第3話 缶コーヒーと湿気
「なぁ雨の日って普段何してる?」
天パ具合がいつも通りにも戻ってきた彼と自販機で飲み物を買っている最中、沢田貴志は話しかけてきた。
「お前さ〜もう2年間の仲なのに、なんでそんな初めましてのテーマなんだよ」
「え、別にいいじゃん。こう言った話題も今日みたいな日ぐらいしか話せないでしょ」
あまり関係ない気がするが、教室に戻るまでの会話なのだ。少しはそのノリに付き合ってもいいのかもしれない
「俺はバイトがなかったらゲームか漫画読んでいるぐらいだなぁ」
「ありきたりだな〜、もっとさ面白そうな事とかやってないのかよ」
何故だろう、無性に腹が立つ。コイツが何か有意義に過ごしているのならともかく向こうから聞いてきて、苦笑している現実に何故か納得いかなかった。
「笑うんじゃねぇよ。だったら、沢田は何してんの?普段バスケか筋トレしかしない脳筋がやる事って?」
「脳筋じゃねーよ!お、俺はそうだなぁ……」
買った缶コーヒーのプルタブを開けて、一口飲むと少し考え込む。その表情は普段から見ているのでよくわかるが、大抵聞く価値のない話が多い。本人は真面目に作っている表情だがその実、中身は特にないのだ。
「特にないなぁ…俺もゲームしてばっかりかも」
「やっぱりな、てか大体のやつは同じかんじだろ」
外にも行けないとなると同性同士、やることは大体決まっている。女子ならこんな雨が降っていても外に出かけるのだろうか。
互いに出不精な人のため話はそれ以上、進展しなかった
「もし綾瀬とか本田とかなら話は違うのかもなぁ」
「本田はともかく、綾瀬は雨も関係なく遊びに行ってそうだわ」
本田彼方は同じクラスではないが、よく遊びに行く仲で俺らの第二の先生と言える女子。
学年順位は毎回一桁であり勉強に関しては尊敬の眼差しを向けていた。だからこそ、怠惰な俺たちと未だに付き合っているのが不思議でしょうがなかったが今ではある種、緩和剤のような役割を担っている気がしていつの間にか落ち着いていた。
「今度4人で会うしその時、聞いてみるか。本田は部活も忙しいらしいし」
「おい裕介、俺だってバスケ部の練習が忙しいんだけど」
「お前はテストの赤点のおかげで外周するしかないだろ」
今度はどこに遊びにいこうか。また、綾瀬からお金をたかられるだろうが本田はきっとそれを止めにはいってくる気がする。志田は相変わらず馬鹿みたいに飯でも食べるのだろうか。
「まぁ今度、グループで話し合ってみるか」
「そだね〜」
互いに買った微糖の缶コーヒーをゴミ箱に捨て教室へと戻っていった。
〈おまけ〉
「あ、やっと帰ってきた!ねぇ、2人ともあたしの分は買った?」
「は?買うわけないじゃん…お前100円ぐらいは払えよ。飯奢るわけじゃないんだし」
「てかさ、バイトとかしないの?」
綾瀬、その表情は一体どうした。ものすごく苦い表情だが女子としてどうかと思ってしまう。
「バイトしてるよ….だけどあんまり使いたくない」
意味ありげな表情をしていたがその時はいまだによくわかっていなかった。
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