第30話 役に立てるのなら①
国綱さんは、少しお疲れのご様子でしたが……私を見ると、優しく微笑んでくださいました。
「楽しそうだね」
『螺子さんに、飲み物を教えていただきました』
「そう。僕も何か飲もうかな」
「私がご馳走しますよ、国綱さん」
「んー。甘いのがいいですね、濃いめのココアで」
「だと、バンホーテンのがいいでしょう。私はキャラメルラテで」
国綱さんが選んだのは、濃い茶色と言うか黒と言うか。
乃亜さんのは、螺子さんが飲まれた『かふぇらて』と同じようなものでした。螺子さんももう一度、今度は緑の飲み物を買われてから……机を囲むように座ることに。
「鑑識結果には、少しばかり時間がかかるでしょうが……国綱さんの
乃亜さんのお声は……固いです。
何か……あの黒い布によくない事が起きたのでしょうか?
螺子さんも、その事は話してくださらなかったですし……私がいると話しにくいのかもしれません。
と思ったのですが、乃亜さんが私の方を……見たような気がしました。顔が見えないので、向きを変えたようにしかわかりませんでしたが。
『? あの?』
「
『え?』
「あなたの右足を所持しようとしていた存在は……殺されました。死んでしまったのです」
『……え?』
生きていた、あの黒い布の存在が……死んでしまった?
どう言う事でしょう?
私は……真ん中がぽかんと空いたように感じました。
この感覚は……なんでしょうか?
悲しい?
苦しい?
辛い?
いいえ、それらではないでしょう。
ですが……何も感じないわけではないです。
だから……不思議で仕方がない。
「……死因。死んだ原因を探るのに、国綱さんの能力をお借りしていましたが。痕跡を探るのは……難しかったのです。もしかしたら……翠羽さんの能力をお借りせねば、とも考えてしまいました」
「課長!? あの惨状を翠羽さんにも見せるんですか!?」
「……私一個人としては、見せたくない。しかし……刑事としては、協力を仰がねば……いくら、他の
「……そんな」
どうやら……私には見せたくないくらい、凄いものとなって、あの黒い布は死んでしまったようです。
国綱さんは見られたでしょうが……思い出したくないのか、お辛い表情です。
それほどまで……ですが、私で何かお役に立てるのであれば。
記憶がないとか、女であることは関係がありません!
『やらせてください。……お役に立てるのであれば』
「……翠羽」
『大丈夫です。国綱さん』
私はひとりではありませんから!
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