第十三話
十二月二十三日、今日は終業式である。
「おっはよ~!楓!!」
俺が一人で登校していると後ろから柊の声が聞こえてきた。こんなに寒いというのにテンション高いなオイ。
「おはよ。」
そう返すといつの間にか隣に来ていた柊が信じられないといった表情で固まっていた。
「どうした。」
声をかけると柊がハッと我に返る。
「いっ、今……おはよって……!」
それが何だと言うのだろうか。
「初めて楓が挨拶を返してくれた〜!!」
柊が目の前で喜んでいる。そんなに挨拶を返してなかったっけ?というかコイツ俺のことを何だと思ってたんだよ。
「友達として認められたのかな??」
とか呟いてるし。こんなことで喜ぶとか単純だなぁ。
「はよ〜って何この状況。」
「俺にも分からない。」
学校に着き、そして柊はいつものように女子に囲まれ……ちょっと待て。自分で言ってて悲しくなるんだが。羨ましいなちくしょう。そんな馬鹿馬鹿しい事を考えながら自分の席に着いた。
その後は終業式にて校長のありがた〜い(笑)話を聞いて、俺はほぼ寝てて全くもって聞いてなかったけど。そして通知表が渡されるわけだが……
「うわ、すげぇ柊オール5じゃん!!」
教室内にそんな声が響き渡る。……アイツマジカヨ。
俺なんて5どころか3も少ないんですけど。そんな現実から目を背けるように窓の外を見ていた。
「……雪だ。」
まぁ、冬な訳だし当たり前なんだけど。しかし雪を見ると幼い時に出会ったあの子を思い出す。あの子と会って遊んでいたのは暑い夏だったが、どうも浮世離れした美しい容姿と少し触っただけでも壊れてしまいそうな儚さを雪と重ねてしまうのだ。
……今頃あの子は何をしてるんだろうな。今の俺を見たらきっとガッカリするだろう。そもそも俺のことなんて覚えてないか。
「……えで…………楓!!」
「へ?」
思わず変な声が出る。ああなんだ柊か。
「いつまでそこでボーっとしてるつもり?もう帰る時間だよ?」
そう言われあたりを見渡すと俺達以外教室には誰も居なかった。そして何故か柊の横には翠もいたけど。
「大丈夫?体調悪いとか?」
本気で柊に心配させてしまったらしい。
「いやそれは別に……」
「どうせクリぼっちになるのを恐れているだけだろ。」
よし翠テメェの口を塞いでやろうか。
「考え事してだけ。」
そう俺がこたえると心底ホッとした顔で
「なら、良かった。」
と柊が返してくる。親以外で俺を心配してくれる奴なんていなかったから新鮮だ。なんというかむず痒い。
「じゃあそろそろ帰ろうか。」
柊がとても良い笑顔でそう言ってきた。
「いや帰る約束はしてない。」
「ちょっと楓!!雰囲気ぶち壊さないで!!」
なんだよ。雰囲気なんて元々無かっただろ。
「いや雪璃。確かに約束はしてないわ。」
「えっ!?翠まで!?」
その後二人で柊をからかいすぎたからなのか無理矢理一緒に帰ることになってた。
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