第21話 存在の勉強

 むーちゃんさんから、お勉強用のためにと……魔法か何かで板と棒のようなものを出してくださいました。


 板は、表面が真っ白なもの。


 棒の方は、むーちゃんさんがぽきゅっと音を立てて、フタのようなものを外しました。先が細くなりましたね?



『まず……部類として、多いのは『人間』』



 キュッキュッと、むーちゃんさんが触手と言うもので棒を持ち……板に何か書き付けていきます。


 字はよくわかりませんが……『人間』と言う記号と思うことにしました。



国綱くつな翠羽みはねがそう』


『……私は『人間』なのですか?』



 改めて、見える方から確認していただいても……実感が湧きません。


 足がひとつ戻っても、記憶はほとんど戻っていないからでしょう。



『そう。異質なものが……翠羽の霊体にも含まれて、いない。ミックスと言うのもあるけど……翠羽は多分『人間』』


『みっくす?』


『……異種族同士から生まれた、子供を言う。私……と、琥珀こはくの場合はその子が生まれたら呼ばれる』



 つまり、同じような存在じゃない者同士の場合は……子供が『みっくす』なのですね? 勉強になります!



『むーちゃんさん達にお子さんはいらっしゃらないのですか?』


『……まだ。エルフとスライムの前例が……特にないから』


『難しい……のですか?』


『……そう思って』



 子供がどのように出来るか……私にはわかっていません。


 なのですが、むーちゃんさんは身体を左右に震わせました。か、可愛らしいです!



『えっと……外には、たくさんの『異種族』がいますよね?』


『……そう。魔物、妖怪。亜人とか異星人……たくさんいるよ』


『そう言う種族名ですか?』


『今のは、人間よりも大雑把に部類しただけ』



 と、むーちゃんさんは板にまたたくさんの字を書いていきました。



 エルフ


 ドワーフ


 透明人間


 獣人


 異星人


 鬼


 邪鬼


 猫又



 などなどなど。


 区別しやすいように、板に書いてくださいましたが……たくさんあり過ぎて覚えるのが大変そうです!



『こ、こんな……にも』


『まだ一部。細かくすると……もっといる』


『……そうなんですね?』



 翠羽……記憶がないとは言え、まだまだ勉強不足のようです。



『私は魔物。琥珀は亜人と思って』


『……まもの?』


『人型もいるけど……だいたいは不可思議な形の存在。異星人も似たのが多い』


『……あじんは、どう言うのですか?』


『エルフ、ドワーフ。獣人は獣の特徴を持った人型。とりあえず、そう思って』


『わかりました』



 ただ……幽霊と言うのは? と聞いてみますと。


 むーちゃんさんは、左右に身体を震わせました。



『どの種族とも違う。魔物でもない……生きていない存在。けど、翠羽の場合は幽体という状態』


『生きていないけど……死んでもいないから?』


『そう思って』



 身体が普通の状態でもないようですし……国綱さんのお役にも立ちたいです。


 ほんの少しでも、むーちゃんさんに教わったことを活かしたいです!


 とは言っても……何も触れないのは変わりないので、魔法以外『居る』しか出来ませんが。

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