渦巻く怨念迸る憎悪

「で、ラックはこれからどうするんだい?なし崩し的に協力してくれたとはいえ、君は旅人だろうしこの国に帰属するわけにもいかないだろう?」


「そうだな。しばらくは色んな国を回って冒険者ランクを上げていこうと思ってるよ。とりあえずは北のボスを殴りに行ってくる。」


「助かるよ!聖国との交易が途絶えてたからね。アンデッドを倒すために教会に寄進もしなきゃいけなかったから、本当にありがたい。そうだ!宝物庫から好きなもの持っていっていいよ!」


「いいのか?」


「いいよいいよ!あっても使わないなら宝の持ち腐れだし!使ってくれたほうが道具も喜ぶさ!」


「なら遠慮なくもらっちゃおうかな。ありがとう。」


「こういうところで恩返ししていかないとね。本当に感謝しているんだから!」


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シークレットクエスト『王都に迫る悪意』を特殊条件でクリアしました。

通常クリア報酬

・『王城宝物庫自由権限』

称号王国を救いし者

特殊クリア報酬

・ストロファスト王国国王『アグラノア・ストロファスト』との友誼

称号正義を護る者

称号七元徳・知恵

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特殊条件?王妃様と首飾りの件か、教会の幹部が黒幕だと見抜いた方か、あるいは両方か?考えてもわからないな。クリアしたんだから条件ぐらい教えてくれればいいのにな。自由権限はそのまんまだな。

問題は称号か。……見たくねぇ!厄介ごとの香りがプンプンするもん。見ないわけにはいかないかなぁ。


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称号王国を救いし者

王国に迫る悪意は聡き者により払われた。

NPCからの好感度上昇[極大]

シークレットイベントの発生率[中]

悪意に敏感になる。

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これはシークレットクエストの報酬なんだから、まぁ普通だな。種族的に好感度上昇がめちゃくちゃありがたい。


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称号正義を護る者

絶対的な守護者が、悪を断つ。

悪意を持つ者に特効[極大]

犯罪者が視界に入ったときに強調表示する。

護るべき正義があるとき倒れなくなる。

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つっっっっっよ!!!!護るべき正義ってのが曖昧だけど、要するになにか譲れないものがあれば死ななくなるってことか!?要検証だけどもし想像通りならとんでもなく強いぞこれ!犯罪者強調表示もありがたいし、完全に当たり称号だな。さて、最後が怖いな。強いとは思うけど有名所過ぎて逆に怖いまであるな。


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称号七元徳・知恵

基本的な7つの徳の内の一つ。

知恵が絡む事象において他の誰よりも優れる。

知恵が絡む事象において不可能がなくなる。

知恵の神からの関心を受ける[極大]

この称号は世界で一人しか持つことができない。

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これは…ヤバイな。他のプレイヤーにバレたら間違いなくチートを疑われるし、しかもユニーク称号だから俺しか取れないのがヤバイな。このゲーム、キャラの作り直しをしてもゲームデータ自体は消えないからな。そして、もう隠しもしなくなったな。神様。これどっかでお呼び出しされるんだろうな……一旦考えるのやめよ。


「それじゃあ宝物庫ちょっと見たら北の森行ってくるわ。」


「うん!本当にありがとね!いつでも王城に入れるようにしとくから、暇ができたら来てね!」


「おう!じゃあまたな!」


こうしアグと別れた俺は宝物庫からいくつかアイテムを失敬した後、北の森に向かった。流石に今の装備を超えるものはなかったことを追記しておこう。


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「さて、ボスさんはどこかね?強いやつは奥にいるのがセオリーだしちょっと走るか。」


この間にも狼さんは襲いかかってくる。グーパンで一撃だが。

しばらく走ると、木が無い開けた広場が視界に入ってきた。


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!!!!!Warning!!!!!

ボスエリアに入ろうとしています!

本当によろしいですか?

→はい

 いいえ

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もちろんいいに決まってる。


「さて、行くか!」


森と広場を隔てていた透明な壁がなくなり、独特の緊張感が漂う。広場に入ると同時に、地面から黒い物体が滲み出て、そして。


「マジかよ!?」


狼をかたどった。


「「GYAAAAAAOO!!!」」


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ユニークボス:『渦巻く怨念ウォセ・カムイ』

種族:???

殺された狼の怨念が復讐の神を作り出す。

敵対者のステータスを制限する。

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ユニークボス:『迸る憎悪ハティ』

種族:???

その憎悪は、重く、醜く、そして強い。

敵対者からダメージをくらえばくらうほど攻撃力が上がる。

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「クソゲーじゃねぇか!ステータスのゴリ押しも制限されてるし、キュランに一体任せるのは…」


「あるじ!我もたたかう!いぬっころごときにやられる我じゃないのだ!」


キュランが頬を膨らませて抗議してきた。いつのまにか、俺は馬鹿になっていたらしい。俺が負けるなんてことはありえないのだ。なにせ俺は運に愛されてる。それに俺にはキュランがいるからな。


「ふはっ!そうだな…そうだよな!ありがとなキュラン!どうやら弱気になりすぎちまってたらしい。こりゃこいつらしばき倒したら、久しぶりに師匠無言鬼畜AIんとこ行くかね。……ふぅ。キュランは左のわんこを頼む!龍と犬の違いを見せつけてやれ!」


「キュ!」


キュランにウォセ・カムイを任せたが、実際問題こいつらがどんな動きをするのかわからない。どうもステータス制限はスキル扱いでは無いようで《善悪の天秤》も発動しないし、《流星の賛美歌》は着弾までにタイムラグがあるから当たらないだろう。


が、なぜだか負ける気がしない。どころか、今ならノーダメで勝てる気がする。


「来いよ犬っころ!憎悪だか酵母だかしらねぇが、俺は忙しいんだ!運命が俺を呼んでるからな!」


「GYAOU!」


ハティが後ろ足に力を込めて跳んできて腕を振り下ろしてくるが俺はそれをヘカで受け止める。


「グッ!なるほど確かにお前の攻撃は速いし重いな……だが、師匠には及ばん!フンッ!」


俺はハティの体を弾いた。すると後ろ足だけで踏ん張っていたハティはバンザイの体勢になる。俺はそこにヘカを叩き込んだ。


ズガッ!


「ハッハー!ボディががら空きだぞ!!!」


ドガァッン!!!


ハティはすごい勢いで木に激突した。


砂埃が晴れると、ハティは忌々しげだった顔を更に憎悪に歪めて出てきた。だが何が起こっているかわからないような顔であたりを見回している。そう。

とは言っても、別に逃げ出したわけではない。皆さんはを覚えているだろうか?


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《暗夜の静けさ》

闇に相応しき静けさを。

5秒間誰にも認識されなくなる。

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そう。このアホみたいに強いスキルである。もちろん再使用には30分の時間を要するが、それだけの価値はある。俺は呆けているハティの横から普段なら隙だらけであろう全力の振り下ろしを叩き込んだ。


「GYAOO!?!?」


ハティを中心にクレーターができ、ハティの悲鳴が轟く。ハティがこちらを憎々しげに睨んでくるが、もう足一本動かすことが出来ないようだ。


「憎しみを向けるのは勝手だが、襲いかかってくるってんなら返り討ちにするぞ。何回でもな。」


俺がそう言うとハティは諦めたようにそっと目を閉じた。


「さて、キュランは大丈夫かな?」


今回はよっぽどのことがない限りは俺は手を出さないと決めている。まぁキュランなら大丈夫だろうよ。なんせ圧倒してるしな。


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キュランside


「GYAOO!!!」


犬っころウォセ・カムイが小馬鹿にしたようにこちらを見てくる。我の体が小さいからなめてかかってるんだろう。だが、戦いの場ではその油断が命取りになるのだ。向こうでは主がもう一匹の方をコテンパンに叩きのめしている。さすが主。略してさすある。主に仲間がやられているのを見た犬っころはそちらに駆けつけようとする。が、行かせはしない。


「VOOOOOOOO!!!!!」


《咆哮》で強制的にこちらを向かせる。こっちを見た犬っころは毛を逆立てて威嚇し始めた。だが、無駄なのだ。こいつが戦闘タイプではないことは本能的にわかっている。我は足に力を込めて急加速した。狙いを首に定めて、《切り裂く》!!!


「GYAAA!!??」


ここまでダメージを食らうのは想定外だったのだろう。だが戦いの場に立つ相手を見た目で判断するミスを犯したのはこいつである。故に容赦はしない。我の全力を持って相手するのが礼儀というものだろう。たとえ相手にそれがなかったとしても。


我は口に魔力を貯めだす。危険に気づいた犬っころが慌てて駆け寄ってくるがもう遅い。お前が抱え込む怨念ごと消し飛ばしてくれよう。


《竜の息吹》!!!!!


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ラックside


キュランの《竜の息吹》がウォセ・カムイを吹き飛ばす。戦いになると凛々しくなるキュラン可愛すぎるな。後でアルバムにまとめとこう。


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ユニークボス:『渦巻く怨念ウォセ・カムイ』

ユニークボス:『迸る憎悪ハティ』

を倒しました。

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「疲れたー!今日はもうログアウトするか。キュランもお疲れ!」


「キュ!」


































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