第3話 耳長の存在



「お? 国綱くつなじゃねぇか?」



 国綱さんに付いていきますと、どなたかに出会った様子です。


 私は初めてお会いする存在……人間ではなく、耳の尖った存在です。背丈は、国綱さんほどはありませんが……おそらく高いのでしょう。国綱さんが大き過ぎて、小さく見えるかもしれませんが。



「やあ、琥珀こはく。ちょうど探していたんだ」



 どうやら、国綱さんはこの方を探していたようです。



「ん? 俺?」


「ああ。彼女のことをね?」



 私の方を見て、彼に伝えたようですが……どうやら、琥珀と呼ばれた存在は『私』が視えるようです。国綱さんの紹介で、隣がぽっかり空いているように見えるはずの場所を見ても……琥珀さんは、目を丸くされました。



「……幽霊?」


『……はじめ、まして』



 視えるようでしたら、自己紹介は大事。


 記憶がないはずなのに、やはり私は自分でも不思議な存在です。



「……へぇ? 可愛い子じゃん? お前の彼女?」


「……冗談を言っているつもりかい?」


「おお、怖! はいはい、仕事関係? どう言う経緯?」


「浮遊霊のように存在していたんだが……足があるだろう?」


「あ、マジだ」



 話し込むようでしたが、道の往来と言うこともあり……私達は歩きながら、別の場所へ行くことになりました。


 国綱さんが琥珀さんへ、私の事情説明をされている間……私は道ゆく存在達を眺めることにしました。


 ふわふわした者。


 もじゃもじゃした者。


 人間は居ますが。


 琥珀さんのような耳長の者もいれば。


 獣の耳が頭から生えている者も。


 同じ種類の存在でも、個々によって姿がいくらか違う。実に面白いですね? 見ていて飽きません。



「……と言うわけだ」


「へぇ? 記憶がないのに、意識がはっきりしてる浮遊霊。……うーん、興味深い!」


「協力してもらえるか? 身体の方もだが」


「いいよいいよー? 国綱は常連だしな?」



 お話も終わったようで、私は意識を国綱さん達の方に戻すことにしました。


 琥珀さんは、機嫌が良さそうな笑顔で私を見てきました。



『? あの?』


翠羽みはねだっけ? 俺は、エルフの琥珀!」


『……エルフ?』


「そうそう! 耳が長くて……まあ俺はそうでもないけど、顔が綺麗な種類ね!」


「君、他のエルフに言われたら叱られるよ?」


「事実じゃん? 翠羽は可愛い顔してんな!」


『……可愛い、ですか?』


「え? 自覚無し?」


『…………国綱さん達が、お綺麗なので』



 私がきっぱり言うと、琥珀さんは目を先程以上に……さらに丸くして。国綱さんは、少し困った表情になりました。



「……ありがとう、翠羽」


『……お礼ですか?』


「天然ちゃんだねぇ? ま、国綱は『目』のこともあるから綺麗系だけど」


「まあ……宿主だからね」



 琥珀さんに指摘された、国綱さんの綺麗な赤紫の瞳。


 往来する存在にも、目は様々な色がありましたが……やっぱり、国綱さんの瞳は一番綺麗です。


 そして、何やら秘密があるようです。


 この様子だと、教えていただけるのでしょうか?


 琥珀さんが、こっちだとお家のような建物に行こうと導いてくださいましたが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る