第4話 そんな爆弾発言私にするな。

 決められた。勝手に決められた。有無を言わせず決められた。何も言ってないのに、決められた。

『これは、俺からのプレゼントだ。受け取れ。』

 某高級ブランドのネックレスだ。私、金属アレルギーなんだよね…。

『プラチナだ。喜べ。』

『はぁ…。』

『取り敢えず、家まで送ろう。乗れ。』

 また、腕をグイグイ引っ張られ連れていかれたのは、高級車の目の前。これ、車両本体だけで一千万とかするやつじゃね?助手席に押し込まれ、拉致されるようにモールを立ち去る羽目になった。ところで、私のソイラテはどこで落としたのか…。お掃除の方、ごめんなさい。犯人は、このイケメン変態男です。

 車のハンドルを握るイケメン変態男は、横顔もやたら綺麗だ。男でも惚れるんじゃなかろうか。でも、中身は変態だよな。人と違うのって面白い。香水も、ほのかに香る位で心地いい。指長ぇ、やたら綺麗な手だ。

『おい。家はどこだ。』

 それ、モール出る前に聞こうよぉ。


 こんな私に彼氏が出来てしまった。出会って三分の彼氏だ。ウルトラマンか?それとも即席のカップ麺なのか?家まで知られてしまった。逃げられん。私の不注意だ。家を知られるなんて…でも、歩くのが面倒だった。ソイラテも飲めなかったし、やる気をなくしていた。でも、会社は知られていない。周りに知られる事はない。私は、いつもの電車に乗り、スカスカの座席に座り眠り始めた。車窓から見る景色は、いつもの風景で安心感がある。イケメン変態男の事なんて、すっかり忘れる位だ。約四十分、電車に揺られて、やたら人が多い駅に着いた。会社は、駅から徒歩十分。ゆっくり歩いて十分だから近い。

『おはようございます。』

『田中さぁん。困るよぉ。誰呼んでるのよォ。』

『いや、誰も呼んでないです。むしろ、あなたも呼んでないですけど?』

『お客様来てるよォ。なんで、どこで知り合ったのぉ。怖いよぉ。』

『お客…呼んでないです。言いがかりやめてください。噛みつきますよ。』

『噛みつかないでよォ。普通に応対してよ。とにかく、行って。社長室。』

『この会社、社長居たんですね。初めて知りました。』

『面接で会ってるでしょぉ。早く行って!』

『はぁい』

 客って誰?私は、仕事でヘマをした事なんて一度もない。だから、社長に呼ばれる事もない。てか、社長居たんだぁ。社長室なんてあったのね。

『社長、失礼します。』

『どうぞ。』

 そこに居たのは、昨日のイケメン変態男だった。いや、なんでここに?怖いわ!

『あんた、何でここに居るの?何で、勤務先知ってるの?え?キモっ!』

『君は、商社の御曹司に何を言ってるだ?』

『へ?商社の御曹司…詐欺ですか?』

『彼女が僕の恋人です。結婚前提なので、あまり無理をさせないで下さい。』

『へ?』

『勿論です。身体に無理なく勤めて貰います。』

『よろしく。』

 いや、このイケメン変態男は何を言ってる?結婚?はい?出会って三分、インスタントラーメンバリに女にさせられて、次の日には結婚報告?アホなの?

『では、失礼します。行くぞ。』

 またも、イケメン変態男は、私の腕を全力で掴み、グイグイ引っ張って行く。いや、力加減な!できねぇのか!

『おい、変態男!腕が痛てぇよ。力加減出来ねぇのか。』

『力加減必要なのか?』

 心の底から思った。アホなの?

『結婚前提とか、今初めて聞いたんだけど?』

『女になるって事は、そういう事だろ。付き合って何日とか、何ヶ月とか、何年とか。期間なんて知らん。そんなのは面倒だから省く。悪いか。』

『省きすぎだろがぁ!何様だよ!結婚なんて聞いてねぇよ!他人の為に時間割くのとか無理なんだよ。結婚不適合者なんだよ、私は!分かったら立ち去れ!』

『お前がその気なら、こっちもそれなりの考えがある。むしろ、時間なんて割かなくていい。形だけの結婚だ。書類上の夫婦だ。ひとつ屋根の下に住んでも、お前はお前で過ごせばいい。それだけだ。お前になんぞ、何も求めていない、最初から。』

 ここまで言われると、さすがの私でも腹が立つんですけど…。

『求めてないなら、結婚も求めるな!面倒だろうが。勝手に過ごすって、どんな夫婦だよ!』

『お互い自由に過ごす、書類上の夫婦だ。金の心配はするな。無駄にあるからな。』

『他の女にしろよ。ナンボでも、ホイホイ尻尾振って着いてくるの居るだろ…。』

『ダメなんだ。相手に、恋愛感情持たれるのは恐怖でしかない。お前なら、恋愛感情なんて存在しないだろ。』

『いや、失礼じゃない?まぁ、存在してないけど…。面倒だし。』

『普通の人間なら、あんな風なプロフィールは書かない。お前は、恋愛とか面倒なんだろ。だから、俺と結婚しろ。』

『どんな結び付きよ。恋愛感情無かったら、結婚なんてしないでしょ。』

『お前は、恋愛感情を求めるのか?』

『いや、話聞け!一般論だ。私と一緒にするな。迷惑だ。恋愛感情なんて求めてない。一緒に時間過ごすとか、あーだこーだするのは面倒だし、嫌いだ。』

『なら、何故俺と結婚しない!』

『何で、そこまで私と結婚したい?』

『お前を女として見てないからだ。だから、いいんだ。結婚しろ。』

ん?女として見てないとは…。

『生物学的には女だわ、ボケェ。他にも居るだろ!』

『俺は、性自認が女なんだ。お前より、中身はそれらしい。世間には、ばれては困るんだ。だからだ。分かったか。でも、立場上そう言う人間が必要なんだ。でも、恋愛感情挟まれると嫌なんだ。だから、お前で良いんだ。』

『へ?』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る