第29話 簡単な説明
『この建物は……何をする場所ですか?』
座る事は出来ませんが、浮いていても螺子さんにはニコニコと微笑まれるだけでした。
「そうですね。
『……どんな?』
「失礼。そちらの記憶も欠如していますね? 簡単に言いますと……悪い事をした存在を捕まえておく建物のひとつだと思ってください」
『……ひとつ?』
このように、大きな建物が……まだ他にあるのでしょうか?
しかし……『悪い事』をした存在を捕まえておく?
たしかに、私の右足で何かをしようとしていたあの黒い布は……悪い事をしようとしていましたが。
「ええ。異種族に合わせた、『留置所』などと呼ばれている建物で……罪の度合いを測るまで待機してもらっていたりします。程度によりますが……ほとんどの悪人は、解放されません」
『……悪い事をしたからですか?』
「そうですね。許しがたい事をした場合が……多いからです」
螺子さんは、自販機で作った飲み物を……軽く口につけました。その後、軽く息を吐きましたが。
『…………私、の身体ですが。悪い人達に、利用されているのでしょうか?』
国綱さんにも少し似た質問をしましたが……螺子さんは、答えてくださるでしょうか?
少し気になり……聞いてしまいましたが。
すると、螺子さんは獣耳をピンと立てました。
「……そうですね。その可能性は十分あるでしょう。私もまだ課長に詳しく聞いていませんが……お嬢さんの身体を利用しようとしているのは許せませんね」
コップは柔らかい素材で出来ているのか……螺子さんの毛で覆われた手で軽く潰れかけました。
びっくりしましたが……この方にも心配していただけるのが、少し嬉しかったです。初めて会う方ですのに……。
『……ありがとうございます』
ですから、お礼を告げますと……螺子さんは少し頬を緩ませて笑ってくださいました。
「……いえ。大したことは出来ていませんが。私もあなたの身体を見つける手助けをさせてください」
『……良いのでしょうか?』
「課長……
『……ありがとうございます』
あの黒い布の存在以外……本当にお優しい方達ばかりです。
あの黒い布は……私の身体を、何に利用しようとしていたのでしょう? 私の魔法は……幽霊の方にあるようですから、何も役に立たない……と思っているのは私だけかもしれませんが。
国綱さんはまだでしょうか?
何か、得たものはあったのでしょうか?
早く……聞いてみたいです。
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