第6話 女子力って…。
『すんごいスッキリしたわぁ。』
『欲求不満だったのね。』
『違う意味でそうなるな。』
『それじゃね。早く寝たいのよ、私。』
『うん、また明日。』
そう言って、やつは去っていった。待て。また明日って言った?明日も会うの?何で?
『まってぇ!明日は、迎えとか要らないからァ!一人にさせてぇ!』
去りゆく高級車に向かって、私は吠えていた。届かなかったけど。
朝、早い時間にインターホンが鳴った。知ってる。誰が来たのか知ってる…。
『早朝の新聞配達ですか?こんなに早く迎えに来るなよ。』
『真由は、俺のストレス発散なんだよ。あ、癒しとか言うのか?』
『呼び捨てかよ…。人でストレス発散するの、やめていただけますぅ?それに、今何時よ…五時よ、朝の。』
『俺、毎朝四時に起きてるけど?』
『起床時間なんて興味ねぇわぁ…。取り敢えず、目立つから入り。』
『お、おう!』
『返事が不自然でぇーす。』
初めて男を部屋に入れた。生物学的に男。中身は女子。物珍しいのか?ウロウロしてるし。
『男らしい部屋だな!』
『褒め言葉って捉えとくわ。』
『朝ご飯は?食べた?』
『人を起こしておいて、朝ご飯とか…無理だろが。』
『作るね♡』
何か、可愛い…。ムカつく。見てると手際良いし。何なんだ?私の彼氏じゃなく、彼女なのか?いやいやいやいや。一応彼氏か。
『出来たから食べてみ。』
『ん。』
見事な和食の朝ご飯が、目の前に並べられてた。冷蔵庫の食材でコレ作るって…素直にすげぇ。一口、口に運ぶ。痛い視線を感じる…。
『食べずらいわ!』
『美味い?』
『…ムカつくけど、美味い。』
私より、料理の上手な彼氏の完成。萌える…。食事が終わり、やつが洗い物をしている間に、出勤の準備をする。結婚ってこんな感じなのかな?キッチンには、奴がいて、私が仕事の準備…おい。普通なら、そこの役目逆じゃね?普通じゃないって…これって最高なんじゃ?
『準備出来たぁ?』
『ん。もう行ける。』
『なら、そろそろ出発しよう。』
部屋のど真ん中に立ってやつが言う。
『なら、早く部屋から出ろよ。鍵、閉められないだろうが。』
『戸締り確認した?』
『ちょっと、主婦かよ…。』
二人で部屋を出て、私が鍵を閉めた。隣で、スーツを来たイケメンが待つ。傍から見たら、きっと羨ましいだろう。
『つか、やたらスーツ似合ってて萌えるわ。』
『何?』
『何でもなぁい。早く進めぇ。蹴飛ばすよ。』
二人で、私のアパートを出た。不思議だ。まだ、出会って三日なのに、やたら居心地がいい。何でだろう?車に乗ると、私は直ぐに寝落ちした。朝、早すぎるんだよ…。
『真由、着いたよ、会社。』
『え?もう?』
メイクしてるのに、目をゴシゴシ…。眠い。
『行ってらっしゃい。』
イケメンに高級車で送って貰って、お姫様気分で会社に到着。凄い視線感じる。
『真由ぅ!おはよう!あれ?彼氏さん?初めまして。真由の親友の麻美ですぅ。』
『いつから親友になったの?』
『やだぁ、前からじゃなぁい。』
猫なで声。得意の、お尻フリフリ。いつもより香水キツい。頭痛する。消えて欲しい。
『真由の婚約者の宇宙です。真由、親友居たんだな。だいぶ、タイプが違うけど。』
『違うから合うってあるじゃないですか?』
『違うのは悪くないが、ここまで違うと…うん。無理だな。』
『え?』
無理と言われた猫なで声女は、面をくらった顔で立ち尽くす。自分の猫なで声が、男に効かなかったのが初めてなんだろう。
『もう少し、香水は控えめにした方が良い。あと、服装はもっとシックに。その方が、あなたの魅力が出るのではないかと。あまり、フリル系は仕事には向かないかと思うが。では、失礼します。』
『…挑戦してみます♡』
奴は、男としても一流だった。相手にダメ出しをしながらも、うまくフォローしてる。なのに、童貞とか…萌える♡先に言っておこう。それから、麻美は見事なまでに、大人の女性になった。キャラ変した途端に、なかなかのスペックの男が出来たらしい。今までのは、なんだったの?あのプリ子ちゃん具合は(笑)
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