第4話 男子の青春
「ねぇー、カラオケにしようよ〜私、今日はめちゃくちゃ歌いたい気分なんだけど」
「何言ってんだよ、今日は本田の学年3位おめでとう会だろ」
雨も止んだ放課後、俺たち4人は最寄駅にある駅直結型ショッピングモールで遊びに出かけていた。
「皆んな、ありがとうね。私のために予定合わせてくれて…」
「別にいいよ、だって俺たち3人の勉強を見ながら学年順位3位だろ?俺たちから祝わせてほしいよ」
本田彼方は冷静に見れば結構、おとなしめな性格だ。俺たちと馬鹿みたいに飯を食べたりカラオケに行ったりする雰囲気はない。
けれど、話してみると意外と狂ってるし(本人には言ったことはないが…)
ちゃんと今時の女子高生という感じはある。カラオケもプリクラも行くし、ファストフードでゲラゲラ笑う感じではないが食べて恋愛の話だってする(らしい)
「ところでさ、最初はどこいくの?ぶらぶら歩いていても目的地ないから絶対飽きると思うんだけど」
「あ、わたし雑貨みたい!夏に向けてのコスメ見たいし!」
「あ、私も〜!優香がこの前言ってたリップ置いてあるかな?」
こうして女子陣の自分達が見たいものを優先して進んでいった。こういう時に自分から好きなものを言える人は強い。互いにどこでもいい、という意見が先行しているとこの大きなショッピングモールという森の中では迷子になってしまうからだ。
「ところで俺たちはどうする?一緒に化粧品でも見てる?」
「いや俺らが見たところで分からないだろ、適当に他のところ見て頃合いみて合流すればいいと思う」
そう言って女子陣に声を掛け別行動を取る事に。正直、分からないもので盛り上がっていたとしてもこっちとしては楽しくない。
男性陣である俺たちは、スマホケースやイヤフォンなどのコーナーを見て回っていた
「なぁー、俺さ。最近思ったことがあるんだけど言っていい?」
「別にいいけど、何かあったの?」
「いや、別にそういう訳じゃないんだけどさ。俺らがモテない理由ってこういう事じゃないのかなぁ」
沢田が何気なく話した事に雷が走ったのは初めてだった。今の行動、これこそがモテない理由の一つではないか、ということ。
「俺らさ、ぶっちゃけ顔はいいやん?たまに、なんでモテないのかなぁ〜って思うんだよ」
「でも、顔じゃなくて俺らの行動がモテないを引き起こしているんじゃないかって思うんだよな」
耳に痛い話だ。普段、頭が動かない奴なのにどうしてこうもキレる時があるのだろう。
たしかにモテる男は、今回のような面倒くさい女子とのコスメの会話にも話を合わせたりするだろう。
「そうなんだ」「これが似合うんじゃね?」なんてクラスのモテる人は合わせているだろう。
それが俺たちは、そっちのけで自分たちが興味のある方へ分かれている。
俺たちだってモテたい気持ちはある、そういった動画やネットニュースを確認するぐらいなのだから。
しかし、自然を今とっている行動が非モテそのもので互いにため息しか出てこない。
「なぁ、アイツらからカッコいい男子の立ち振る舞いとか聞いてみた方がいいんじゃね?」
「それ言うなよ…余計にカッコ悪く感じるだろ…」
活気ある女子の買い物とは別に男子勢は、ただ時間が流れるのを待っているだけだった。
⭐︎⭐︎⭐︎
「いや〜、気づいたら3000円分買っちゃったよ!新作効果半端ないわ…」
「優香ってば、何でもかんでもほしいほしいって、凄かったんだよ?」
買い物が終わり洋服やゲームセンターである程度遊んだ後、俺達4人は近くにあるファミレスに場所を移して夕食を取ることにした。
注文用紙に食べたいメニューを書き店員さんが確認した後、各々が飲み物を揃えると女子陣2人は先ほど購入した物の感想を俺達に伝えてきた。
「ほんとはもっと買いたかったんだよね〜けれど近くに財布がいなくてさ」
「綾瀬はそろそろ自覚した方がいい、お前は自分の買い物は自分の金で支払いなさい」
「裕介ってばその為にバイトしているんじゃないの?」
コイツは成長したらろくな大人にならないだろう。いや、俺が綾瀬に甘いのかよく分からない。けれど食事などは自分なりに価値感を分かっていたりするがコスメなどの必要性を感じないものには、あまり奢りたくない。
(まぁ、奢らないのが1番なんだけどね…)
「それにしても、結構注文したな。もしかして、本田が食べたいやつ?」
テーブルの上には、各々が頼んだであろうパスタにドリア、ハンバーグが並んでいるが驚きなのがそれ以外の物だった。
(サラダ、ポテトにチェリソー。唐揚げもピザもあるし…こんなに食えるか!?)
「私じゃないよ!頼んだのは沢田だよ!」
少食派である本田が勢いよく訂正する。隣を見ると目を輝かせてハンバーグセットのライスを掻き込んで食べている燃費の悪いが美味しそうに他の料理にも手を出していた。
「これ、俺のだから。食べるんだったら頼んでね」
「…沢田ってそういうところが女子にモテないよね〜」
「確かに、、、顔はいいのに…」
女子陣からの冷たい目線もなんのその本人は気づかずにご飯を食べる。
(俺はこういうことはしないでおこう….)
友人に向けられる冷たい目線に同情しつつ、俺は熱熱のドリアを口に入れていった
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