第27話 獣人と自販機
「
建物の中は、初めて見るものばかりですが……国綱さんと逸れないようについていきますと、透明人間の
お声が、少し前と違い……穏やかではありませんでした。
「……現場は?」
「……事前にお知らせした通りです。そのままにしてあります」
「それは助かります。……
「……部下のひとりと一緒にいてもらいましょう。君、あの彼女を案内してあげなさい」
「はっ」
乃亜さんは、国綱さんとどこかに行かれてしまい。
私は私で……動物の耳を持つ、顔も毛で覆われた女性らしき存在と一緒にいることになりました。ついて行ってはいけなかったのでしょう。
『……よろしくお願いします』
しかし、わがままを言って国綱さんを困らせたくはありませんので、女性にとりあえず挨拶してみました。
すると、獣耳の方がピンと立ち上がりました。
「これはご丁寧に。私はキャット族の者です。
『……翠羽です』
「課長からは少々ですが、事情はお聞きしています。ひとまず、用件が終わるまで署内の休憩所へ行きましょう」
『はい』
足以外の姿が見えているかはわかりませんが……声は無事に届いているようです。
道行く存在らにも……それが出来ていると分かったら、大騒ぎどころで済まなかったでしょう。変な視線を感じていたので、少々嫌な思いはしましたが……ここでは違うようです。
螺子さんの後ろを飛んで、すれ違う存在がいても一瞬見られるだけでした。
「さあ、どうぞ」
螺子さんが案内してくださった場所は……壁際にたくさんの箱がありました。
天井近くまで高さがあり……色んな色の枠が組み込まれていて。
鮮やかで、興味が持てます。
『……これは?』
「ああ、記憶が朧げだとも課長に聞きました。これは……お金とボタンの操作と言うもので、飲み物が出来上がる機械なのです。自販機と言いますね?」
実際にやりましょう、と。螺子さんは小さな板を取り出し……黒い枠のところへ押さえ、丸く浮き上がっている場所のひとつを押しました。
すると、下から音が聞こえてきて……別の枠の中で何やらかちゃかちゃと動いています。
覗き込むと、いきなりフタのように開き……コップのようなものが出てきました。
『……出来たのですか?』
「そうなんです。あらかじめ出来ているものもありますが、熱々を飲みたい時などには便利です。逆に冷たいものもありますよ」
螺子さんは、コップを手に持つと……私にも見えるようにしてくださいました。中身は白っぽい茶色の液体です。
『……?』
「甘いもの、しょっぱいもの、苦いもの。色々ありますよ? 今は飲めないのですよね? 課長達の用件が終わるまで、ここでお話しましょう」
『……はい』
まだ口などが戻っていないので……食事は出来ませんが。
このように、別の存在と話すのも悪いことではないと思いました。
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