第5話 天野さんと僕と問題
おはようございます。
まさか深夜に天野さんが荷物を纏めてくるとは思っておらず、同じ屋根の下で寝る覚悟が足らなかったようです。
まともに眠れませんでした。
「…おはよう。松下くん」
天野さんも起きてきたようだ。
天野さんは黄色いパジャマを着て、いかにも眠たそうな顔をしていた。
そして寝癖でアホ毛が出来ていた。
可愛い。
「おはよう、天野さん。かわいい寝癖が出来てますよ」
「!」
天野さんは、僕の言葉を聞くやいなや洗面所に顔を赤くして駆け込んでいった。
しばらくすると、いつもの天野さんになって戻ってきた。
「…さっき見たのは忘れなさい。…いいですね?」
「無理です。もう可愛いすぎて脳内に保存されてしまいました。」
「~っ! もう! 忘れなさい! 忘れなさ~い!」
そう言って天野さんにポカポカ殴られながら僕の朝の時間は過ぎて行くのだった。
そうして学校へと向かう時間が来た。
「天野さん。僕と天野が一緒にいるのってバレない方が良いんだよね?」
「当たり前じゃない。何をいまさら」
「…朝の登校をどうするつもりなんですか?」
「!」
「その感じは『忘れてた』ってやつですね…」
「…完全に失念してたわ」
新たな課題が僕と天野さんの前に立ちはだかった瞬間であった。
このまま2人で登校すると『一緒にいるのがバレて、天野にとって面倒なことになる』、かといってどちらかが遅れて出発すると遅刻してしまう。
2人で登校するということにもっと早く気付けていたなら、後者の方法を早い時間にすれば良いだけなので問題はなかった。
けれども今日ばっかりはどうしようもなかった。
「…仕方ない。僕が後から行くから先に学校に行ってて」
「これは私のミスよ… 私が後から行くわ…」
「天野さんが遅刻するのは僕が許せない。なので僕が後から行きます」
「なに言ってるのよ! 早く行きなさいってば」
「天野さんが遅刻するのは僕が許せない。なので僕が後から行きます」
「」
天野さんは黙って折れてくれた。そんなやりとりを朝からした僕は『深夜に引っ越し天野さん事件(仮)』の影響で睡眠不足だというのに、オロナ○ンCを飲んだかのように元気になるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕が学校に着いたときには丁度授業中だった。
「おはようございます。寝坊しました。」
「12分遅刻。欠課じゃないだけ良かったな」
そんな事を担当の数学教諭に言われながら席についた。
「おーし。じゃ次の問題、天野。これ難しいぞ」
問題は次の内容であった。
Q、空間に2点 A(1,1,0) B(-1,0,1) がある。線分ABをz軸のまわりに1回転してできる曲面と、平面 z=0 および z=1 で囲まれる立体の体積(=V とする)を求めよ。
正直言うと僕にはパッと当てられて解けるような問題ではなかったが、天野さんは黒板に向かって…
直線ABと平面 z=t の交点をPとおくと、空間上の2点A、Bを通る直線は
(ベクトルOP)=(1-α)(ベクトルOA)+α(ベクトルOB)
とできるので、実際の数値を代入する。
すると x=1-2α y=1-α z=α となる
z=t より P(1-2t,1-t)
よって z=t 平面上では Pは半径rで、点(1-2t,1-t)を通る円を奇跡となる
このとき、
r²=(1-2t)²+(1-t)²
=(5t²-6t+2)
なので
S(t)=r²π =(5t²-6t+2)π
となり、
V=∫¹₀(5t²-6t+2)π・dx
= π[5/3t³-3t²+2]¹₀
= 2/3π
とパパパっと解いた。
「うん。正解だ。流石は天野だ」
「ありがとうございます」
全国模試で偏差値70越えはやはり違うと改めて思いしらされた。
そして僕はまだ知らなかった。天野さんが『彼女から見た時の僕の勉強の出来なさ』のあまりに特訓を行うということを…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます