第2話 やるだけの事はやってみる

 そんな事を思いながら、スマホをいじっていた。マッチングアプリなる物…いや、存在は知ってたよ。でも、危ないって言うしなぁ。会いましょうとかなったら…スウェットで行く訳にいかないんだろ?スカートとか無理。お股がスースーして風邪ひくわ。あー、でもなぁ、送り付けられて、勝手にセッティングされるのも無理。

 過去に一度だけ、送り付けた挙句に勝手にセッティングされた過去がある。その時から、孫の手を良く送るようになった気がする。三十枚に一回位の割合でやりそうなんだよな、うちのかぁ様。親も、取り敢えずって言ってるし、形だけでもやっとく?やってみちゃう?もぉ、プロフとか好き放題書いてやるよ。それで会いたい、とか言ったら単なる物好きだわ。そんな事を思いながら、マッチングアプリなる物に登録してみた。私、見た目は割と良い方でして、写真写りは自分で言うのも何だが美人なんだよ。スタイルも何気にいいんだよ。しかし、寄ってくるな、声掛けるなオーラをバンバン出してるせいか誰も寄ってこない。むしろ、それが気持ちいいのだ。あ、因みに私、御歳三十二歳になります。

『どんな人を望むか?あー、構わなくていい人。むしろ、放置してくれる人。感情の起伏が、ほぼ無い人。相手に何も望まないから、こっちにも望まない人。』

『年収…私より多い人。』

 こんな感じで入力して、本人の年齢確認できる書類を登録して…あぁ、面倒だわ。でも、まぁ終わりと。これで来たら、本当に物好きだわ。

 

期待なんて、微塵もしてなかった。私は、期待と言う言葉すら必要なかった。なのに、この二週間後、恐ろしい出来事が起きた。その日は、とても天気が良く、気温も丁度よく、風も気持ちがいい完璧な日だった。こんな、完璧な休日を迎えられた事に神様に感謝すらした。掃除をして、洗濯をした。ダーク系の色味の暗い洗濯物が風に揺れていた。ベランダ側の窓を開け放ち、足をベランダに出して座り、チンしたペペロンチーノを食べていた。朝食なのに、このニンニクの香ばしい匂い。たまらん。ズルズルとすすっていると、スマホがピロンってした。通知だ。その通知で地獄へと落とされた。マッチングアプリからのお知らせ…マッチングしたと?誰が?あ、私か…いや、私?待て!あのプロフだぞ。何で、そんな奇跡起こる?てか、こんな奇跡いらんわ。え?なに?珍獣でも居たの?あのアプリに?アホなの?お相手からメール…

『ほぉ。』

 メールを開く。自分の視力を疑った。

【俺は、お前が気に入った。変わり者は嫌いではない。俺の女にしてやろう。気にするな。俺に会いに来い。】

えっと…どちら様?いや、最初からお前呼ばわり?しかも、俺様上から目線。してやろう?いや、望んでませんけど?気にするな?何を気にする?むしろ、こいつの存在が色んな意味で気になるわ。会いに来い…御遠慮させて頂きます、はい。

『プロフ見てやるか…どんなやつだよ…。』

ん?写真、プーさんなんだけど、夢の国の人なの?…いや、奥に小さく人間いる。いや、これ写真使う?運営しっかりしようぜ。で、細かいプロフは…

身長…183cm (まぁ、デカイね)

体重…63kg (男の体重なんて知らん)

足のサイズ…27.5cm (この情報要る?)

趣味…無い (なら、そんなの載せるな)

年収…不明 (いや、あるの?ないの?)

職業…不明 (厨二病か?)

好きなタイプ…雑食 (食べる気満々か)

長所…気長 (俺様なのに?)

短所…気長 (長所で短所って事か?)

相手に求める事…求めない (賛成します)

ひとこと…こっちから決めるから何も言うな (なら、登録するなよ)

 変わり者…過ぎる。私には負けるけど。とても、マッチングしたいと思ってない感がダダ漏れ。こんな変わり者に選ばれるって、私どんだけぇ。でも、面白い…観察するには飽きないだろう。一緒に居たくはないけど、一度拝見したい。そんな興味すら、珍しく湧いたのだ。会いたくないけど、見てみたい。もはや、私の餌食。興味をそそる。たまらない

『会ってみよう。観察したい。この変態!』

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