ゲームセンターに行きたい悪魔とクソザコ童貞(2)

 「――ねーねーダーリン!ねーダーリンっ!私ゲームセンターってとこ行きたいっ!!」

 

 リビングにあるソファでポテチをつまんでいた俺に悪魔リリムが興奮気味にそう言った。

 どうやら瑠璃と買い物に行った際にショッピングモールにあるゲームセンターで、少年少女達が楽しそうに遊んでいるのを見て興味を持ったようだ。


 「……ゲーセン?ゲーセンってあのゲーセンか?あのUFOキャッチャーとか太鼓の番人が置いてある、あの?」

 「ゆうほうきゃっちゃあ?が何かは分かんないけど多分そこっ!あそこに行ってみたいの!!」

 「UFOキャッチャー。UFOキャッチャーって言うのはでかい箱の中にぬいぐるみとかお菓子が入ってて、それを箱の中についているアームでとるゲームのことだよ」

 「あ〜アレかぁ!アレもやりたい!!行ってもいい?」

 

 ……んー、別に行っても問題はないよな?隠蔽魔法いんぺいまほうで角と尻尾さえ隠してくれればただの可愛い女の子なんだし、瑠璃と買い物に行けてるんだから、一人で外出させても何も問題は起きないよな?


 「―いいんじゃないか?……とりあえず、五千円くらい渡しとけば足りるか?」


 俺は財布から五千円札を取り出しリリムへと差し出した。しかし、


 「…むぅ、違うよーー!ダーリンのバカっっ!!」


 何故か頬を膨らませ、何故か目の端に少し涙を浮かべた彼女にポカポカと胸を叩かれた。


 痛…くはないが、俺は一体何故叩かれているんだ?そもそも何故泣かれているんだ?

 さっぱり、わからん!


 ……そうか、五千円じゃ全然足りなかったのか!?


 「なるほど、五千円じゃ足りなかったのか!ならこれでどうだ?」


 そう思い俺は財布から更にもう一枚五千円札を取り出しリリムへと差し出した。が、――


 「ち〜が〜う〜!!私は、ダーリンと!一緒に!い・き・た・い・の〜〜!!」


 「……え??」


 何故か余計に怒らせてしまった。


 (俺と行きたい??今そう言ったか?言ったよね?言いましたよねっ!?)


 てことはアレか?……俺は、『一緒に行こう』って誘われてたのにも関わらず、『お金渡すから一人で行ってきな』って返してたのか!?


 (……いや、アホか俺ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!そりゃ泣いて当然だわ)


 「ご、ごめん!!…でも、何で俺と?」


 「…ぐすっ……ぐすっ…、好きな人とお出かけデートしたいって思うの、へん?」


 「いいえ、まったく!ぜんッッぜんッ!!これっぽっっっちも変じゃございません!!!女の子の気持ちに気づけない俺が鈍感クソザコ童貞野郎でした!まじ、スンマセンしたーー!」

 

 俺は思いっきり床に頭を叩きつけ


 「ぐすんっ、……じゃあ、一緒に…すんっ…行って…、すんっ、くれる……?」

 

 「っ!あ、ああ…もちろん!ご一緒させていただきます!ありがとうございます!!!」

 

 「……うん」


 なんだよ、この悪魔!天使かッ!天使なのか?

 

 「ダーリン、頭…血出てるけど大丈夫なの?」

 「ん……?ああ、大したことないよ。それより早く行こう、ゲーセン」

 

 道中リリムの魔法で傷を治してもらいながら俺たちは、ショッピングモールへと向かったのだった。

 

 


 

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