第十六話

「あけましておめでとうございま〜す!」


「流石にな?オレも止めようとはしたんだけど……」


……どうしてこうなった。 


 


 






 俺はクリスマスに読めていなかった漫画の続きを見ようと手に取った。その時




ピンポーン




……


「嫌な予感が……」


「は〜い」


と母さんの声。


「ちょっ待て母さん!!」


俺がそう止めても本人には聞こえてないようで、母さんが玄関のドアを開けた。








「あけましておめでとうございま〜す!」


そして今に至る。


「おう、あけましておめでとう……じゃない!」


「??」


「なんでまた来たんだ。」


「初詣行こう!!」


会話になってない。そんな会話すら成り立っていない会話を繰り広げていると、








「いやオレもさ?クリスマスの時も突然押しかけたし今回も押しかけたら迷惑かなと思って止めようとしたんだけど行くって聞かなくて……」


翠がそういって気まずそうに目を逸らす。その様子からなんとなく翠の苦労が見て取れた。まともな奴で助かった……いや雪璃がおかしいだけか。




「ということで行きましょう!!」


「何がということでだ!そもそも事前にちゃんと俺に許可を取ってだな……」


もちろん許可を出すつもりはないが。




「じゃあかわりに母さんが許しちゃう。」


「母さん!?」






いつの間に背後に居たんだ……?


「ちょっと待ておかしいだろ!」


「だってぇ楓が友達と遊んでる所なんて滅多に見ないんだもの〜それに……」


「それに?」


「顔がいい!!」


「は?」


話に脈絡がない。






「だってだって!二人共こんなに可愛いのよ!?いやっ本当キラキラしてる!!」


「ありがとうございます!」


そういって何故か雪璃が元気に礼をする。いや、本当になんで?


「……はは、あざーす。」


翠がなんとも言えないと言った様子で一応礼を言う。そら他所の家の母親からそう言われたらそうなるわ。






「母さんもう美しさのあまり気絶しそう。なんなのこの造……」


「あーあー!!二人共初詣行こうかー!!」


「えっ?えっ?」


「おー!」


翠が若干驚いた顔をしているが気にしない。しかし母さんがあそこまで暴走するとは……初めて見たな。それはそうとして本当に恥ずかしい。……そんなに顔がいいか?俺はふと二人に目を向ける。


「……」


 


「泣きそう。」


「えっ!?」


いやっ本当キラキラしてる。なんだこの造形美。雪璃は中性的なイケメンだし翠は黙っていればスタイルのいい美少女にしか見えない。




「くそ!キラキラしやがって!!」


「キラキラって何?」


「いや、雪璃えぐってやるな。楓が可哀想。」


その言葉が一番傷つくわアホ。




「ねぇあのツインテールの子めっちゃ可愛くない?」


「ね!でも私はあの銀髪の子が綺麗だと思うなぁ」


「なんか芸能人とか?」




ていうかさっきから凄く視線を感じる。多分二人を見てるんだろうけど。俺完全に浮いてるな……




「……」


「ちょっと楓なんで離れるの!?」


「これだから顔がいい奴は……」






神は二物も三物も与えやがった。泣きそう。




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