうなるのだろう。考えると少し怖くなった。

 くぐり終えると、世界は何事もなかったかのように動き出した。

「おはよー!」

「あ、花姫ちゃん。おはよ。」

「なーに?今日も二人で登校してきたの?」

 花姫はニヤつきながら愛月の背後を指さした。

「仲の良いことで♡」

 おじゃま虫は退散いたします、と言って彼女は先に行ってしまった。

「ほんと、地球人の女子は浮かれた話が好きだよね。」

「あはは…。ケプラー人は恋バナとかしないの?」

「しない。というか、恋は無駄な行為だから推奨されてない。」

 推奨されてない?なんだか変な言い回しだ。

「無駄って捉えられてるんだ。」

「だって、つがいになるかどうか分からない相手と時間を共にするのは無駄だろ。」

「そうかな?」

「ケプラーではより良い遺伝子を残すため、生まれてすぐにデータを取られる。その能力値に見合った相手をあてがわれるんだ。」

「それって、生まれてすぐに結婚相手が決まるってこと?」

「そういう事。恋なんてしたところで、最終的には別れなければいけないし無駄なんだよ。だから皆したがらない。」

 優秀な種を残すことを考えれば合理的な考え方ではあるが、なんだかそっけない考え方に思えてしまうのは、自分が地球人だからだろうか。愛月は釈然としない様子で話を聞いていた。


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