第十八話
「うう……寒っ。」
こんなに一月が寒いなんて……なんかいつもより寒いような。
「楓、おはよ〜。」
そう言って雪璃が隣を歩く。
「うん。」
「「……」」
「やめよ!?お互い寒さから口数が少なくなるのはやめよ!?」
「うぃー。」
「せめて人間として言葉を使おうよ!!」
「歯を食いしばってないと寒さで●ぬ。」
「●なないよ!!●なないから!人間はそんなにヤワじゃない!」
そう言われても寒いものは寒い。むしろ俺的には雪璃がなぜそこまで元気なのか知りたいくらいには寒いのだ。
「というかまともな会話がないまま教室の前だよ!?」
「だって寒いし。」
「もうそれしか言わないじゃん……」
雪璃は力なく言っては溜息をつき自分のコートのポケットを漁り、
「じゃあはい、これあげる。」
と言いながら俺の手に何か持たせてきた。
「……ん?」
俺がふと手に目を向けるとホッカイロが乗っていた。
「これ……本当にもらっても」
そう俺が言いかけた時には既に雪璃は教室に入りクラスメイトに囲まれ談笑していた。
「いつの間に……」
とチャイムが鳴り、ホッカイロをポケットに突っ込んだ俺は慌てて教室へと入った。
―――――――――――――――――――――――――――
今日は午後の授業はないのでそのまま帰る。
「帰るか……」
と呟いて教室を見渡すともう雪璃は居なかった。
珍しい事もあるものだ。まぁ都合はいいか……久しぶりに一人で帰れるし何より目立たなくていい。雪璃と居るとどうしてもまわりの目を引くから。
そうして俺は校門から出て学校を後にした。
ただ一人で寄り道せずに帰るだけではあったが、ここ最近は雪璃や翠と帰っていた(半ば強制)こともあり人通りが多い道でさえ静かに感じた。
「こんなに家まで遠かったっけ……」
いつもの騒がしさに慣れすぎてて一人で帰る時、家までの道のりがこんなにも長く感じるとは。
……ヤバイぞ。アイツ等のペースに巻き込まれつつある。
そんな事を考えていたらだんだんと手が冷えてきたのでコートのポケットに手を突っ込む。するとほんのりとあたたかい物が感じられた。ふと疑問に思い中からそ・れ・を取り出した。
「あっ。」
ホッカイロだ。今朝、雪璃が渡してくれたやつ。
「あったけぇ……」
……明日ちゃんと雪璃に礼を言っておこう。
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