第3話 みんなでお風呂
私:「あの、みんな汗かいたし、お風呂入りませんか?」
秋田:「あたしたちはあとで入るから、3人で入ってきな」
村瀬:「いいわよ。3人で先入って」秋田先輩と村瀬先輩は仲がいい。
『むしまんじゅう』を食べてテンション下げてた雅美の顔が明るくなった。
雅美:「そうだよ。温泉旅館に来たんだから、まずはお風呂入んなきゃ」
私:「さっきちょっとのぞいたけど、キレーな檜風呂だったよー。マリも入ろ」
マリ:「うん。じゃ、先輩、お先にお風呂いただきます」
私と雅美とマリの3人で先にお風呂に入ることになった。
雅美:「このメンバーでお風呂入るの、初めてじゃない?」
雅美がTシャツとジーンズをちゃっちゃと脱ぎ捨てながら言った。
私:「ああ、そう言えば、マリと一緒は初めてだねー」
マリはいつものおっとりした動作で服を脱いでいる。
雅美:「マリ、アンタ着やせするするタイプ?いいカラダしてんじゃん」
マリ:「あんまりジロジロ見ないでください。恥ずかしいです」
雅美:「下着もオシャレだねー。なんかアレ?勝負するつもり?」
マリ:「ふ、ふつうです。勝負ってなんですか?いつもと同じです」
ちょっと怒ったときのマリは2割増しにカワイイ。
マリをからかったと思ったら、雅美は私の体をジロジロ見る。
雅美:「みゆきはボディの格が違うよねー。胸だけ重量級って感じ?」
私:「ちょ、ちょっと。またソレ?」
雅美:「ホラ、マリ。見なよ。バーン! ドヤー! って感じしない?」
マリ:「あの、私、先に入ります」マリがタオルと手で前を隠して先に入った。
雅美:「あ、マリ。赤くなってる。さては恥じらいってヤツだなー」
私:「変なこと言ってないで。さあ、入ろうよ」
檜風呂は大きくはないが、3人で湯船につかるにはちょうどよかった。
雅美:「ねー、アキ先輩とムラ先輩、デキてるって噂ほんとかな」
私:「デキてるって、なに? どういうこと?」
雅美:「アレだよー。ホラ、レズビアンとか?」
私:「どうかな。ただ仲がいいだけじゃないの?」
マリ:「百合・・・ですか?」マリは気のせいか目がうっとりしてる。
雅美:「マリ、もしかしてアンタもそっち系?」
マリ:「そっち系ってなんですか。私は中学からずっと女子校でしたから」
雅美:「ははあ。女子校ねえ。いろいろあったんだー」
マリ:「いろいろって、そんな、友達にそういう人がいただけです」
雅美:「友達ねえ。そういう言い方するときって、自分のことだったりして」
マリ:「わ、わたしは、そんなことなかったですよ?」
雅美:「ふーん。ところでマリはバージンなの?」
マリ:「そ、そんなこと、なんで言わないといけないんですか?」
雅美:「ははーん。経験あるんだー。女子校なら他校の男子生徒と?」
マリ:「あるわけないじゃないですか。そういう雅美さんはどうなんですか?」
雅美:「聞きたい? アタシの男性遍歴」
私:「さっきからなに言ってるの。雅美だって経験なんてないくせに」
雅美:「そういうみゆきはどうなのよ? バーンのドーンでモテたでしょうに」
雅美が私の胸を指でつついた。
私:「ちょ、ちょっと。なによ? そのバーンのドーンって?」
雅美:「バーンのドーンはソレに決まってるでしょ。ソレ」
私は胸に触ろうとする雅美の魔の手を全力で阻止した。
「先輩、お先いただきましたー」
私たち3人が部屋に戻ると、秋田先輩も村瀬先輩もいない。
私:「あれー? 二人ともどこ行ったのかな?」
マリ:「散歩にでも出かけたんでしょうか?」
雅美:「この暑いのに?」
縁側に出て庭を見わたすと、ちょっと離れた場所に東屋があった。
秋田先輩と村瀬先輩はそこでなにか楽しそうに話してる様子。
雅美:「ははあ。やっぱ、あの二人アレだねー」
マリ:「百合ですか?」
私:「いやいや、ふつうに話してるだけだと思うけど」
雅美:「どうかなー。あのフンイキは友達以上だと思うなー」
マリ:「ソフト百合?」
私:「まさかー?」
と思ったら、二人が抱き合ってキスを始めた。
雅美:「うわー。ウワサ、ホントだったんだ」
マリ:「はい。百合ですね。」
私:「ウソ! マジー?」
3人で急遽密談。見なかったことにした。
私:「ここ、いちおうエアコンあるけど、風通しよくて涼しいね」
マリ:「そうですね。エアコンなくても大丈夫。」
雅美:「だけどさ。お風呂入ったらやることないね。テレビもないし」
私:「まーねー。お風呂に入るのが目的だから。」
マリ:「そうですね。これでテレビ見てたら普通の休日と同じ」
雅美が目をキラキラさせて顔を近づけてきた。イヤな予感。
雅美:「ね? ふつう温泉旅館てさ。有料のエロビデオとかあるでしょ?」
私:「ビジネスホテルでもあるよ。カード買って見るヤツ。有料のアダルト映画」
マリ:「見たことあるんですか?」
私:「まさかー。」
雅美:「私はあるぞ。なんかスゴイヤツだったなー」
マリ:「スゴイって? どんなふうに?」
私:「マリったら。なに? そういうの興味あるの?」
雅美:「オー、イエー、カモン、カモーン、とか言っちゃってさー」
マリ:「言っちゃって・・・それから?」
私:「もう、やめなよ。そんな話」
秋田先輩と村瀬先輩が戻ってきた。
二人とも笑ってる。楽しそうだ。
秋田:「なんだ。もう出たの。ゆっくり入ればいいのに」
私:「いっぺんに長湯すると湯あたりしますから」
マリ:「温泉は少しずつ何度も入るのが体にいいらしいですよ」
雅美:「先輩たちはどこに行ってたんですか?」
雅美が何も知らないふうに、しれっと言う。
秋田:「ちょっと庭をぶらぶらしてただけよ。ね。千恵」
村瀬先輩とアイコンタクト。
やっぱ、二人はラブラブかあ。
雅美が私にアイコンタクトしてきた。
どういう意味?
雅美:「あ、先輩もお風呂どうぞ。檜風呂で香りがいいですよー」
マリ:「お肌がトゥルトゥルになりますよ」
秋田:「千恵、入ろうか?」
村瀬:「そうね。そと歩いて汗かいちゃったし」
顔を合わせてにっこり笑うと、二人は着替えを持って出て行った。
雅美がニヤニヤしながら小声で言う。
雅美:「さっきまで、キスしてたんだよねー。あの二人」
マリ:「けっこう長かったですよね」
雅美:「ベロチューだよ。きっと」
マリ:「フレンチキスですね」マリが顔を赤くしてうっとりしてる。
私:「ちょっとー。ナーニ? あなたたち。そういうの好きなわけ?」
雅美が変な目つきでまた顔を近づけてくる。
雅美:「そういうみゆきはどうなのよー?したことあんの?ディープキッス!」
私:「ないけど。それがナニか?」
雅美:「ふーん。それも経験なしか。じゃ、あたしとやってみる?」
マリ:「ふえっ。二人も百合だったんですか?」ナゼか恥ずかしそうに喜ぶマリ。
私:「そ、そんなわけないでしょ。ナニ言ってんの。マリまで変な声出して」
雅美が足音を忍ばせて廊下に出て行く。
私:「雅美。どこ行くの?」
雅美:「シッ! 声が大きい」雅美はお風呂のほうを指差している。
私:「ナニするつもり?」
雅美:「先輩たちがさ。お風呂でナニしてるか気になるじゃない?」
マリ:「気になりますね」
雅美:「だよね。庭でベロチューだよ?お風呂でナニするのかね。あの二人は」
マリ:「きゃっ。ナニするんでしょう?」マリが身悶えし始めた。
この二人はどうもエッチな話題で意気投合してしまうようだ。
そういう私も気になるので、3人でこっそり脱衣所に忍び込んだ。
雅美:「うわっ。コレ誰の? 黒ブラと黒ショーツだよ」
マリ:「レース付いてますね。オトナっぽくてオシャレ」
私:「たぶん村瀬先輩のだよ。Tシャツ黒だから」
雅美:「じゃ、こっちのスポーツブラは・・・アキ先輩?」
マリ:「こちらは実用本位ですね」
私:「マリ。あなた、下着評論家なの?」
3人でヒソヒソ話していると、お風呂場から笑い声が聞こえてきた。
「あん、そんなとこさわんないで。」(村瀬先輩の声だ)
「えー? これで感じるの? 千恵は感じやすいんだなー」
「ナオだって、ホラ。」(秋田先輩の下の名はナオミという)
「ひゃっ、くすぐったい。ちょっとー、いきなりは卑怯だぞー」
「じゃあ、これはー?」(村瀬先輩が秋田先輩にナニかしてるらしい)
「あはは。あは。あは・・・や、やめて・・・」(秋田先輩の笑い声)
3人揃ってググっと耳をそばだてる。
二人でナニしてるんだろう?
秋田先輩の笑い声が止んで、し~んとなった。
雅美:(ナニしてるんだろうね?)雅美がお風呂場を指差す。
マリ:(抱き合ってるんじゃない?)マリが両手を胸で交差させる。
雅美:(お風呂でもベロチュー?)目を閉じて唇を突き出す雅美。
マリ:(それだけじゃないかも?)目を見開いてワケのわからない仕草。
私:(もうそのへんでやめときなよ)私はあきれて二人の肩を引っ張った。
お風呂場はしーんとしたまま。
チョロチョロとお湯が流れる音がするだけ。
名残惜しそうな2人をせかして私たち3人はそーっと廊下に出た。
足音を忍ばせてやっと居間にたどりついた3人はいっせいに息を吐いた。
雅美:「ぷは~~~~っ! なんかアレだねー」
マリ:「っはあ、っはあ。 百合ですねー。リアル百合」
私:「は~~っ。見つかったらダダじゃすまないわよ!」
雅美:「そーだねー。特にアキ先輩に一発くらうかもねー」
マリ:「最近、テコンドー始めたとか言ってましたよね」
私:「村瀬先輩だって高校の時、合気道やってたってよ」
雅美:「うわっ。バレたら二人がかりでボコられるな」
やっと息切れがおさまった頃、先輩二人がお風呂から戻ってきた。
秋田:「どうしたの? みんな汗かいてるみたいだけど?」
雅美:「いえ。なんでも。ちょっとコーフンしちゃって。あはは」
マリ:「あの、ほんとになんでもありません。」マリは耳まで真っ赤だ。
私は2人を肘で小突いて、間に割って入ってごまかした。
私:「お、お風呂いかがでした? お肌トゥルトゥルでしょう?」
秋田先輩は目をパチパチさせただけで、特に気づかなかったみたいだ。
秋田:「そーね。いいお湯だったな。ね。千恵」(ね。千恵。だって!きゃ~!)
村瀬先輩は黙ってうなずいて、秋田先輩の分と二人分のお茶を入れた。
どうやら私たち3人の盗み聞きはバレてないみたいで、私はホッとした。
つづく。
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