第7話 蘇芳の宿主


翠羽みはね、僕の事を少し説明しようと思う」



 琥珀こはくさんのお家から……国綱くつなさんのお家に戻りました。


 お話があるようで……お庭を眺めやすい廊下に、国綱さんは腰掛けられました。その隣に、私は座るように言われたのでそうします。


 国綱さんの事を知れるのが、嬉しいのです。



『国綱さんの事ですか?』



 あの怪我をされた洋服から……和服と言うものにお着替えなされた国綱さんのお姿は、より一層お綺麗です。身体がないのに、ときめいてしまうのは無理がないと思いますが。きちんと聞こうと……出来るだけ姿勢を正しました。浮くのは仕方がありませんしね?



「そう。僕の目……だけど、変な色だろう?」


『お綺麗ですけど』


「顔は、だから」


『いいえ。私はその瞳を変だとは思いません』


「……ありがとう」



 少し、困ったような……でも、喜んでいただけたのか。嬉しそうな微笑みに変わりました。私はまたときめいてしまいます。



『……訳ありなのは、今日でわかりました。何か……特別なのですか?』


「……そうだよ。この瞳は……『宿主』を決めるやつだから」


『やどぬし?』


「僕みたいな顔持ちだけじゃなく……霊力と言う特殊な力を求めて、寄生する『存在』なんだ」


『……前々から、その瞳ではなく?』


「普通はね? ただ……僕は、生まれた時から寄生されていたんだ」



 説明してくださるお声が、少しお辛そうではあるけれど。


 国綱さんは、私のためにゆっくりと言葉を紡いでくださいました。



『……良くないものなのですか?』


「ある意味ではね。けど……君のように、不特定多数から狙われる強大な力でもある」


『……ちから?』


「君の場合は、『治す』もの。僕の場合は、『破壊』や『介入』……まあ、他にはあんまりよろしくないものとされているんだ」



 記憶が朧げである私にもわかりやすく説明してくださいますが……国綱さんは、瞳のことをあまりよろしく思っていないのでしょう。お顔が寂しげなものになっていきます。



『……お綺麗でも、国綱さんには不快なものですか?』


「……そうだね。ずっと、そう思っていた。けど……君には違うように見えているのなら、少しは気が楽かな」



 私の問いかけに、本当に少しばかり気力が戻られたのか。いつものような、お綺麗な微笑みを浮かべてくださいました。



『……琥珀さんが、すおうとおっしゃっていたのは?』


「この瞳の色と呼称だよ。赤紫に似た蘇芳すおうは……血と泥で出来たもの。何もかもを……見通す力と破壊を求めているんだ」



 その宿主とやらに……国綱さんは選ばれてしまった。


 さらに、ご両親は事故で亡くなられ……独りでこのお家で育ったことも、教えてくださいました。

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