第7話 冒険してみた?

やつは、すこぉしだけ心を許したら、当たり前の様に毎朝迎えに来て、私の朝食を作った。ここ数日、出会ってからというもの、毎日来てる。まだ、出会ってから一週間位なのに。いちいち起きるのが面倒な私は、初めて生物学的男に合鍵を渡した。やつは、私が、ヨダレを垂らして寝ていても気にしない。部屋が、少し散らかっていたら、普通に片付けてくれる。出来たやつだ。愚痴を一言も言わずに、毎朝私が朝食をモグモグ食べているのを、満足そうに眺めている。

『美味しい?』

『ん。』

だから、役目逆じゃね?

『なぁ、キラキラネーム。』

『あのさ、普通に名前呼んでくれない?キラキラネームとか、恥ずかしいからな。で、何?』

『お前の家に行きたい。一人暮らししてるんでしょ?』

『…え?来てくれるの?』

『え?呼んでくれないの?』

『いやいやいやいや。明日、休みだよね?じゃあ、明日ね!迎えに来るから、五時に!』

『休みの日位、もう少し寝かせろや!』

『あー、なら六時ね!』

『1時間の延長…まぁ、いいや。宜しく。』

『うん!もてなすね!』

『お、おう…。』

 やたら、家に行くと言ってから上機嫌の萌ダーリン。何か、デザート出てきた。

『これ、着けちゃう!』

 …可愛い。何だ、こいつ。小動物か?見た目は、大型犬のハスキー顔のクセに、やる事はハムスターじゃないかよ。どうやったら、こんな息子に育つんだろ。そして、当たり前に車に乗り込みご出勤。電車より、よく眠れるから良しとしとこう!しかも、交通費が浮くじゃないか。何買おう…ゲーム、アニメか?服…は要らねぇ。私は、浮いたお金で何を買うか、色々考えてワクワクしていた。

『何か、ワクワクして寝れない。』

『家に来るのそんなに楽しみに…。』

『そっちじゃない。』

まあ、或る意味で萌ダーリンの部屋に行くのは楽しみだ。御曹司の部屋だ。靴なんか、同じ黒い革靴沢山並んで、スーツなんてバーッと平然とかけられてて、ネクタイなんて…萌える。でも、私服ってあるのかな?最初に出会った時も、こいつはスーツをビシッと着こなして周りの目を引いていた。私服は、私の希望はキレイめカジュアルで居て欲しい。

『あー、目が冴えてきた。』

『だから、そんなに楽しみに…。』

『違うよぉ。残念だけど、そっちでじゃないよォ。』

『真由…。』

『ん?』

『キスしてみていい?』

『それは断る。』

『えー…。』

『先に取っとけぇ。』

いや、待て。突然、普通にキスとか言うなよ。すげぇ照れるんだよ。何か、心臓ドキドキしてるし。キスとか…仮にしてたら何年ぶりだろうか。萌ダーリンにとっては、ファーストキスになるんだろうか。その相手が、恋愛感情とかなくても平気でキスとか出来るのか、コイツ。意外とやるなぁ。

その後、車はいつもの道を、煽られることも無く平和に私の会社へと向かった。ちょっとだけ、久しぶりにドキドキした私を乗せて。


 

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