第2話 天野さんと僕と弁当
「とりあえず今日は神様に報告しないといけないからまた連絡するわ。これ私のLimeね。登録しといてね。」
天野さんはそう言って屋上から出ていった。
僕は天野さんの連絡先を貰えて有頂天になるのだった。
その夜、天野さんからLimeが届いた。
嬉しさで震える手で恐る恐る開くとそこには『神様に報告したところやはり認められたわ、神様も手を焼いていたみたいよ。詳しいことは明日教えるから、遅いし今日は寝なさい。』と書いてあった。
母さんかよ。
ていうか神様も手を焼く存在って僕で大丈夫なのか?
そう思いながらも、特にすることはなかったので目覚ましをかけて天野さんのいう通りに早めに寝た。
翌朝、いつもより目覚めが良い。
早く寝たおかげだろうか。
気分良く起きれた分、ルンルン気分で弁当を作り、天野さんが待つ学校へと向かった。
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クラスに入ると視線を感じた。
誰かと思うと天野さんだった。
視線こそ感じはしたが直ぐに天野さんは視線を外し、何事も無かったかのように机に向かい直した。
少し悲しい。
昼休みになると、弁当を持って屋上に来るように言われたので、言われる通りに弁当を持って屋上へ向かった。
すでにそこには天野さんがいた。
そして彼女は僕を手招きし、僕が彼女の側までいくと彼女は話し始めた。
「こんにちは、松下くん。まず異世界に向かう事が正式に決まったわ。それに関してなんだけど、正直言うと今から行くと体が崩壊するわ」
「えっ!? それじゃあどうするんですか!?」
「まぁ落ち着きなさいってば。それを回避するための用意があるから。」
体が崩壊すると聞いて不安と恐怖に潰されそうになっていたが、それを聞いて僕は安心した。
「その用意ってなんなんです?」
「それはズバリ、異世界の魔力に体を慣らすことね。世界には別々に異なる魔力が存在している。魔力を利用して生きている以上他の世界の魔力では生きていけないの。生きれるようになるには、ちょっとずつ異世界の魔力を取り込んで体に馴染ますか、私のような存在になることよ。」
「でもどうやって魔力を馴染ますんです?」
「それは異世界の魔力が籠ったものを食べるのが1番手っ取り早いわ。」
でもどうやって異世界の魔力が籠ったものわ食べるのかと僕が考えていると、彼女はそれを見透かしていたかのように答えた。
「なんのために弁当を持ってくるように頼んだのかわかる? それはこれに少しだけ私の魔力を込めるためよ。そうしたら異世界の魔力にも馴染みやすくなるし、初めて違う魔力を取り込むのには丁度いいの。ほら、弁当を出して」
言われるままに弁当を出すと、彼女は弁当に向かって手を伸ばして少しの間触れた。
その弁当を見るとなにやら天野さんの雰囲気が伝わってきた。
どういう訳かと驚いていると天野さんが教えてくれた。
「これが魔力を込めるってことよ。今、松下くんの弁当には私の魔力が込められているの。個人の魔力ってその人に馴染んだもので、それを少し弁当に込めたのだから擬似的に私の1部みたいなものになっているのよ。」
つまり、これを食べるということは天野さんを食べるということですか。
ダメです。
僕にはそんなことは出来ません。
そうして躊躇っていると、それを見かねたのか天野さんが僕の口に弁当を放りこんだ。
「ほら、昼休みは有限なの。早く食べてしまいなさい。」
そう言って天野さんは僕に彼女の魔力の籠った弁当を食べさせた。
今、僕は世界で1番の幸せ者です。
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そうして弁当を食べ終わると、彼女は僕をじっと見つめた。
そして、魔力が雀の涙ていどしか馴染んでないと言った。
どうやら僕の魂が異常に大きいことが原因のようです。
そうしてしばらく考え込み何かを決心したようだった。
「この調子だとあなたに魔力が馴染むのに時間が掛かりすぎる。なのでこれから松下くんの朝、昼、晩のご飯は私が用意しますのでそれを食べて下さい。良いですね?」
「えっ!? これから毎食天野さんの手料理!?」
「…そうだけど何か?」
嬉しさのあまり意識が飛びそうだったが、天野さんの前でそんなマネは出来ないと踏ん張り、なんとか踏ん張った…が次の一言で僕の記憶は途切れるのだった…
「あ…あと、それから松下くんの家はどこ?これから魔力を込めたものしか松下くんは食べてはいけないから住み込みで食事管理をする必要があるので家を教えて欲しいんだけど…」
天野さんが顔を真っ赤に染めてそう言ってきた。
「…天野さんが…僕の…家で…寝泊まりする?」
抗うことも出来ず、僕の意識は闇に飲まれた。
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