第3話 珍獣降臨。

【メールありがとう。私も、お前に会ってやってもいいと思ってる。そっちこそ会いに来い。】

 はい、上から目線メール。これで、返事が来たら本物の変態だわ。数分後、直ぐに返事が来た。飢えてるのか?

【どこに行けばいい?俺の知ってる所にしろ。】

 いや、お前の知ってる所なんて知らねぇわ。あー、どうしよう。人の多い所なら、目立たずに観察できそうだな…。モールにしとくか。あそこのカフェのソイラテ飲みたいし。

【松尾のショッピングモールの中のカフェ。一箇所しかないからすぐに分かるだろう。】

【承知した。何時にだ。】

 いや、その前に日にちじゃね?

【その前に何日に?では?】

【今日だ。お前、暇だろう。何時だ。】

 暇だけど、人に言われると腹立つなぁ…。

【夕方四時だ。遅れたら、すぐに帰る。】

【承知した。待ってろ。直ぐに行く。】

 直ぐって…今、十一時ですけど?まさか、今から行かないだろ…行った所で私は行かない。時間が近くなったら、近くでソイラテ飲んで見てよう。

『ニンニク臭いけど…いいかぁ。近くに行かないし、マスクすればいいし。』


 トレーナーに、スキニーにスニーカー。そして、黒縁メガネ。完璧だ。バレるはずがない。プロフの写真を見ていても、これならバレる気がしない。いざ、モールへ。待ってろよ、ソイラテと変態男!

 モールに着いて、カフェに向かう。少々ルンルンしている。あんな変態久しぶりだ。変態は、私の好物だ。カフェの前にちょっとした人集りが出来ていた。

『珍しく混んでるのね…。』

 近付くと、女子がキャーキャー言ってる。芸能人でも居るん?この田舎のモールに?まぁさかぁ、冗談は顔だけにしろっつーの。人集りに紛れて、女子の視線の先を見る。

『おっふ…』

 私には珍しく声が盛れた。そこには、腕を組み、足を組み、スーツを来た一人の男が座っていた。顔は、私から感嘆の声が盛れる程のイケメンだ。韓国アイドルに居そうな綺麗な男だった。通りで、女子が固まって騒いでる訳だ。しかし、女子…臭い。邪魔だ。私は、ソイラテを買おうと、カウンターに向かった。

『おい、お前。挨拶はなしか。』

 ワイスピか?てか、誰に言ってるんだ?声がでけぇな。私は、振り向く事もなくソイラテをオーダーした。足音が近付く。次の人が来たようだ。

『おい、お前。ふざけてるのか?』

 私の腕を掴み、無理矢理振り向かされた。

『…どなたかと間違っているのでは?』

『これは、お前だろ。同じ顔だ。』

 マッチングアプリの顔写真を見せられた。待て。いや、本当に待て。これ、知ってるって事は…ん?こいつがあの変態男なの?このイケメンが?プロフの写真のプーさんが?

『あー、確かに似てるけど…。』

『来い。時間には遅れてないぞ』

 ソイラテを受け取ってから、グイグイ腕を引かれた。周りの女子からの視線がやたら痛い。私が美人だからって妬むのはやめろ。無駄だ。…いや、そこじゃない。こいつがあの変態男なのか?

『痛いんだけど、離せ!』

『あ、すまん。でも、知らん振りをしてるお前が悪いんだ。』

『はいはい。』

『で、俺の女になるのか?ここに来たなら、その覚悟は出来てるんだろ?』

 んーと、え?出会って、数分ですけど?

『決めろ。今すぐだ。』

『いや、出会って数分ですけど?そんなで付き合う人居る?女と付き合った事ないの?』

 こんなイケメンなら、そんな事は無いだろう。むしろ、よりどりみどりって所か。

『ない。悪いか』

『やっばりねぇ、よりどりみどり…え?ないの?日本語分かる?』

『俺は日本人だ。分かる。正直に言ってる。ない。お前はあるのか?あるなら、俺の女になれ。苦労はしないぞ。』

 いや、現時点で苦労しか見えないんですけど?ない…。

『童貞なの?』

『そうだ。悪いか。』

『いや、悪くは無いけど…何で?』

『何でとは、何だ?』

 いや、質問を質問で返すなよ…。一番面倒だわ。

『そんだけの見た目なら、やりたい放題でしょ。右も左も上も下も女でしょ。何でないの?』

『知らん。ないんだ。で、どうするんだ。女になるのか?ならないのか?早く決めろ。すぐ決めろ。』

『いや…何か、え??』

『良いんだな。二言はないな。何も言わせないぞ。お前は、今日から俺の女だ。覚悟しとけ。』

二言はないも何も、一言も発して無いんですけど。

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