第二話
「僕の友達になってくれませんか。」
命令だというのに。俺に拒否権が無くて頷くことしか出来ないのを知っている癖に。
あえてお願いみたいに言ってくるあたり性格が悪い。
いや、多分コイツの場合は天然なのだと思う。
だったら尚更たちが悪い。ずるい。
「……どうせ命令なんだろ。」
俺はすかさずこう返す。ただ友達になることを否定する訳でも認めた訳でもなく。
「うん。命令だから……ね。」
そして、柊は不敵な笑みでこちらを見つめてきた。
キーンコーンカーンコーン
そんなことをしているうちに授業の始まりを告げる、
チャイムがなる。コイツのせいで休み時間がすべて潰れた。あぁ貴重な休み時間が……
次は数学か。面倒くさいな。
「今日は昨日の続きからやります。」
静かな教室に数学教師の声が響く。俺はさっきまでの事が信じられなくて、授業内容が全く耳に入らなかった。授業は眠たくなるほど退屈だ。俺が元々授業に興味がないのも原因だか、それにしたって眠すぎる。
あまりにも退屈なので俺は頬杖をつき、窓の外を見ていた。
「……く……ん。」
でもなんで柊が俺なんかに……
「天宮くん!! 聞いているの? 」
いつの間にか先生に当てられていた。少々怒っている様子だ。
「すみません。考え事してて。」
咄嗟に俺はそう答える。
「全く。授業に集中してください。で、
この問いの答えは?」
何も授業を聞いていなかった俺には当然解けるはずがなかった。答えを考えているうちにも時間が過ぎてゆく。そして一つの結論に至った。
「すみません。よくわかりません……。」
「しっかりと聞いておきなさい。」
「はい。すみませんでした。」
クラスメイトの視線が怖いなぁ……睨まれている訳でもないけど取り敢えずなんか怖い。
「じゃあ……柊くん。代わりに解いてくれるかしら。」
そして今度は柊が当てられた。分かりましたとだけ言って柊は前に出て涼しい顔で黒板に答えを書き込む。
字は綺麗なんだな。
柊の事だから、多分……いや、絶対合っているのだろう。
「柊君素晴らしい! 全問正解です!」
そう先生に言われた柊は少し照れくさそうに笑った。
あんな風に笑うんだな。意外だった。
「そろそろ終わる時間ですね。今日はここまで。
しっかり復習するように!」
と先生が授業を切り上げた。
「起立!気を付け!礼!」
日直の声が教室に響く。
「ありがとうございました〜。」
休み時間になり、
「はぁ……やっと終わった……」
と、俺はもらした。それほど数学の授業が苦痛だ。そもそも苦手だし。
「天宮っ! 何してんの?」
柊が当然のように近くにいる。それはもうにこにこしながら。さっきの涼しくて爽やかな顔はどこにいった?
「別に何もしてないけど……。」
マジでなにもしてないというか、やる事がないだけど。
「その突然申し訳無いんだけど……」
柊が言いづらそうに切り出す。なにかあったのか?
すでに嫌な予感しかしないけど。
「……なに?」
「そのお互いに自己紹介しよ?」
呆れた。コイツ俺の事を知らないのに友達になろうとしてたのか。そう思いながらも俺は渋々自己紹介を始めた。
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