第13話 苦戦
一ノ瀬の父親がやっている道場に入らないかと提案された俺は、その日の夜、とりあえず親に相談することにした。
「修学旅行の件もあったし、最低限の護身術くらいは身につけたいんだ。いい?」
「宗ちゃんがやりたいならママは止めないわ、ただし、危険だと思ったらすぐにやめさせるからね。それが親としての役割だから」
「分かってる。ありがとう母さん」
「宗佑、父さんは宗佑のしたいことはできる限り応援したいと思ってる。だからこそ、やるからには納得のいくまでやり抜なんだぞ」
「分かった、父さん」
あんな事があった手前、流石に反対されると思っていたことがすんなりと通り、困惑しながらも親の了解を得た俺は、そのことを一ノ瀬に連絡してその週の週末から道場に通うことになった。
「こんにちは、君のことは裕哉からよく聞いているよ、この道場の師範をしている一ノ瀬正哉だ」
「初めまして、城田宗佑と申します。これからお世話になります」
「礼儀正しくて結構。さて、早速だが君の今の実力を測りたい。優!」
「はい!!」
正哉さんがその名前を呼んだ直後、大きな返事と共に短いスポーツ刈りで道着を着た男の子が出てきた。
「坂田優君だ、君には今から彼と一つ勝負をしてもらう」
「ルールは?」
「今から一分間、彼からの攻撃を避けるか防ぐかして耐えること。ただし、残り三十秒から反撃を許す。条件はこの道場畳から出されるかどちらかが参ったと言う、または一分間の経過だ」
なるほどな、おそらくこの勝負で求められるのは持久力と瞬間的な判断力だ。
「それでは始める。双方、位置につけ」
であるならば、
「始め!!」
始まった瞬間、優君は全速力で俺の方に近づいてきた。
どんな攻撃が来るのか少し観察しつつ避ける準備をしていると、飛び出してきたのは普通の、いや格闘技をしているには少し遅いくらいの掴み掛かりだった。
……は?
流石に遅すぎて少し困惑したもののすぐに回避し後ろに回り込み距離を取る
「早!」
…え?
避けた瞬間、優君から出た言葉はそれだった。
『おいおい嘘だろ、そこまで速度は出してないんだが!?』
「今度こそ!」
再度掴みかかってくる優君、防ぐのもアリだったはずなので今回は手を払いのけて横に回る。
流石に格闘経験者、そこはしっかりしているようで払われた腕を最低限の動きで止め、今度は足で転ばそうとしてきた。
それを後ろに飛んで回避したところでちょうど三十秒がだったので俺も構えを取る。
単調にもまた同じ動きで掴みにきたので今回は手を払った後、そのまま今度は俺が彼の胸を掴み足を払いながら床に転ばす。
その後起きようとしてきたのでわざと起きさせよろけたところを後ろに回り込んで背中を
押し、畳の外に出したところで
「それまで!!」
決着が着いた。
ほとんど圧勝になってしまったがこれくらいはしないと恐らく俺が行こうとしている対人用
武術は教えてくれないだろう。
優君は床に手をつけ困惑した様子だった。
「おめでとう、しかし君が勝つことは知っていたがまさか圧勝だとは」
「大したことでもないですよ。彼も十分凄かった」
俺は彼のことを少し気にしながらそんな会話をした。
まだ優君は現実を受け止めていない様子だった。
「そこまでの腕があるなら、君がここにきた目的を教えよう」
「本当ですか?」
「あぁ。ただし、君がこれから通う場所は大人が、それも死と隣り合わせの人間が己の命を守るために通う場所だ。生半可な覚悟はさせないがな」
「承知の上です」
「ならば明日の夕方、ここに来るように」
「はい」
人生二度めはガチでいく 若者 @yousanda-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。人生二度めはガチでいくの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます