第6話 探し物の鍵



国綱くつなさん!? 怪我を!!』



 風が止んだので、慌てて駆け寄ったのですが。


 彼自身は、気にもとめていないのか……血だらけの手を見ても、『ああ』と眺めているだけでした。



「大丈夫だよ、これくらい」


『そうは言いましても!』


「派手に血ぃ出てるだけだって。えーと、救急箱は〜」



 琥珀こはくさんも特に気に留めていらっしゃらないようですが。私は……辛いです。


 痛みを感じるはずがないのに……真ん中が痛い気がします。


 だから……触れないとわかっていても、国綱さんの手に透けた手を重ねました。



【……戻れ】



 ふいに、口から出た言葉ですが。


 自分でない、声でした。


 国綱さんも驚かれていらっしゃいましたが……目の前で起こったことが、もっと驚くことでした。


 ぱたぱた落ちていた血が……ゆっくりと上に戻り。


 手のひらに広がっていた血も……少しずつ、傷口に戻っていき。血が戻ったら……痛そうな傷まで、塞がっていきました。


 何が起きたのでしょう?



「……翠羽みはね? 今、何を」


『……わかり、ません』



 自分の声も元に戻りましたが……今のはなんだったのでしょうか?


 私は……今、何をしたのでしょう?



「へ? 今の治癒魔法?」



 琥珀さんにはわかったようで、持っていらした箱を落としそうになりかけていました。



『ちゆ……ですか?』


「レア中のレア! あ〜……わかりやすく言うと、すっげー珍しい魔法ってことでオーケー?」


『……まほう?』


「うーん。まあ……凄い事したんだよ、君」



 琥珀さんは、念の為にと国綱さんの手を見ましたが……傷口はどこにもなく、血まみれだった手も綺麗でした。いつも通りの国綱さんの手です。



「……これが、狙いか」



 しかし……国綱さんは、少し怖いお顔になりました。


 今の『まほう』と言うので……私は何かいけない事をしてしまったのでしょうか?


 びっくりしていると、国綱さんもですが琥珀さんも……大きくため息を吐きましたが。



「そりゃ、バラバラにしてでも方々ほうぼうの連中は手に入れたがるか?」


「……だが。肝心の『力』の方は魂に宿ったまま」


「あちらさんも相当焦っているだろうな?」



 お話の意味がよくわかりませんが……大事なことなのでしょう。


 私はとりあえずお話を聞いていましたが、国綱さんは軽く私の頭のあたりに手を乗せました。怪我をした手ですが、本当に綺麗元通りです。



「……しかし。翠羽、手当てありがとう」


『手当てですか?』


「怪我はいつものことだけど……痛くないよ。ありがとう」


『……いいえ』



 私の勝手ですのに、国綱さんに褒めていただけました。お顔もお優しい表情に戻っていました。


 先ほど感じた辛さが薄れて……代わりに、ほんわかとした温かい気持ちになれました。『嬉しい』と言うことかもしれません。

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