第24話 警察との信頼


翠羽みはね、『魍魎もうりょう』と言うのは……簡単に言うと、めちゃくちゃ悪い存在達の集まりだ」



 国綱くつなさんが、記憶の無い私にもわかりやすく教えてくださいました。


 そして、乃亜のあさんとのお話で既に感じてはいましたが……あの黒い布は、やはり悪い存在だったようです。



「『魍魎』の目的は、ひとつに定まっていないとされています」



 乃亜さんは、『とーめーにんげん』なので顔や手足は見えませんが……しっかりカップを持って、お茶を飲んでいらっしゃいました。飲んだものも見えないようで、吸い込まれるように消えていきます。



「ええ。僕が聞く限りでも、その情報は得ています」


「我々警察内でも極秘事項ですが……国綱さんは『蘇芳すおう』を宿す、何でも屋さんですからね? これまでの功績を称え、我々警察でも民間人に依頼をさせていただいていますから」


『み、みんか? こう……せき?』


「おっと、失礼。簡単に言いますと……国綱さんは、素晴らしい能力をお持ちの人間。我々もたくさん助けていただいているのです」


『……そうなんですね』



 難しい言葉の並びには……理解が追いつかないのは悔しいですが。乃亜さんは困った様子もなく、わかりやすく教えてくださいました。



「奴らの下っ端程度は、何とか私達も捕縛は出来ましたが……所詮は下っ端。大した情報は得られませんでした。そこに、国綱さんが幹部間近の奴を連行してくださったんです。国綱さん……翠羽さんは、どのような力の持ち主か伺っても?」


「……他言しないのであれば。署内なら、あなたの信用していい人に」


「もちろんですとも。我々もあなたの信頼を失いたくはありません」



 乃亜さんが、見えなくとも強く首を振ったように感じましたので……国綱さんは、自分で握っていた手を開きました。軽く……傷跡がありました。



『国綱……さん?』


「大丈夫。ほんの少しだけ、爪を食い込ませただけだ。……見せてあげて」


『……はい』



 乃亜さんには、実際に見せなければと言うことでしょう。


 ですから、少し苦しく思いましたが……両手を傷に添え、魔法を使いました。



「……治す? いえ、傷跡が逆時間軸で戻る?」



 乃亜さんは、琥珀こはくさん以上に……私の魔法をよくわかってくださるようです。



「まだ、時間流を戻す魔法しか解明出来ていませんが……身体本体ではなく、魂に転移しています」


「それで……魔法を分散させ、我が物にしようと画策。……奴ららしい、性根の悪い計画ですね」



 国綱さんの言葉に続いた、乃亜さんの言葉は。


 何かを……許せないと感じてしまうくらい、強い言葉でした。

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