第29話 Behavior of understanding person
「神界」に住まう、有数の力ある者達は、その力の波動を感じ取っていた。然しながら、その力の持ち主に興味を持たず
力を解放し、
第三者がその光景を見る事が出来たなら「そんな表現しか出来無い」としか言えなかっただろう。
それ程までに不可思議なモノトーンの光と虹色の光の共演だった。
しゅたっ
「ここが最上階であってるわよね?」
「ってかもう既に地球を通り超えて完全な宇宙空間ね」
塔の壁面を疾走り抜けた少女は、最上階の壁面を通り過ぎ更にその上から壁を飛び越える形で最上階へと侵入したのだった。
少女の眼下には深い蒼と透き通る白、そして広大な緑のコントラストが広がっていた。
少女の足元には白いタイル張りの床が広がっている。そしてその空間に天井は無かった。
宙を見上げるとそこには無数のきらびやかで色とりどりの光の競演が確認出来た。
「まるで星空の天井ね?」
「いえ違うか…、天井が星空なのね。ロマンチックな景色は1人身には辛いけど、例え恋人がいてもここに連れて来れる自信なんでないわね。はぁ」
少女が降り立った場所から見渡せる範囲に誰かがいる気配は無い。だから、少女は最上階を歩いて曾祖父を探す事にしたのだった。
ちなみに、バイザーの反応も一切無かった。
歩いてみると最上階は意外と広い空間だった。
まぁ、四方を囲まれているワケではないので空間と言う表現が適切でないコトは重々承知の上だが、星空を天井とするならばその表現でもいいだろう。だから少女が途方もなく歩いていると「加護」はなにやら説明をしてくれた。
“大地の側にある下層と最上階で面積が違うのは、空間が歪んでいて
「うん、ちょっと何言ってるかワカラナイ。まぁ、いいや、兎に角ここのどっかしらにアタシの曽祖父がいるのだけは間違いないんでしょ?」
“…………”
「
『よく来たな、
「ッ!?頭に直接声が響いて来る……」
「どこッ!どこにいるの?」
その声は突然少女の脳裏に
少女は脳裏に響く異質な「声」に対して会話する手段を持っていない。そんな脳裏に直接響く「声」と会話する
だから自身の声を響かせていくしか方法はない。しかし大気のない宇宙空間でそんな事が出来るかは余談なのでおいておく。
『やれやれ、
「っ!?」
「これならばマテリアル体が主体のそなたでも視認出来るか?」
「っ!??!アストラル体が一瞬で受肉したとでも言うの?」
そこにいたのは、白く長い髪を1つに束ね、顔には白く長い髭を蓄えた1人の男性だった。その肌は浅黒く、その瞳は深い
人間の齢で言えば「初老」という条件が当てはまりそうだが、少女はタケミカヅチが話していた事を思い出していた。
「
「貴方がアタシの「
「ヒト種が
そんなコトを言われても少女の中から先程までの畏怖は消えてはいない。しかし姿形をわざわざ繕ってもらった以上、畏怖に拠る震えは失礼だろうと考え、少女は
「
「だからあっておるわい。にかっ」 / ぱちっ
ウラノスは少女に対して言の葉を紡ぐと、歯を見せて笑い、片目を
魅せられた少女はそのウラノスの一連の動作に拠って、一気に「畏怖」が消えていった。
更には、親近感すら覚えるようになったのだった。
「ほう!ヘラから言われてここまでやって来たのか?」
「ヒト種の身でよくぞここまで来られたモノじゃ。それは純粋に感心してしまうな。がぁっはっはっ」
ウラノスは少女を連れて最上階にあるポータルから、自分の
周りは見渡す限りの草原であり、そこにテーブルが1卓、椅子が2脚だけ置いてある。吹き抜けていく風は心地よく、少女の髪は風を浴びて揺れていた。
ただしそこは、ヒト種が生存出来る環境かは分からないから、念の為
でもまぁ、スケール感が意味不明なのは、気にしてはならない。
「母様が囚われている「星屑の塔」に入る為に、
「ヘラのヤツめ。厄介事を押し付けおって」
「厄介事?」
「おぉ、そうじゃ。厄介事じゃよ。
「厄介じゃろ?」
「承認は本人を連れていかないとダメなのかしら?」
「うぅむ、それはなんとも言えんのぅ」
ウラノスは困った様子で言の葉を紡ぎ、その顔は本当に悩んでいる様子だった。
しかし
「それじゃあ、これを、そなたに渡しておくとしようか?」
「これは?石にしか見えないけど…?」
少女はその「石」を受け取ると親指と人差し指の指先で「ちょんっ」と挟んで持ちながら、空に向けて
「それは宇宙の
「宇宙が
ウラノスは自信たっぷりで切り出していたが、最後の方は
だから一応、上げておく事にした。
「まぁ、駄目だったら駄目で、またここに来るといい。どうせ
「うんッ!必ず来るわッ!」
ウラノスは少女に対して笑顔とウインクを贈った。その笑顔は
ウラノスは少しだけ寂しそうな顔をしていた。だから少女は「この場所は覚えたから、アタシの転移が使えれば直ぐにでも来れるわ」と返していた。
ウラノスは少女の言の葉に気を良くしたらしく、「それではコレを差し上げよう」と言いながらガントレットを少女に渡したのだった。
「これは?アテナさんの装備と同じ鉱石で出来てるの?」
「それは
「えっ!?これが
「おう、その通りじゃ!まぁ、魔術だけに効果があるワケではないぞ?「虚理」の現象そのものを打ち消すからのぅ。「
「これから、バカ息子と
「その代わりと言っちゃなんじゃが……」
ウラノスは優しく
「また、元気な顔を見せに来ておくれ……」
少女はアテナの神殿の部屋に
アテナは直ぐさま武装を整えると、魔術反応があった部屋に声を上げながら勇んで乗り込んでいった。
「何者かッ!?」
「えっ?!アテナさん、どうしたの?」 / 「んっ?!何も…のではないな。なんだその格好は?」
アテナは三叉の槍を少女に向けていた。そしてその先にいるのは
2人の声は同時にぶつかり合い、2人は目を合わせお互いがお互いにオロオロとしており、挙動不審だった。
少女は先ず、変身を解いていく。アテナは先ず、臨戦態勢を解いていった。
少女はアテナを驚かせてしまった事を謝り、アテナは槍を向けてしまった事を詫びていた。
その後で少女は自身の「力」の事をアテナに話し、少女の「力」の事を理解したのだった。その上で、自分が何者なのか、何故こんな力を持っているのかをアテナに対して話したのだ。
アテナは
「ところでちゃんと帰って来れたという事は、ウラノス様から承認を頂けたのだな?」
「た、たぶ……ん?」
「多分?」
アテナの顔には「?」が浮かんでいた。まぁ、それは煮え切らない表現だったから仕方のないコトだろう。
だから少女は、ウラノスに言われた事をアテナにありのまま伝えたのだった。
「あぁ、なるほどそう言う事かッ!確かに、「承認を得ろ」と言われても当のウラノス様にとっては寝耳に水な話だろう」
「無理もないコトだ。それにウラノス様から「承認する」と言われたところで意味はないからな」
アテナのその表情には「やれやれ」と書いてあったかもしれない。まぁ実際、少女はアテナが溜め息の1つでも吐きたい様子なのは感覚的に分かっていた。
「そして、受け取ったのが、「
「そうなの?良かったぁ。ほっ」
「今日はもう遅いから、この部屋で今まで通り休むと良い。次の場所に行くなら明日以降だな」
「うん、そうするわ、ありがとう」
「それではウチはそろそろ失礼する。再度結界は張っておくから安心して眠るといい。だが、くれぐれも……」
「自分から扉は開けないわ!」
「そうだ!それでいい!それではな」
「おやすみなさい、アテナさん」
アテナは笑顔で部屋を出ていった。アテナが部屋を出て行った後で少女はベッドに入ろうか悩んでいた。
あまり眠くなかったからだ。そうこうしている内にアテナの使いの者が夕食を運んで来てくれた。少女は眠くなかった事もあって夕食を食べる事にした。夕食はパンと牛乳の他に、温かいスープも加わっていた。味は薄味だったが、身体がほっこり温まり眠気が呼び起こされた様子だった。
少女はベッドに入ると、今日の出来事を思い返しながら
「あっ、そう言えば、お風呂ってあるのかなぁ?」
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