第8話 夢じゃなかった

「襲撃によるラインハウルの被害状況は…」


「っか、はぁはぁはぁっ!」


 斬られた首を抑えながら、必死に空気を吸い込む。


(…やっぱり、魔王城の作戦会議室ね)


 左にドヴィー、右にはロコ、そして、後ろにはアルが立っている。


(…全く同じだ)


 結局、夢ではなかった。

 実はこの結論に至るまでに、アタシは既に五回死んでいる。

 初めは夢だと思っていたが、違ったのだ。

 

(アタシ、ほんとに死んでたんだ…)


 いや、正確には”死に戻って”いたのだ。


「大丈夫ですか!?陛下!?」


 このドヴィーたちの一辺倒のリアクションも既に五回目だ。


「ごめん。ちょっと、気分が悪いから…」


 力なく席を立ち、会議室を後にする。

 二度目の戦いで死んだアタシはこの作戦会議室で目覚めた。

 そして、案の定ドヴィーたちは一緒に戦ったことを覚えていなかった。

 いや、知らなかったと言った方が正しいだろう。

 その時からだ。

 もしかしたら、アタシは夢を見ていたのではなく、時を戻っていたのではないかと考えるようになったのは。

 つまり、アタシは死ぬとこの作戦会議室で目覚めるのだ。

 しかも同じ日の同じ時間に。

 初めはそれをすんなり受け入れることができず。

 また夢か、と思っていた。

 そして、やつらに何度も挑み、その度に死んだ。

 そして、今回の死でようやく確信した。

 アタシは”死に戻っている”と。


(まぁ、何が辛いかって、ずっと最終巻の発売日直前で死んだり戻ったりを繰り返しているってことよね…)


「…ただいま」


 自分の部屋に戻るなり、ベッドに倒れ込む。

 いつもなら、このまま豆蔵にスリスリするところだが、それをする元気もない。

 アタシを見るなり警戒行動を取っていた豆蔵が首をかしげている。


「…はぁ、もういっそ逃げるかな」


 天井を見つめながら、つぶやく。

 心配してくれているのか、豆蔵がアタシの頬を舐めてくれる。


(…でも、そんなことできないわ)


 魔王特権を失えば、本は読めなくなる。

 だが、それだけではない。

 豆蔵だって養えなくなってしまうのだ。

 アタシのワガママでこんな魔族の世界にまで連れて来たのだ。

 アタシにはこの子を守る義務があるはずだ。

 一億歩譲って本を読めない人生を我慢するとしても、この子だけはアタシが守らなくてはいけない。

 撫でる手を豆蔵がペロペロと舐めてくれる。


(はぁ…でも、どうすりゃいいのよ)


 テンションがガタ落ちしている一番の原因は、今回の死で、あのポニーテール男に勝つ自信を失ったからだ。

 初めて負けた時は、三対一だったことが敗因だと思ってた。

 次の戦いで負けたときも、雷魔法で不意を突かれたからだと思っていた。

 しかし、それからアタシは三回も負けたのだ。

 こちらは相手の手の内をすべて知っているのに、相手は何も知らない。

 そんな圧倒的有利な状況にもかかわらず、アタシは完敗し続けた。

 もちろん、アタシもただ負け続けたわけではない。

 いくつか分かったこともある。 

 まず、ドヴィーたちにあのフード男の「目の魔法」を防ぐ手立てがなかったこと。

 はじめは土魔法で防御できていても、時間経過とともに攻撃力が上がっていくと対処できなくなってしまう。

 次が、ロコが期待していたほど強くなかったということ。

 最強の蠱氣戦士と呼ばれているワリには、これまでの戦いでアタシはロコが活躍したところを見たことがない。

 毎回、相手の攻撃を受け続け、反撃できないまま殺されている。


(そもそも蠱氣って何よ…)


 しかし、こうやって他人のせいにばかりしているが、決定的なのは、アタシにあの蒼い雷魔法を防ぐ手立てがないことだ。

 いや、防ぐどころか、避けることさえできなかった。


(ただの一度もね…)


 前回の戦いでは作戦を変えて、ドヴィーとロコにポニーテール男を任せたが、結果は変わらなかった。

 古代文字魔法や第十位階魔法まで使えるドヴィーをもってしても、あの蒼い雷を防ぐことはできなかったのだ。


(もう打つ手なし、か…)


 思いついたことは全部やった。

 でも無理だった。

 確かにまだ方法はあるかもしれない。

 試行錯誤を繰り返せば、解決方法も見つかるかもしれない。

 でも、正直怖いのだ。

 もしかしたら、死に戻りには条件があるかもしれない。

 例えば、特定の時間帯だけとか、自殺では死に戻れないとか、もしくは、ポニーテール男以外にに殺された場合は死に戻れないとか。

 アタシはまだあの男以外に殺されたことがない。

 もし筋肉女やフード男に殺されて、死に戻れなかったら。

 そう考えるうちに死ぬのが怖くなってきたのだ。

 首になって地面を転がるたびに、自分の人生がもう終わりかもしれない、もう誰にも会えないかもしれないと恐怖に震えるのはもう嫌なのだ。


「ヴァレンティーナ様、お茶をどうぞ」


 アタシの気分を察してくれたのか、ミラがハーブティーを入れてくれた。

 いつの間にか頬を流れていた涙を拭く。


「ミラ、ありがと…」


 お茶を一口飲む。


(あったかい…)


 少し心が落ちついた。


「とりあえず、あの雷をなんとかしないと…」

「雷ですか?」

「ぶっ!」


 リラックスしたせいで、つい言葉にしてしまっていた。


「いやー、ちょっと魔法について調べててね…」

「…ヴァレンティーナ様が魔法を調べ…明日はゴブリンでも降りそうですね…」


 驚きでミラの口がピクピク痙攣している。


「…アタシだってたまには勉強するわよ!」

「はぁ…ですが、魔法のことならドヴィー様にお伺いするのが一番なのでは?」

「…んまーそうなんだけどね」


 当然、アタシにもわかっている。

 ドヴィーは詳しいというよりも魔法の専門家だ、いや、魔法オタだ。

 だから魔法の知識で飯を食っている連中なら知らなくていいようなことでも、アイツは興味本位だけで四六時中調べている。

 今回のようなマニアックな魔法なら、なおさらドヴィー以外にはいないというぐらい適任者なのだ。

 実際、アタシはドヴィーがあの雷魔法についてかなりの知識があることを知っている。

 これまでの死に戻りで何度も聞いているからだ。

 しかし、ドヴィーはこれまで解決方法を教えてくれていない。

 そう、知らないではなく、教えてくれないのだ。


(なぜか頑なに拒否されちゃうのよね)


 それでも他に手掛かりはないし、ドヴィーが何かしら知っていると分かっている以上、なんとしてでも聞くしかないのだが。

 

「そうね。ミラ、ドヴィーのところに行くわ。一緒に来てくれる?」



◇ ◇ ◇ ◇


(今回こそはなんとか聞き出してやるわ)


 ミラがドヴィーの部屋のドアを押し開ける。

 書類や書物が山積みになった机。

 その奥の椅子に彼は深く腰かけている。

 そして、こちらをチラ見することもなく、書類とにらめっこしている。


「…ドヴィー、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「嫌です。忙しいので無理です」


(…コイツ)


 ドヴィーはアタシと目を合わすこともなく、机の上に積まれた書類に次々と目を通している。

 この態度も毎回おんなじだ。

 たまには、「うぁー、陛下が部屋に来てくれた♡うれしいぃ♡ずきゅん♡」くらい言ったらどうなんだ。

 まぁ、文句言っていても仕方がない。

 今日はなんとしても教えてもらわないといけないのだ。


「まぁ、そう言わずに。魔法や歴史に詳しいドヴィーにしか聞けないことなのよ。ケリッパーとか、勇者が使う神雷魔法について教えて欲しいのよ」

「―!」


 アタシがワザと使ったマニアックな単語に、ドヴィーの耳がピクリと反応し、手に持っていた書類を机に置いた。

 アタシをジト目で睨む。


「陛下が神魔戦争史について知りたいと。明日はトロールでも降りそうですな」


(…コイツら)


 後ろでミラが口に手を添えながらプルプル震えている。


「ちょっと小説に出てきてね。興味が湧いたのよ…」

「まぁ、いいでしょう…陛下が”働かない”せいで、私は”とっても”忙しいのですが、”特別に”教えて差し上げましょう」


(…いちいち強調しなくてもいいわよ…)


 ほんと一言多いというのはこのことである。

 この性格でよく結婚できたものだ。

 しかし、今日はここで怒るわけにはいかない。


「よ、よろしくお願いします…」


 アタシはイライラを全力で抑えこみ、重力が暴走したかのような作り笑いでドヴィーに頼む。


「…よろしい」


 ドヴィーは誇らしげに胸を張る。

 毎回、ドヴィーにこの質問をすると、今回のように嬉しそうに教えてはくれる。

 元々、人に教えること自体は好きみたいだ。

 

(確か、ドヴィーは教師になりたかったのよね。龍王になったせいで叶わなかったけど…)


「まず神魔戦争とは、先住民族である我々が暮らしていた世界に、神々が侵略してきたことがすべての始まりでした。圧倒的な神々の武力の前に我々は為すすべもありませんでしたが…」

「いや、歴史は大丈夫なのよ!勇者の神雷魔法ついて教えてほしいの!忙しいドヴィーの時間を取るのは申し訳ないし!」


 ドヴィーは少し残念そうな顔をする。


(まぁ、聞いてほしかったのよね)


 実際、神魔戦争に興味がある人なんて、血を見るのが嫌いなバンパイアを探すより難しいだろう。

 しかし、このあたりの説明は耳にタコができるほど何度も聞いているのだ。


「…神雷魔法とは、神魔戦争で登場した三天神の一人、蒼雷神エヴァフリードが使用したとされる神階魔法です」

「神階魔法?」


 実はこの辺りも何度か聞いてはいるのだが、いまいち理解できていない。


「神階魔法とは、四大元素の力を借りる通常の魔法とは違い、イデア界のエネルギーそのものを”窓”の力を使って、地上に物質化する魔法のことです」

「なるほど、まったくさっぱりワカラナイんだけど」

「まぁ、頭の悪いゴブリンでもわかるように説明しますと…」


(せめて、普通のゴブリンにしてくれ…)


「通常の魔法は地上界に存在する力を使うため、地上階の物理法則の中だけで機能します。例えば、雷の魔法であれば、水壁を作り出せば防ぐことができます」

「確かに。じゃあ、神雷魔法は?」

「神雷魔法の場合、イデア界、つまり、神の世界の力を使います。そのため、地上の物理法則に縛られることはありせん。例えば、神雷魔法は水壁の干渉をほとんど受けずに通過してしまいます」

「それ、反則じゃない?神、強すぎでしょ…」

「確かに強力な魔法ですが、この神階魔法は神の中でも三天神しか使うことはできず、”窓”の力を借りないと使えないという制約があるのです。ちなみに、ルーシア様も元々は三天神の一人でした。そのこともあって、我々魔族はルーシア様の強力な神階魔法の力をお借りして、神の軍勢を退けることができたのです」

「ふーん。アタシのご先祖様って結構すごいのね」

「はぁ…ルーシア様も今頃、頭を抱えておられることでしょう」


(どーいう意味よ!こんな可愛い子孫がいて幸せに決まってんでしょーが)


「でもさー、その反則極まりない神雷魔法を使う”勇者”ってのは、過去には何人か現れたわけよね?

「そうですね」

「それなら、魔族なんてとっくに滅ぼされてしまってそうだけど、どうやって勝ったのよ?」

「それが分からないのです。これは王国史も同じです。

 魔界史には、『神雷魔法を使いし勇者なるもの現れたが、魔王によって鎮圧された。』

 王国史には、『魔王が率いる魔王軍の侵攻があったが、勇者によって鎮圧された。』

とあるだけです。」

「意味もほとんど同じね?」

「そうです。そして、不思議なことに、勇者が出現する度に両国の友好は深まり、その後、長期にわたって平和な時期が続いているのです」

「えっ…じゃあ、勇者が現れても、なんもしなくていいってこと?」

「…そうかもしれません」


(…でもアタシは殺されるのよね)


「ですが!!!」


 ドヴィーの声のボリュームが上がる。


(あ、スイッチ入ったな)


 どうやら、アタシの沈黙を勘違いしたらしい。


「―ですが!為政者たるもの、常に最悪の事態を想定して行動しなければいけません!この国の人々の命運は陛下の双肩にかかっているのですよ!」

「…はい。わかってますよ」

「…まったく、本当にわかってるんですか!?」


(むかっ)


 情報が必要なのでブチ切れることはできないが、ちょっと脳内で言いたいことを言わせてもらう。


(わかってるわよ!だーからこうして何回も死んでんのに、あんたみたいな竜かヒトかもわかんないクリーチャーに頭下げてんでしょーが!)


 よし。

 だが、こうやってドヴィーの説教を聞いていても情報を得ることはできない。

 少し餌を巻いてみるか。


「そんじゃあ、責任感の高いドヴィー様は、勇者が現れたときの対策をちゃんとお考えなのでしょーか?」


 アタシの挑発に、ドヴィーの眉間がピクピクする。


「―当然です!まず、イデア界そのものの力を呼び出せる三天神とは違い、勇者の神雷魔法はケリッパーの力に依存しています!そのため…」


 初めて聞いた情報が出てきて、少し期待したのものの、ドヴィーはすぐに話すのをやめてしまった。


「…いえ、まだこの考えは仮説にすら至っていません…それに、この考えが仮に実証できたとしても、陛下には教えられません」

「なんで教えらんないのよ?」

「…最悪の場合、魔王国が崩壊する可能性があるからです。そもそも、勇者が現れたわけでもないですし…必要もないでしょう」


(いっつも、こうなのだ)


 ドヴィーを挑発しようが、おだてよーが、ドヴィーはいつも話すのをやめてしまう。

 だから、これまでは諦めて、自分の力で三人を倒そうとしていた。

 しかし、今回は引き下がれない。


(今のままじゃ、アイツらには勝てないってことが分かったから…)


 神雷魔法を防ぐ方法がどうしても必要なのだ。


「ドヴィー、お願い…どうしても知りたいの」

「だから、まだ完成していないんですよ」

「なら、アタシが手伝うわ!一緒に完成させましょうよ!」

「ダメです!とても危険なんです!」

「大丈夫!アタシには鎧もあるし、危険なことなら任せてよ!」

「違うんです!危険なのは陛下自身なのです!」

「はっ!?」

「陛下が悪用すれば、本当に国が滅んでしまうんです!」

「あ、悪用ってなによ!そんなことしないわよ!アタシってそんなに信用ないわけ!?」

「ないですね。無一文の盗賊より信用ないです」


(このヤロウ…)


 まだ話は終わっていないのに、ドヴィーはペンを取り、自分の仕事を再開する。

 ドヴィーとしては、勇者が現れたことを知らないのだから、この反応は仕方ないだろう。

 出来ることなら、ドヴィーを湿地帯に連れて行って、神雷魔法を見せ付けてやりたいところだが、その場合、ドヴィーが首を縦に振ってくれても、代わりにアタシの首が飛んでしまう。


「ねぇ、ドヴィー…」

「―質問にはもう答えましたよ?私は色々と忙しいのです」


 書類から目を離さず、ドヴィーはけだるそうに答える。


「話しぐらい聞いてくれたっていいじゃない!」

「―誰かさんが仕事をしないせいで、私は忙しいんです。さぁ、出て行ってください!家の仕事も全くできていないのに…ふむ」

「ん?」


 何かをひらめいたようにドヴィーがアタシを見上げる。


「…教えてあげてもいいですよ」

「本当ぉ!!!?」


 目をキラキラさせるアタシをドヴィーが戒めるような目で睨む。


「ただし!条件があります」

「…条件?」

「陛下のせいで私は自宅に帰れていません。なので私の代わりに家事をしてください」

「え゛ぇぇぇぇ!」


(ムリです)


 自慢じゃないが、アタシは生まれてこの方、家事なんてしたことがない。


(むしろ、汚すのが専門です)


「まぁ、陛下に炊事や洗濯をしてくれなんていいませんよ。陛下の手料理を食べさせられた日には、私の罰ゲームにしかなりませんからね」


 なんてヒドイことを言うのだと思いつつも、否定はできない。

 いや、むしろ激しく同意する。


「そこで草むしりをしてもらいます。私の家の周囲に生えている雑草を抜いてもらうだけです」

「え?」


(それだけでいいの?)


 それならできそうだ。

 しかし、草むしりなんてするのは初めてである。


(まぁ、ミラにも手伝ってもらえれば…)


「ただし、ミラの手伝いはなしです」

「えぇぇぇ!」


(ムリよムリ!アタシはミラと一心同体なのよ!ミラが片付け担当、アタシが散らかし担当で共存関係ができてるのに!)


「陛下はすぐ人に甘える所があります。今回はそれを直すという意味でも、いい勉強になるでしょう」


(うううう…)


 泣きそうな目でミラに助けを求める。


「ヴァレンティーナ様はいつも部屋に引きこもっておられます。たまには外で体を動かすのも良いのではないでしょうか?」


(ううう…ミラ、アタシの思いが届かなかったの?一心同体のはずなのに)


「さらに!どうせ陛下のことですから、すぐにほっぽりだして諦めることでしょう。なので、日没までに終わらなければ罰を受けてもらいましょう」

「罰!?なによそれ!途中で諦めたりなんかしないわよ!」

「これまでの行いから客観的に判断すれば、陛下は間違いなく途中で諦めます。そうですね…」


 この部屋に入って来てから、初めて笑顔を見せるドヴィー。


(ねじ曲がってます!この男、性根がねじ曲がってます!)


「これにしましょうっ!」


 何か良からぬことをひらめいた様子のドヴィーが、悪い顔をしながら人差し指を突き出す。


(っひ!)


「今後1年間、他国との会議に出席してもらいます!」

「はぁ!?ムリムリムリ!会議とか絶対無理よ!」

「ならこの話はなかったことで。さようなら」


(くっそー。足元見やがってー)


 しかし、やることはただの草むしりだ。

 鎧の身体強化を使えば、半日もかからないだろう。


(さては、アタシに鎧があることを忘れてるのね)


 アタシは胸を張り、アゴをドヴィーに向かって突き出す。


「わかったわ!やってやるわよ!あなたの家の草むしり、アタシに任せなさい!」


 決意を決めた私のテンションとは対照的に、二人は冷ややかな表情でアタシを疑っている。


(こ、こいつら!見てなさいよー!)


「ところで、ドヴィーの家ってどこにあるのよ?」

「知っているはずですよ。…まぁいいでしょう、私も一緒に行きます。草むしりの機材についても説明しなければならないですし」

「機材?何んでただの草むしりにそんなのが必要なのよ…」

「まぁ、行けばわかりますよ」


 ドヴィーがニヤリと笑う。


(…絶対なんかあるわ)


 こうして、無一文の盗賊レベルまで下がってしまったアタシの信用を取り戻すための、もとい、勇者の神雷魔法の対策方法を獲得するための草むしりミッションがはじまった。

 すべてはあのムカつく勇者をブッ倒して、魔王特権と豆蔵を守るためである。

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