第十五話
「さて、ケーキも食べ終わったことだし!」
美味しかったです。
「ちょっとだけ楓の部屋が見てみたい!!」
そういって柊が目をキラキラと光らせる。別に見られて困るものはなかったと思うし。
「……ケーキに免じて許す。」
「じゃあオレはエロ本がねぇか見てやろ(笑)」
……なかったよな?
翠とそんな馬鹿馬鹿しい会話を繰り広げている隙に柊が棚の方をみて、
「この写真……」
と呟いた。柊が見ていたのは幼い時に撮ったあの子との唯一の写真だった。確か近所の人に撮ってもらったような気がする。
「この子がこの間言ってた、あの子?」
「まぁ、そうだな。」
「ねぇ。」
「ん?」
「楓はさもしも、もしもだけどこの子に会えるとしたら会いたいと思う?」
突然柊がそんな質問を投げかける。
「会えるなら会いたいかな。あの子が今何をしているのかとか色んな事を話して改めて仲良くなりたい。」
そう俺が答えると少しの間の沈黙の後柊が静かに「そっか。」とだけ答えてそれ以上はその事には触れて来なかった。
「あっ、そうそう雪璃。」
思い出した様に翠が柊を呼ぶ。
「んー?な〜に?」
「いやそういえば、今日誕生日なのにプレゼントあげてねぇなと思って。」
「え"」
なにそれ初耳なんですけど。ヤバイ何も用意してない。
「ほい。プレゼント」
そういって翠は綺麗にラッピングされた袋を手渡した。
「わぁ!ありがと〜ねぇこれ開けてみていい??」
「雪璃のだし好きにしろよ(笑)」
そういった瞬間柊が袋を開けた。躊躇いというものはないのな。
「お〜ペンケースだ!!丁度買い換えようと思ってたから嬉しいよ!!」
中身はペンケースだったようだ。それはシンプルな紺色で端の方に白銀の糸で刺繍されているというものだった。柊のイメージにとても合っている。
「オレ中々にセンスいいだろ?」
と翠が自慢気に言う。いいとは思うけどそれは自分で言うセリフではない。
「うんありがとう!大事にするねっ!」
本人はそんな事なんて気にしていなかったらしい。凄く喜びすぎて輝いてんな。
そして柊はくるりと俺の方に振り返ってこういった。
「それで?楓は何かくれるのかな?」
「え"」
ヤベッ忘れてた。というかさっきまで知らなかったんだから無理があるだろ。
「……なんてね!大体さっき知った見たいな顔してる人にプレゼントもらおうなんて思うわけないじゃん!」
「……性格悪っ」
「えっ酷い!これでも僕女の子達に天使って呼ばれてるんだから!」
「それ、いいの?」
「……正直恥ずかしいからやめて欲しい。」
自分で言ったくせに恥ずかしがるってどうなんだ。
「あっ、でも一つお願いしたいことはあるかな。」
「なぁそれ軽いやつ?」
「そのお願いというのが…………」
えっ、さらっと流された。
「僕の事を名字じゃなく……その雪璃って呼んで欲しいなーなんて思ってるんですけど……」
「急にどうしたんだお前。」
「だってさ!翠の事は翠って下の名前で呼んでるし、僕だって友達なのに名字呼びっていうのがなんかむず痒いし!!」
「まぁオレと楓はラブラブだから☆」
このツインテールの寝言は無視するとして、
「別に名前呼ぶくらいなら全然いいけど。」
そういうと柊がパァァと笑顔でこちらを見てくる。天使というのもあながち間違ってないかも。
「えっ本当に!?じゃあ楓早速呼んでみて!」
「せ……つり。」
「あれ〜?聞こえないなぁ?もっと大きく!」
「雪璃!!」
「はーい!!」
そう言って雪璃は元気良く手を上げた。
「ねぇ楓もう一回言って?録音するから。」
「通報するぞ。」
やっぱり悪魔の間違えかも。
面白かったらブックマーク・コメントそれから拡散お願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます