第11話 道すがら



「何でも屋は……言葉通り、『なんでも』請け負う仕事なんだ」



 琥珀こはくさんのお家に向かいながら、国綱くつなさんは説明を始めました。



『……なんでも?』


「そう、なんでも」



 昨日と同じ道を使うようなので、私も迷わずについて行けます。


 道中で琥珀さんに出会うことはありませんでしたが……人間でない存在がどんどん増えていくようです。エルフだけなく、獣の耳や顔を持つ者。もじゃもじゃした毛の塊であったり……体の色が様々な者も。


 すり抜けても……彼らのほとんどは、私を見ることが出来ないようです。


 それはさておき、国綱さんとのお話です。



『……なんでも、とは? 何を?』


「多いのは、護衛だね。最近はそう言う仕事はないけど……あの家を空けておくことがしょっちゅうだった」


『……お家に帰れないのですか?』


「……対象を守らなければいけなかったからさ」



『まもる』と言うのはよくわかりませんが。


 国綱さんが、少しだけ笑われたので……大事なことなのでしょう。


 次の角を曲がりますと、存在達は少し減りました。琥珀さんのお家が近いからでしょうか?



『……大事なことですか?』


「仕事とは言えね。ま、この目が役に立つようだから……使ってもらえるのはありがたいけど」


『……国綱さんは、お綺麗です』


「ふふ。ありがとう」



 私は自分の言葉を告げただけですのに、国綱さんからはお礼を言ってくださいました。


 幽霊ですのに、やはり真ん中あたりがほんわかあったかい気分になります。



『……あ』



 そう感じていると、もう琥珀さんのお家に着きました。


 入り口……玄関には、琥珀さんが居て手を振ってくださいました。



「時間通り! おはよ、国綱。翠羽みはね!!」


「や」


『……おはようございます』



 琥珀さんは、今日も元気いっぱいです。


 国綱さんより、ずっと明るく……日の光のようです。同じ光でも、琥珀さんは眩しく……国綱さんは優しい感じです。


 どちらも素敵です。



「今日は、せっかくだからやってもらいてぇことがあんだ!!」



 琥珀さんが入るようにおっしゃるので、昨日と同じお部屋に案内していただきますと。


 昨日ここで起きた跡が……そのままでした。


 私は少し……体の真ん中がきゅっとなる気がしたのです。



「……片付けなかったのか?」


「んー、わざと。翠羽、ちょいと頼みがあんだ」


『……私、ですか?』


「そ。あれ……直せない?」



 つまり……私の『魔法』が役に立つかもしれないと言うことですね。


 たしかに……国綱さんは、これの『べんしょう』とやらにお困りのようでしたので。


 私は、感じたものを出来るだけ忘れ……砕けたままのすいしょうのところへ飛びました。

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