第一話

少し冷たい風が吹く休み時間の教室。


風がカーテンを揺らしていた。


俺、天宮 楓は一人自分の席でゆっくりと黄昏ていた。


それはとても心地よい時間だった。


「ねぇ! 天宮てば! 」


ただし、コイツがそばに居ることを除けば……だが。




そもそも、何故ここ数日俺に話しかけてくるのかが謎だ。アイツは、成績優秀、運動神経抜群、オマケに顔がいいしそのお陰か、女子にめちゃくちゃモテるとも、風のうわさで聞いたことあるし……




それに比べて俺は、別に虐めとかはないけれど、


もはや影が薄すぎて、クラスの空気となりつつある。


よく言われる、あのスクールカーストっていう奴の底辺に属している所謂ド陰キャだ。


……なんか自分が惨めになってきたな。




「ねぇ。」


「なに?」


そんな馬鹿馬鹿しい考えにとらわれていたら、話し掛けられてしまった。


「そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいと思うんだけど。」


「? はぁ……」


「僕の話聞いてた? 」


「いや、聞こえてなかった。」


「僕の友達になってって頼んだんだよ。」


はい? 今なんと?


「……なんて?」




今とんでもない事を聞いた気がする。別に他の人だったのなら、俺だってここまで驚く事はなかったのかもしれない。だけどもこの、柊雪璃  せつりという人間からこんな言葉を聞くとは思っていなかったのだ。


いつもコイツは、人に囲まれているイメージがあるから、友達なんていくらでもいるに決まっている。


どうして俺なんだろう。




「どうして俺なんだ?」


「どうしてってそんなのっ……」


「そんなの?」


「いや違うな、君が僕と対等な立場でいてくれる。そう思ったからだよ。」


なにか今違う事を言いかけて誤魔化されたような……


まぁいいけど。




「でも、俺のかわりなんて沢山いるはずだ。」


「いないな。僕は君と友達になりたいんだ。」




その俺を見つめる真っ直ぐな視線は、さっきの言葉がとても冗談を言っているようには、見えなかった。


コイツは本気だ。だからこそ怖い。でも別にだからといって俺はコイツと友達になる気はないんだよなぁ……




「……じゃあなにか勝負をしようか。」


「勝負だぁ?」


「そう勝負。なんでもいいよ。例えば今、天宮がハマっているスマホゲームでも良いし。」


そう言って、柊が俺のスマホを指差す。


俺が今一番ハマっているゲームはオンラインで戦うトランプのゲームのことだった。ところでなんで知っているんだコイツは。




「勝ったら、負けた方に命令ができるということで。」


と柊がルールを付け加えた。つまり俺が勝って命令をすれば、柊が離れてくれる。しかもこれは俺がいつもやっているゲームだ。コイツに負ける訳がない。


この勝負もらったな。




「……分かった。」


「じゃあ始めようか。」


ゲームスタートだ。






 数分後。


「やった! 僕の勝ちだね!! 」


何なんコイツ強すぎだろ。あの後ゲームの途中で話しかけてきたと思ったら言葉巧みに誘導され、結果この通り負けた。怖い。コミュ力お化け恐ろしい。




「じゃあ……命令は」


命令はもうわかっているというのに、あえて柊はもったいぶる。






「僕の友達になってくれませんか。」

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